第1325話 ハッピーカーニバル
「よし。完成だ」
二度ほど作り直したが、満足いくものができた。
四人乗り用のピックアップトラック型に多種機能をつけて箱形のトレーラーをつけた。
筋肉ねーちゃんには申し訳ねーが、ピックアップトラックの荷台に乗ってもらう。ちゃんと雨が降ったら屋根が出るようにはしたからよ。
「ちょっと試運転してくるか」
ピックアップトラックに乗り込むと、メイドさん二人に委員長さんが乗り込んできた。え?
「あなたを一人にするとどこにいくかわからないから目を離すなときつく言われてるわ」
誰にだよ!
「全方位からじゃないですか? 実際、一人になったらいなくなるじゃないですか」
違う! と言えない我が人生。なので黙ってピックアップトラックを出発させました。プップー。
「どこに向かうの?」
「湖の反対側までかな?」
せっかくなので街道を整備しながらいってみるか。
セーサランのせいで行き来がないのか、街道の左右は草が生えて道を塞ぐ勢いである。
「道の整備もなんとかしなくちゃな」
結界で左右の草を刈りながら走っていると、前方にシープリット族の連中がいた。散歩か?
ピックアップトラックを止めると、シープリット族の連中が近寄って来た。
「ベー様でしたか」
「おう。どうしたい?」
「巡回です。小さいセーサランを逃さないように」
お。そうなんだ。そこまで考えもしなかったわ。
「そいつはご苦労さん。気をつけてな」
「はい。ベー様も」
巡回の邪魔にならないようすぐに立ち去った。
しばらく走るとまたシープリット族の連中がいて、結構距離を狭めて巡回してんだな。もしかして、巣別れみたいなことしてんのか?
まあ、カイナーズやシープリット族に任せておけば安心だろう。そう言うことに長けた連中だからな。
夕方には湖の反対側に到着し、港と化したところで一泊することにした。
「委員長さん。今日はここで夜営するから仲間のところに帰ってイイぞ」
無限鞄からシュンパネを出して委員長さんに渡した。
「わたしも夜営するわ。朝になったら消えてそうだからね」
なんか不吉な言い回しすんなや。十三日に金曜日じゃあるまいしよ。
……まあ、うちのメイドならジェイソンでもフレディでも返り討ちしそうだけどな……。
「好きにしな」
お偉いさんたちから離れて羽を伸ばせてイイだろう。
薪を出して火を焚き、湖で捕まえたワカサギを揚げて食べることにする。
準備をしていると、メイドさんズが転移して来た。ついでに茶猫も。
……この猫も神出鬼没だよな……。
「どうしたんだ?」
「魚を食う感じがしたからメイドさんについて来た」
「なんのニューなタイプだよ」
「どんな突っ込みだよ。魚、くれよ。なあなあなあ」
だから鳴き声みたいに要求してくんなや。鬱陶しい。
よじ登ってくる茶猫の首をつかんで委員長さんに放り投げてやる。
「相手しててくれ」
「わかったわ」
茶猫を抱き、喉を撫でる委員長さん。猫好きか?
イイ感じに揚がったワカサギを皿に乗せ、茶猫に出してやる。
「この魚はクセになるぜ!」
「お魚咥えたどら猫か」
「……お前、突っ込み、いちいち昭和すぎんだよ……」
「昭和を生きてきたんだからしょうがねーだろう。お前も平成生まれだったのか?」
「いや、昭和だよ。八十年代半ばだ」
なら、三十歳くらいか。早死にしたな。
「魚を食うと米が食いたくなるな」
「お前の舌と胃はどうなってんだよ?」
実は猫じゃないとかか?
「最強の体だからな。胃もそうなんだろう」
オレが五トンのものを持っても平気な体を願ったように副次的効果を狙ったのか。死んだ直後だってのに冷静だったんだな。
「久しぶりに米でも食うか」
そんな米に執着はねーが、たまには食いたくはなる。焼きおにぎりなんてイイかもな。
米や調味料は買ってあるし、焼きおにぎりなら作ったことはある。
結界飯ごうで米を焚き、三角おにぎりにして醤油を塗り、炭火で焼いていく。
「イイ匂いだ」
転生して初めて作ったが、忘れてないもんなんだな。作り方も作ったときの思いも、な……。
「いっぱいあるからたくさん食いな」
米初体験だろうに、委員長さんにも好評だ。
あ、けんちん汁飲みたくなった。また集落にある食堂に食いにいくか。
「平和が一番だな」
こうして星空の下、旨い魚と旨い焼きおにぎりを食える。生きてる幸せを感じる。
「明日も楽しい日だとイイな」
「お前の頭はいつもハッピーカーニバルだろうが」
「そう言うお前は皮肉を言わないと死ぬ病気か?」
「常に問題を発生させないと気が済まないお前に言われたくないわ」
「仲いいわね、あなたたち」
まあ、茶猫とのやりとりも悪くはねーな。前世を知り、歯に衣着せぬ性格。腹を割って話せる相手はなかなかいねーからな。アハハ。
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