第1334話 魔力失調症
「南の大陸に来てから大量殺戮してばっかりだな」
ヤンキーに始まり、セーサランに金目蜘蛛と、オレ、命を奪いすぎだわ。
とは言え、どいつもこいつも話し合いが通じないヤツらばかり。生きるか死ぬかの生存競争。情けなどかけてはいられない。生きるために殺すしかないなだ。
「蜘蛛は外! 蜘蛛は外! もひとつあっちに蜘蛛は外!」
ってか、金目蜘蛛が多すぎて鉄玉がなくなりそうだわ。石で代用するか。
土魔法で石を創り出し、金目蜘蛛へと投げ放ってやる。
「ララちゃん、火力強すぎだ! もうちょっと落とせ!」
攻撃系なのはわかっていたが、特化型だったとは思わなかった。金目蜘蛛を一瞬に火達磨にして木に飛び火してるよ!
「わたしの最小はこれなんだよ!」
クソ。叡知の魔女さんは問題児ばかり送り込んできたのかよ!? 迷惑な話だな!
「じゃあ、火は使うな! 氷とかで突き殺せ!」
「もっと被害が大きくなるよ!」
クソ! 連れて来る人選間違えたわ!
「いや、そうでもねーか。周囲を氷漬けにしろ! 勇者ちゃん、女騎士さん、猫、オレの側に来い!」
皆を集めて結界を張る。
「ララちゃん、全力全開で周辺を氷漬けにしろ!」
「どうなっても知らないからな!」
「あとはどうとでもしてやるから安心しろ!」
「わかったよ! レイオール・シャニーバー!!」
ゾクッとするほどララちゃんの魔力が放たれ、凄まじい冷気が四方へと放たれた。
……どんだけの威力なんだよ……!?
「ララリーさん、もしかすると魔人族かもしれませんね」
魔人族? って、ご隠居さんと同じ種族ってことか?
「はい。人でこんな魔法を見せるなんてべー様くらいですよ」
なに気にオレをディスってます?
「魔人族なら魔力操作くらいできるだろう?」
ただでさえ魔力は大きい種族。コントロールできなきゃ周りが大変じゃね?
「おそらく、魔力失調症じゃないですかね?」
「魔力失調症?」
普通の失調症とは違うんか?
「普通の、ってのはわかりませんが、魔力調節ができない病気ですね。ご主人様も治そうと思って挑戦しましたが、頭に問題があるとまでは突き止めはしましたが、そこから上手くいきませんでした」
「失調症は薬物で治療すると聞いたことはあるが、どんな薬を使うかはわからんな」
そう言うのがあるって耳にしたくらいだしな~。
「まあ、強引なやり方ならなんとかなるかもな」
「な、治せるのか!?」
ララちゃんが迫って来て、襟首を握り締めた。
「強引なやり方では、な。ただ、お勧めはしない」
「ど、どうしてだよ!」
「一度、脳を半死にしてエルクセプルで治す。失敗はしないだろうが、死ぬ覚悟がないと精神のほうが負ける」
エルクセプルの回復効果は絶大だが、精神までは作用してくれない。体は治っても心が死ぬ恐れがあるのだ。
「だからお勧めは──」
「やってくれ! 治るならなんでもする! お願いだ!」
必死に懇願するララちゃん。相当苦しんでいたようだ。
「うーん。叡知の魔女さんの許可なりないと、あとでバレたらまた正座させられそうだな……」
「……今回のは正座で済まないと思うぞ……」
だよな~。身内を半死させるんだから。オレなら激おこプンプン丸にるな。
「なら、自分でやる!」
え? と思うぞ間に自分の頭に向けて雷撃を放ってしまった。
「アホか! 即死じゃ意味ねーんだよ!」
時間凍結結界をすぐに張り、時間をゆっくり進めながら無限鞄からエルクセプルを出してララちゃんに飲ませた。死んでくれるなよ!
「エルクセプルよ、ララちゃんを死なせんでくれよ!」
ララちゃんが死ぬスピードが速いか、エルクセプルの効果スピードが速いか、まったくもってわからねー。頼むぞ、エルクセプル!
長いような短いような時間が流れ、ララちゃんの瞼が開いた。
「よ、よかった~!」
クソ! こちらの心臓が止まるところだったわ。
「オレを見ろ。ちゃんと意識はあるか? あるなら返事しろ!」
ララちゃんの頬をつかみ。目を覗くが、焦点が合ってねー。
「……生きて、る……」
か細い声で言葉を発し、段々と目の焦点が合ってきた。
「勇者ちゃん。女騎士さん。この場を離れるぞ。生き残りがいたら任せる」
結界ストレッチャーに乗せ、無限鞄から毛布を出してかけてやる。
「勇者ちゃん、凍ってない場所にいくぞ。猫、ララちゃんを温めてろ」
「わ、わかった」
「ま、任せろ」
勇者ちゃんと女騎士さんが走り出し、茶猫は毛布の中に入ったら結界ストレッチャーを押して駆け出した。
まったく、こんなハラハラドキドキな旅は求めてねーんだよ!
生まれて初めてララちゃんにしゃべったことを後悔した。
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