第1331話 勇者パーティー

 なんてオレが言うと思ったか? はん! 誇り高き村人が屈するときは嫁に浮気がバレたときさ。


「なんの喩えですか? と言うか、ベー様なら二人でも三人でも嫁をもらえばいいじゃないですか。ベー様に思いを持っているのは結構いるんですから」


 嫁が二人も三人もいるなど考えただけでゾッとする。今より縛られた生活になるわ。


「ベー様なら変わらず自由気ままに生きると思いますけど?」


 そこは精神的な縛りがあるかどうかだよ。


「まあ、ベー様は重いですからね。二人も三人もなんて愛したら身も心ももたないでしょうね」


 重いとか言うなや。オレは地雷系じゃないからね!


「地雷系と言うより誘蛾灯ですね、ベー様は」


 どちらにしてもオレ、碌なもんじゃねーな! まあ、清廉潔白な生き方してねーけど!


 って、今はそんなことを論じてる場合じゃねーんだよ! 三日間も正座なんてしてらんねーよ!


 オレに戦闘センスはねーが、土魔法の才能と自由自在に使える結界は持っている。


 才能に溺れることなく鍛えてきたし、どこ自由自在に使えるを検証してきた。叡知の魔女さんがどれだけ人外だろうが、試行錯誤を極めてきたオレが見破られるわけがねー。芸術的に欺いてやるわ!


 見張りは委員長さんと他魔女二人。メイド三人衆。武装メイドが何人か。あと、監視カメラ。ものの見事に雇い主に対することじゃねー。


「なに一つ信じられれないことしかしてないじゃないですか」


 オレはオレの思うままに行動する。何人たりとも邪魔をすることはできんのじゃ~!


「だから厳重に監視されるんじゃないですか。学びましょうよ」


 監視され、多くを引き連れる人生など学びたくないわ。一人でも自由に行動して死ぬことをオレは選ぶわ。


 まず結界をオレと勇者ちゃんに張る。


 数分、その状態を保つが、委員長さんたちに気づかれた感じはない。考えるな、感じろもなにも言ってこない。どうやら叡知の魔女さんは関与してないようだな。


「アハハ! 本当に正座させられてるよ!」


 茶猫がやって来た。


「うるさい。冷やかしならあっちいってろ」


 これから村人忍法、ドロン! をやるんだから邪魔すんなや。


「ギャハハハ! ばーかばーか」


 なにもできないと思って煽りやがって。それが身を滅ぼすとわからんのか? 


 じっと堪えていると茶猫が近づいて来た。飛んで火に入る茶色い猫め。


 結界内に入った瞬間に茶猫の姿を消して結界分身させる。バカが!


「え? はぁ? な、なんなんだ!?」


 オレが仁王立ちしていることに戸惑う茶猫くん。君にこの状況を理解できるかね?


「フフ。お前はもうオレの手の内に入っているんだよ」


「能力か!?」


「そうだよ。あ、お前はもう逃げられないからな。勇者ちゃんの旅に付き添ってもらうぜ」


「村人さん?」


 茶猫と同じく目を白黒させる勇者ちゃん。


「旅にいくぞ。お供は村人と猫、戦士系は女騎士さんでイイとして、魔法使いは誰にするかね?」


「なんで勇者パーティーに村人と猫が入るんだよ!」


「オレは遊び人の代わりでお前はマスコットキャラだな」


 見た目的にはプリッつあんが適任だが、誘ったところで断るだけだ。あれはもう野生を捨てたメルヘンだからな。


「どの魔女を連れていくかね?」


 委員長さんはうるさそうだし、攻撃系魔女でイイか。


 名前は忘れたが、魔女の中では魔力が高く、攻撃魔術に優れていた。


「レイコさん。委員長さんの横にいる赤髪の魔女、名前わかる?」


「ララリーさんですよ」


「見た目と違い可愛い名前だな」


 結界を伸ばし、ララリーを包み込み、結界分身を創り出し、こちらへと引き寄せた。


「え? はぁ? なに!?」


 驚くと皆同じリアクションをするな。


 続いてパラソルの下で優雅にお茶をする女騎士さんも引き寄せた。


「…………」


 なんの驚きもなく、あ、どうも、ってな感じでカップを掲げる女騎士さん。この人の精神は高次元なものなのかな?


「勇者ちゃん。旅に出るぞ」


 少しの間、オレが勇者ちゃんを鍛えてやろう。魔王ちゃんばかり贔屓しては不平等だからな。


「うん! 出る!」


 それでこそ勇者だ。


「こっちへの説明はなしかよ?」


「お前らは勇者のお供。勇者が成長する手助けをしろ」


 以上、説明終わり。


「いやいやいやいや、説明になってねーよ! 館長にまた一喝されるぞ!」


「魔女が怖くて旅ができるかよ。勇者は強大な敵と戦うことが運命なんだからな」


 まあ、極力叡知の魔女さんと戦うことはしないけどな。


「これは強制だ。拒否権はねー」


 皆をオレにつかませて、転移バッチを発動させる。もちろん、結界を纏わせて周りにバレないようにしてますぜ。


 さあ、旅へ出発だ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る