第1324話 代価は本で

 魔女と言うのは本当に行動が速いよな。昨日の今日でたくさんの人を連れて来ている。


「どんだけ権限持ってんだよ?」


 帝国にはたくさんの派閥があると公爵どのが言ってたが、魔女はかなり強い派閥のようだな。まあ、皇帝の弟と繋がりは強そうだったし、五指に入るのかもな。


「堅気じゃねーのも混ざってるな」


 目つきが一般人とは違う。魔女ではないところから送り込まれたかな?


「よく目だけでわかりますよね」


 目は口ほどにものを言うってな、目を偽るにはそうとうな技量か、催眠術的なもので偽るかじゃないとわかるものさ。


「よろしいので?」


 構わんよ。うちやカイナーズの真贋を見抜く糧となってもらうからな。


「メイドさん。メイド長さんに魔女さんたちと交流を持てと伝えてくれや。この機会に人を学べってな」


 これから帝国との付き合いは増えていく。なら、今から人のことを学んでいってもらおうか。


「畏まりました」


 よろしこ。


 珍しくオレから離れていた補佐長さんと委員長さんが戻って来た。


「べー様。木材を分けていただけませんでしょうか?」


「代金をもらえたらいくらでもやるぜ」


 ワリーがここからは有料にさせてもらうぜ。帝国の領域を作るんだから自分たちで負担しな。


「なにでお支払いすればよろしいでしょうか?」


「可能なら本でいただきたいかな。うちの本棚を埋めたいからよ」


 せっかく大図書館のヤツがいるんだから本を分けてもらえると助かるな。


「市販されている本でも構いませんか? 大図書館の本は貴重なので譲ることはできませんので」


「それでイイよ。帝国にいるうちのもんに渡してくれ」


 こちらに持ってくる手間を考えたら帝国にいるゼルフィング商会の者に渡して館に運んでもらうほうがオレも楽だしな。


「わかりました。欲しいものの目録です」


 と、紙の束を渡された。業者か!


「やたらと食料が多いな。帝国から持って来れないのか?」


 食料くらい帝国から運んだほうがコスト的にイイんじゃねーの? つーか、単位が元の世界の単位になってんぞ? 帝国には独特の単位があっただろうに。どこから仕入れたんだ?


「転移には大量の魔力を必要とします。そう頻繁には使えません」


「……ふ~ん。魔女さんがあれだけいてダメなのか……」


 どこまで本当かわからんが、頻繁に使えないのは本当のことなんだろう。魔女さんの姿が見て取れないからな。


「まあ、イイさ。本、二千冊で手を打とう。どうだい?」


「同じものが混ざっても構いませんか? すべて違う本と言うのは難しいので」


「同じ本が百冊、とかじゃなければ問題ねーよ」


 館だけじゃなくヴィアンサプレシア号や別荘とかにも置きたい。いつどこにいくかわからん身だしな。


「わかりました。お願いします」


 目録はメイドさんに渡す。オレ一人じゃどうしようもない量だし。カイナーズホームに任せて持って来させよう。


「今度はなにをしているの?」


 補佐長さんが消えると、委員長さんが尋ねてきた。上司がいると無口になるタイプか?


「乗り物だよ」


 マイスターに頼まれた作業車だ。


「ダメだ。なんか違う」


 イメージと違うので錬金の指輪で分解させた。


 うーむ。ハイエース型では人が乗るにはイイが、荷物が出し難い。二トントラックだと四人は乗れねー。つーか、筋肉ねーちゃんの体がネックだ。


 こう言うとき、種族が違うって面倒だよな。どこに合わせてイイかわかんねーよ。


「車じゃなく飛空船がイイか?」


 いや、それだと維持管理が大変だし、置く場所にも困るか。


 やはり、ハイエースサイズがベストなんだよな~。


 気分転換に作業場としていた小屋から出て、散歩に出かけた。


「なんの行進ですかね?」


 オレの後ろからついて来る団体さん。今は一人にしてもらいたいんだがな。


「べー様を一人にしたら確実に厄介事がやってきますよ」


 違うと言えないところが悲しいです。


 まあ、思考すれば一人でいるようなもの。集中しろ、オレ。


 そこら辺を歩くが、これと言った案は出て来ない。クリエーターとして失格だぜ。


 また湖畔に戻って来て、マ○ダムタイムとする。


 しばらくコーヒーを飲みながら湖を眺めていたら、砂浜にトラックが転移して来た。


「カイナーズホームの配送か」


 もう珍しくもないのでスルーしようとして、止めた。


「そうか! 牽引すればイイのか!」


 配送トラックがトレーラーなのを見て答えが出た。


 ゼロワン改+キャンピングカーみたいに、人が乗る用と荷物を積む用に分けたらイイだけじゃねーかよ。


 クソ。こんな簡単なことに気がつかないとか、本当にクリエーターとして失格だぜ。


 だが、思いついたらイメージはできた。マイスターが満足するものを作ってやるぜ!


 そこから我を忘れて作業に没頭するのであった。

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