第1310話 耳をすませば
「マイロード。ミタレッティー様から通信です」
久しぶりに幼女メイドになったドレミがスマッグを差し出して来た。
「通じるんだ」
結界の外は酷いことになってるのに、スマッグは当たり前のように通じるとか、エリナは神か? あ、腐を撒き散らす腐神兵だったな。
スマッグを受け取る。しもしも?
「べー様。勇者様を保護しました。全員無事です」
「おう、ご苦労様。そちらと繋いでも大丈夫かい?」
「いえ、もう少しお待ちください。身を綺麗にしますので」
まあ、何日も風呂に入ってないだろうし、汚れたままで野郎の前に立つのは嫌だろうしな。
「ん? もしかして、先遣隊って女なのか?」
とはスネーク大隊のヤツに尋ねた。
「はい。勇者様は女性と聞いていたので」
「それはまた、気の利いたヤツがいること。あの氷のような青鬼レディか?」
それでわかったのだろう、スネーク大隊のヤツらがオレから目を逸らした。
「わかった。こちらは先に上がるから終わったら連絡してくれや」
「畏まりました」
と、通信が切れた。あちらから切るとは、どうやら忙しそうだ。
「あちらは大丈夫なようだし、地上に戻るか」
「どうやってよ」
こうやってだよと、転移結界門を創り出し、塩湖の湖畔に設置しておいた転移結界門に繋いだ。
「……このチート野郎が……」
なんの罵りだよ。お前だって神(?)から三つの能力をもらってんだから平等だろうがよ。お前が望んだ能力を、な。
転移結界門から出ると、なんか爆音が轟いていた。なによ?
音がする方──結界双眼鏡で山脈方向を見ると、鋭角な怪獣が暴れていた。
「……もしかして、X4か……?」
一瞬の邂逅だったが、感じる気配が同じっぽい。地上に出るまで成長したのか?
「ってか、水蒸気爆発の威力はスゲーな」
結界双眼鏡を右にずらすと、水蒸気だか灰だかがもくもくと天高く上がっている。
「お前がやったんだけどな」
「もっとスゴいことになる予想してたんだが、これなら問題ねーな」
「自然災害を問題ないとか、サイコパスの基準で語んなや」
まったく、突っ込みのうるさい猫だよ。
「まあ、これでこちら側にやって来るヤツはいねーな」
災い転じて福と成す。シープリット族にガンバって支配してもらおうかね。クケケ。
「……お前、どこまで計算してやってるんだよ……」
「そうなったらイイな~、ってくらいかな?」
オレはそこまで計算高くねーよ。まあ、状況状況で最良の選択をしてはいるがな。
「べー様。スネーク大隊がアレと戦っているようです」
連絡を取ったのか、スネーク大隊のヤツが教えてくれた。
「状況は?」
「あまりよろしくないようです。対戦車砲で対応していますが、足止めが精々とのことです」
「スネーク大隊だけでいけるか?」
「援軍が来るそうです」
「援軍?」
なんだろう。このパターン、前にも経験したような気がするんだが……。
「あと五分で到着するそうです」
あーこれはあれだ。もうオレの出番はねーってことだ。
「うん。コーヒーでも飲むか。山岳隊、スネーク大隊は酒でも飲め。オレが許す」
土魔法でテーブルと椅子を創り出し、酒とツマミを出してやる。
「お、おい、のんきにもほどがあんだろう」
「もうのんきにしててイイよ。X4の未来は決まったんだからよ。ほら、ペ○シとハンバーガーだ。食え」
魔女さんたちにはパンケーキと紅茶を出してやった。
「いったいどう言うことだよ?」
「ヴィアンサプレシア号が来ている時点で気がついておくべきだったな」
あと、プリッつあんもついて来なかったことにも。
「はぁ? どう言うことだよ? 説明しろよ」
「耳をすませてみろよ」
もうオレの耳には届いているぞ。ファンタジーの空では絶対に聞くことはない音が、な。
「……こ、これって……?」
「べー様、来ます!」
空に目を向けると、いくつものミサイルが飛び越えていった。
察しのよい方ならもうおわかりだろう。ファンタジーの空を翔る少女のことを。
「うちの妹はなにになろうとしてんだろうな?」
X4へとミサイルが直撃。大爆発を起こした。
そして、オレンジ色のF−4とメルヘン機がV字編隊を組んで上空を飛び抜けていった。
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