第1349話 パピコピコピコパピコピコ

「まさか、すき焼きが食えると思わなかったよ」


 ステーキパーティーにしようとしたが、換気扇つけるの忘れたのですき焼きにチェンジしたのだ。


「このお肉、スッゴく美味しいぃ~!」


「なんなのこの肉? 口の中で溶けるぞ!?」


 勇者ちゃんもララちゃんもA5ランクの牛肉に驚きながらも箸──ではなくフォークが止まらない。


「卵があればもっと旨くなるんだがな」


 砂糖や味醂とかの調味料は買ったんだが、すき焼きなんて頭になかったから卵は買ってなかったんだよな。


 ……A5ランクの牛肉とは言え、食い慣れてないとそんなに食えんな……。


 オレはいつもの量だったが、勇者ちゃんとララちゃんは倍は食っている。まあ、ララちゃんはともかくとして、勇者ちゃんはいつも大食い大会かってくらい食うんだが、今回は底がぶっ壊れたバケツのように胃に送り込んでいるな。


 女騎士さんは、不思議と食事量は一般的だ。いや、食後のデザートが本番だと思っているのか?


 二番手にいたララちゃんも腹一杯となり脱落。勇者ちゃんの独壇場となった。


「タケルもそうだが、コスパ悪すぎね?」


 どこぞの戦闘民族みたいだよって話だ。


「そう言うお前は少食だよな。あれだけの力を出してんのに」


「オレの場合はおそらく魔力を使ってないだろうからな。神聖魔法は魔力とは違う別次元の力っぽいしな。ララちゃん、なんか知ってる?」


 と尋ねるが、腹一杯すぎて答える力はなさそうだ。そんなにA5ランクの牛肉は旨かったのか?


「体は生まれつきで鍛えているから、よほど動かないと食ったりはしないな。そう言うお前も少食だよな」


 まあ、その体の倍は食ってたけどよ。


「そうだな。食えない状況が多すぎて胃が小さいままなのかもな? お前んとこ来てからは倍は食うようになったがな」


 茶猫にも魔力はあるが、それほど強大でもねー。きっと肉体にパラメーターを振られたのかもしれんな。


「ごちそうさまー!」


 勝者、勇者ちゃんが食い終わった。


「お腹いっぱーい! ケーキ食べたい!」


「!!!!」


 同じくとばかりに女騎士さんが連打挙手をする。あなたの血はお菓子が流れてんのか?


「ケーキって言われてもなー。甘いもんはミタさんに任せてるからな~」


 まんじゅうならあるんだがな。と、出したら女騎士さんは満足して食べ始めた。


「ケーキがないならアイスが食べたい」


 だからそーゆーもんは……あったな。ココノ屋でパ○コが。アイスだから分けて置いてたんだっけ。


 無限鞄からパピ○を出す。


「あ、○ピコだ!」


「え? 知ってんのか?」


 前世の記憶でも蘇ったのか?


「村人さんちで食べた」


 うちで? 勇者ちゃんがいるときパ○コなんてあったっけ? 勇者ちゃんが旅立ったのは去年の秋。その頃はまだファミリーセブンとかなかったと思うだが?


「ま、まあ、食ったんなら食い方は知ってるな?」


「うん。知ってる」


 袋から出し、手慣れた感じでチューチューし始めた。


「女騎士さんも腹を壊さないていどに食いな」


 ゲリピッピになっても知らんからな。


「お前らも食え」


 ガキどもにも渡し、勇者ちゃんを見ながらチューチューし始めた。


「オレはちょっと外でコーヒーを飲んでくるよ」


 チューチュー族を眺めていたら、外に仕掛けた結界に誰かが触れた。


 大きく伸びをしてから立ち上がり、首をボキボキさせながら外へと出た。


「もう夕方か」


 太陽は陰っており、辺りが薄暗くなっていた。


 土魔法で階段を創りながら下ると、迷彩服を着たヤツらがわらわらと現れた。


「くるんなら堂々とやって来いよ。返り討ちにされても文句は言われんぞ」


「申し訳ありません。なるべく邪魔をしないように静かにしていたもので」


 この集団の隊長なのか、草の被り物を取って敬礼をした。


「もうイイよ。できるならもう少し離れていろ。勇者ちゃんに攻撃されるぞ」


 勇者ちゃんは考えるより先に攻撃する。確実に殺す勢いでな。


「はい。そうします」


 隊長らしき男が手を挙げると、迷彩服集団が下がっていった。


「ミタレッティー様より伝言です。二月後までは帰って来てくださいとのことです。シャニラ様の出産予定なので」


 あ、オカン、妊娠してたっけ。忘れてたわ。


「了解」


 レイコさんが覚えておくよ。


「……自分で覚えておいてくださいよ……」


 できないからレイコさんにお願いしてるんだろうが。


「それと、ミタレッティー様よりこれを預かってきました」


 と、収納鞄を渡された。


「プリッシュ様の力で食料を入れているそうです」


 さすがミタさん。見抜いてらっしゃる。


「ミタさんにありがとうと伝えておいてくれや」


 オレがいない間に休んで欲しいが、ミタさんはしないだろう。帰ったらココノ屋の駄菓子でも上納しておこう。


「はっ、伝えます」


 また敬礼して下がっていった。


「……オカンと親父殿の子か……」


 めでたいとは思うが、十以上離れた兄弟ができると言うのは複雑なものだな。


 土魔法で椅子を創り、無限鞄からコーヒーを出して一息つく。


「まっ、家族が増えるのは喜ばしいことだ」


 もう少しで産まれてくる新たな家族に乾杯をした。 

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