第1312話 未来へのバトン

 戦いはサプルが勝利した。


「だが、サプルの戦いはこれから。打ち切りエンドでさようなら~。次回作へ乞うご期待。あるかないかは君たち次第だ」


 よし。オレはオレの物語を進めるとしましょうかね。


「お前の苦悩はまだまだ続く、の間違いだろう?」


 そんな打ち切りエンド嫌だよ! いや、オレの人生、打ち切りにはさせねーけど!


「クソ。オレのスローライフはもっと穏やかなのによ!」


「スローライフってアレだろう? 冒険したり厄介事に巻き込まれたりハーレム作ったり……まんまお前の人生だな……」


 厄介事に巻き込まれるのは、百歩譲って認めるが、冒険もハーレムもしたことねーよ! 


「べー様」


 口の減らない猫をつかんで投げようとしたら、二代目メイド長さんに入って来られてしまった。


「サプル様が帰還しますので、わたしたちはこれで失礼します」


 二代目メイド長さんがお辞儀し、メイドさんズを連れて去っていった。


「……優秀なメイド長さんだよ……」


 ダークエルフってどうなってんだろな? メイドになるために生まれて来たのか? いや、メイドらしい仕事してないほうが多いけど!


「中尉。X4の死亡が確認されたら教えてくれ。オレも見たいからよ」


「はっ! 了解しました!」


 それまでに精神を落ち着かせておこう。地下に下りるより地上に出てからのほうが精神的に追いやられてるぜ。


 コーヒーを飲んでいると、ヴィアンサプレシア号とプリッシュ号改がやって来た。


 どうやら湖に着水するようで、徐々に降下して来る。


「戻る必要あったのか?」


 まあ、あちらはあちらのやり方があるからどうでもイイが、まだ物体Xがいるかもしれんのにアブねーだろう。いや、物体Xのほうがアブねーか。


 ヴィアンサプレシア号とプリッシュ号改が着水。クルーザーが何隻も出て来た。プリッつあんは飛んでこちらにやって来ました。


「ヤッホー」


「ヤッホーじゃねーわ。騒がしくしやがって」


「べーほど騒がしくしてないわよ。流通を遮断しておいて」


 クッ。見透かされてる。どこでバレた?


「やってること見てたらわかるわよ。べーは悪辣だからね」


「お前のストッパーは優秀だな」


 オレを止めるなど片腹痛いわ。やれるもんならやってみるがイイ!


 ……でも、全力で来られたら嫌なのでこそっとやりますけどね……。


「それで、勇者ちゃんはどうしたの?」


「ミタさんに任せてるよ。そのうち連絡来るだろう」


 あれからまだ三時間。まだ連絡は来ないだろうよ。


「そうなんだ。じゃあ、それまで待ちますか」


「そう言や、レニスってどうした? もう腹もデカくなってんだろう」


 何ヶ月かは知らんが、ちょっと腹が出てた記憶はある。つーか、あれで出歩いてるとか、妊娠舐めてんだろう。


 ……いや、オカンも産まれる数日まで働いてたけどよ……。


「アサクーサに閉じ込めてるわ。ちょっと目を放すといなくなるからね」


 ん? アサクーサ? って、浅草のことか? 


「カイナが名付けたのよ」


 ま、まあ、浅草っぽいしな、使う者がイイならオレに文句はねーよ。


「カイナーズの医療班がつきっきりで見てるから大丈夫よ。予定では一月から二月くらいだって」


 もうそんな周期になってたのか。ほんと、妊娠しちゃダメな女だよ。


「安全に産まれるとイイな」


「そうね。妊婦が妊婦だしね……」


 この世界に安産祈願できる場所はないのか? ヤオヨロズの国に造っておくか?


「べー様! X4の死亡が確認できました」


「あいよ。オレらはちょっと調べて来るよ」


「物好きね、あんな気持ち悪いの調べるなんて」


 物好きは認めるが、物体Xを調べるのは今後のことにかかわって来る。見逃すことはできねーよ。


「わたしはパスね」


 最初から期待してねーよ。


 スネーク大隊に案内してもらいX4のところへと向かった。


 四時間かけてX4のところに到着したらテントがいくつも設営されており、防護服を着たヤツまでいた。


「ちゃんとバイオハザードに気をつけてんだな」


 まあ、もうバイオハザードが起きてるようなもんだけどよ。


「べー様。防護服を着ますか?」


「いや、いらんよ。オレの力で防護するからよ」


 ってか、地下に下りるときに結界を纏わせてある。鳥インフルだって防ぐさ。


「もう解体してるのかい?」


「血液は採取しましたが、解体はしておりません。刃物が通じませんので」


 まあ、著作権保護の兵器で倒したからな、刃物なんて通じるわけねーだろうよ。


 X4のところへ向かうと、肌? 皮膚? が黒くなっている。生きてるときは小麦色してたのにな。


「こんなのが大量に生まれてたかと思うとゾッとするな」


 視界に入るだけで三十以上はあった。あれが孵化したら世界は酷いことになっていることだろうよ。


「水蒸気爆発が収まったらまた調べにいかんとな」


「それでしたらブラックサウザンガー隊を呼び寄せております。あれなら溶岩の熱さにも耐えれますので」


 アリザ、どんだけ最強生命体なんだよ。あいつらも宇宙から来たのか?


「ん~。解体するにはデカいし、変な病気を撒き散らしても困るし、小さくするか」


 宇宙から来た物体Xに効くかな? と思ったら効きました。メルヘンの力は宇宙レベルだな。


 三メートルくらいにして、外に漏れないよう結界ドームを展開した。


「解体、いや、解剖する。カイナーズからも人を出せや。あと録画してくれ。未来に託すからよ」


 今のオレにできることをして未来にバトンを渡すよ。

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