第1313話 毒花、セーサラン
R−18な解剖をして一言。
「オレには手はあまるわ」
まさにお手上げ。謎の宇宙生命体は正真正銘謎だわ~。
「あんたはわかるかい?」
カイナーズから参加した神経質そうな男、セイワ族か蒼魔族のハーフ(どちらも青い肌してるが、耳が尖ってるほうがセイワ族だ)なのかわからんが、解剖とか好きな顔している。いや、どんな顔だとかの突っ込みはノーサンキューだぜ。
「……わたしもわかりません。なぜこんな構造しているのか謎すぎます……」
普通は筋肉があるのだが、丸いグミみたいのが連なり、ドロッとした液体が四種類詰まっていた。甲殻類かと思ったら外皮は黒く変色してなんだかわからなくなっている。博士級の頭脳を持った者をダース単位で連れて来ないと仮定すら思いつかんわ。
「やはり、先生を連れて来ないとダメだな」
こんなの先生でもなきゃわかんねーよ。マッドではあるが、この世界で一番のマッドサイエンティストだろうからな。
「もしかして、凶血のプリグローグ様のことですか?」
「ん? 誰だそれ?」
オレの知り合いにそんなヤツいねーぞ。
「いや、ご主人様の名前ですよ! 忘れないでくださいよ!」
「あ、そう言や、そんな名前だったな。忘れてたよ」
たぶん、三秒後には忘れているだろうが、オレの中では先生だ。先生と呼ぶのは先生だけなんだから問題ナッシングだ。
「先生を知ってんのかい?」
「魔大陸で凶血の名は有名ですよ。実験のために町一つ潰すような方ですからね」
「ほんと、マッドな先生だよ」
先生の所業にどうこう言うつもりはねー。弱い者は強い者に搾取される。弱肉強食な世界なら弱いは罪だからな。
……一度死んで、また死にそうになったら嫌でも理解できるぜ……。
「プリグローグ様は来られるので?」
「少し寝ると言ってたからな、二、三年は起きて来ないんじゃねーかな?」
あの先生の寝るは人の物差しでは測れない。ちょっと眠るつもりが十年くらい眠ったことがよくあると言ってたからな。
「映像は録ってるな?」
「はい。五台で録画しております」
「じゃあ、部位ごとに切り分けてあらゆるものを振りかけたりして、なにに強くてなにに弱いかをこと細かく調べろ。特に熱は念入りにやれ。ミサイルの爆発熱が効かねーってことは冷気に弱いかもしれんからよ」
「わかりました。そうなると検体がもっと必要ですな」
「Xはまだいるはずだ。ってか、あいつらの総称と個体名をつけねーと不便だな。なににする?」
セイワ族と蒼魔族のハーフな男に尋ねた。
「わたしが決めるのですか?」
「これから第一人者になるんだからあんたが決めな」
解剖担当に選ばれたなら優秀ってことだろう。セイワ族も蒼魔族も長命種。オレが死んでも生きてるはずだ。
「では、セーサランではどうでしょうか? 魔大陸に咲く毒花の名前ですが、増えると大地を枯らす花なのですよ」
「あーあの花ですか。確かにXみたいに厄介ですね」
レイコさんも知る害になる花のようだ。
「なら、セーサランと命名する。あんたの名を刻んでおけよ。未来に託すものなんだからよ」
「……わかりました」
満更じゃない顔で敬礼してみせた。名誉心が強いよな、魔大陸に生きるヤツってよ。
「あとは任せる。オレじゃ手にあまるからよ」
「はい、お任せください。あと、プリグローグ様が起きたら一緒に研究をしてくださるようお口添えお願いします」
「あの先生なら来るなって言っても無理矢理来て、問答無用で仕切るよ。そうならないために先をいってな」
「ふふ。凶血より先を、ですか。それは心をくすぐられますな」
「先生が凹むところを見せてくれや」
上には上がいるってことを知るのも先生のためだろうよ。あの負けず嫌いには、な。
「ご期待に添えるよう鋭意努力致します」
楽しみにしてるよと結界ドームを出た。
「魔女さんたち。叡知の魔女さんに報告頼むぜ」
見てるしかなかった委員長さんにニヤリと笑ってみせた。こっちもこっちで上には上がいるってことを教えんとならんからな。
「どう報告したらいいかわからないわよ。わたしたちの理解を超えてるわ」
「なら、もっと上のヤツを連れて来な」
置いてきぼりにされたくなかったらな。
「ドレミ。ちょっと眠るわ」
さすがに疲れた。ちょっくら眠らせてもらうわ。
結界クッションを創り出して、その上に倒れ、おやすみ三秒で眠りへとついた。
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