第1317話 数に勝る力なし

 どうやら自分は導き手として転生させられたようだ。


「まあ、なんでもイイがな」


 オレはオレの思うままに生きて、満足して死ぬだけ。そのためにオレの都合のイイ環境を整えるまでだ。


「魔女さんたちに対抗手段があるならなによりだ。そちらがよければ駆除作業に参加するかい?」


 カイナーズだけで駆除してしまいそうだが、魔女の目からセーサランを見てもらいたい。オレらじゃ見えないものを見てくれそうだからな。


「よいのか?」


帝国・・とはイイ関係でいたいしな、仲良くできることは仲良くしようや」


 魔女=帝国だ。魔女として見るのじゃなく帝国と見て相手するべきだ。


「……アレが気に入るのもよくわかるよ……」


 アレとはおそらく皇帝の弟だろう。


「村人には恐れ多いこった」


 なるべくなら二度と会いたくはねーな。アレは厄介だからな。


「帝国貴族になれば少しは和らぐぞ」


「……オレの情報、だだ漏れだな……」


 まあ、別に隠してもねーし、金髪ねーちゃんズが村に来た時点でバレるのも時間の問題だったが、それでもよく調べたものだ。さすが帝国だよ。


「お主には正統な継承権があるぞ」


 フェリエのことにはまだ触れないか。ってことはまだ猶予があるってことだな。


「オレは、ヴィベルファクフィニー・ゼルフィング。ボブラ村生まれの村人だよ」


 オレは死ぬそのときまで村人で、ボブラ村から離れることはねー。


「今、メッチャ離れてますけどね」


 これは旅行です! あと、メッチャとか使うなや!


「ふふ。そうだな。帝国に来られてかき乱されるのも困るしの」


「オレはことなかれ主義なんだけどな」


「お主が歩くと波乱しか生み出しておらんだろう」


 叡知の魔女さんからの突っ込み。厳しいわ~。


「オレ自身が波乱を生み出してるわけじゃねーし」


「自ら突っ込んでいればもはやお主が起こしているのと同じだ」


 クッ。突っ込みに容赦がねーな、叡知の魔女さんは。


「まあ、よい。波乱を解決できぬ男ではないしな。ここに支所を置かしてもらうよ。リンベルク」


「──はい!」


 と、委員長さんが返事をした。あ、リンベルクって名前なんだ。まあ、明日には忘れてるだろうけどな。


「側にいてよく学ぶがよい」


 そう言って結界から出ていき、消えると同時に委員長さんが膝から崩れ落ちた。


「あの方、それほどの方なので? あ、デオラですよ。難しいようでしたらベー様の呼びやすいように呼んでください」


「じゃあ、博士で」


 博士ははかせ、な。博士ドクターと区別しないとよ。


「博士ですか。その称号に恥じぬ働きをしましょう」


 期待してるよ。全種族の命運がかかってるんだからな。


「それで、あの方はベー様が気を使うだけの方なので?」


「あの叡知の魔女さんはおそらく、セーサランを知ってるな」


 勘でしかねーが、外れてはいないはずだ。


「あの消滅魔法ですか?」


「ああ。あれはセーサラン対策で考えたものだと思う」


 必要だから創られたのなら、それだけの存在だったってこと。そんな存在ならなにかしら伝わっているはずだし、伝わってないのなら隠蔽されているかだ。


 しかも初代様とやらは転生者で導き手。グレン婆と繋がりがあるような口振り。他にも転生者の影がある。ってことはその時代にも転生者を呼び込むなにかがあったってことだ。


「帝国はいろいろと謎があり、あの魔女さんが受け継いでいる感じだ。こちらの知らない情報を持っているなら仲良くしたほうが得だろう?」


「それをそこの魔女に聞かれてもよろしいので?」


 ギクリとする委員長さん。まだまだ腹芸ができないお年頃か。


「叡知の魔女さんは、こちらの考えなんてお見通しだよ」


 あれはオレより遥かに強かな存在だ。


「まあ、こちらはこちらの事情で進めたらイイさ。目的は同じなんだからな」


 オレが生きているうちにこの世界が一つになることはないだろう。なら、それぞれの思惑のうちでやっていくしかねー。


「誰よりも強者たれ。昔、わたしが仕えていた魔王様が言ってました」


 それを倒したのがカイナってオチだろう。


「それはちょっと違うな。弱者でも知恵を使えば強者を屠ることはできるからな」


「では、ベー様ならなんと申します?」


「死にたくなければ強く賢く味方を集めろ、だな」


 数に勝る力なし。皆で幸せになりましょう、だ。

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