第1308話 ヤヴイ

 連打! 連打! 連打! で、X3をぶっ潰す。


「……お前の能力、チートすぎんだろう……」


 カイナやエリナと比べたらオレの能力など児戯なもんだよ。


「力は使いようだ」


 前世は趣味もなく、ただ漫然に生きていたが、こんな能力があったらイイな~と妄想することは多々あった。


 ……まあ、前世の記憶が受け継がれたのは妄想(いや、想像か)できなかったけどな……。


「飛竜より堅い、な」


 砲弾に纏わせた結界からX3の強度がなんとなくわかった。


「……比べる対象がおかしすぎるだろう……」


「オレが倒した中で飛竜が上なんだからしょうがねーだろう」


 捌いたのはまだ六歳だったサプルだけどな。


 計二十五発でX3が沈黙したが、まだ生きてる感じがする。さすが宇宙から来た生き物。生命力が高いこと。


 結界弾を創り出し、殴って撃ち出した。


 X3に直撃。結界に包まれる。


「圧縮」


 で、トドメを刺した。


「し、死んだのか?」


「お前、フラグ立たせるなよ。言わないようにしてたのによ」


 まあ、立ったら立ったでへし折ってやるまでだがな。


「べー様。我々が確認して来ます」


 スネーク大隊の一人が確認しに向かった。


「ってか、勇者はこっちにいるのか? いや、そもそも生きてるのか? いくらチート勇者でもまだ七歳の女の子だろう」


 あれ? 勇者ちゃんって七歳だったっけ? もっと幼かったような気がするんだが……まあ、なんでもイイか。


「生きてはいるよ」


 どんな状況になっているかはわからんけどな。


「べー様。X3の死亡を確認しました」


「ご苦労さん。なら、肉塊一つ残らず片付けておくか」


 宇宙産のDNAはおっかねーからな。


 結界に収められなかったX3の肉塊を結界で集め、サンプル以外は圧縮して消去した。


「静かだな」


「今のがラスボスだったのか?」


「だからそう言うフラグを立てるなや」


 最後、油断したところで、なんてなったら泣くに泣けんわ。


「いくぞ」


 またスネーク大隊が先頭に立ち、穴の奥へと進んだ。


「……穴が小さくなって来たな……」


 あと、温度が高くなって来ている。結界を施してなかったら確実に死んでたところだろうよ。


 しばらく進むと、また縦穴が現れた。


「……熱風が凄いな……」


 空気が歪んでいる。結界を解いたら一瞬にして熱死してしまうかもな。


「この下にいくのか? とても勇者がいるとは思えないだろう」


「普通はそうだろうな」


 だが、勇者ちゃんは野性的な直感を持っている。咄嗟に物体Xが来ない場所と判断してここに逃げたんじゃねーかな?


「そう言や、カイナーズの先遣隊って見つかったのか?」


「いえ、まだです。ですが、補給召喚をしているので生きてるとは思います」


 とはスネーク大隊の一人。


「カイナーズは、この熱に耐えられるのか?」


 さすがに勇者ちゃんたちに施した結界は分裂仕様にはしてなかったぞ。


「先遣隊や偵察隊は、カイナ様が直接魔力を分けているので溶岩に落ちても死んだりはしません」


 カイナってそう言うところは徹底してるよな。安全第一って感じか?


「下りるぞ」


 土魔法で螺旋階段を創って下へと向かった。


「物体Xもさすがにマグマには勝てんのかね?」


「銃弾で死ぬくらいだからそうかもな」


「エイリアンやプレデターじゃないだけマシだな」


「物体Xが数種類だけ、だったらな」


 侵略するにしては物体Xは弱い。どんなに繁殖力が高く数が多くてもその星の生き物に淘汰される可能性のほうが高いだろう。


「今まさに村人に滅ぼされそうとしてますしね」


 幽霊さんは皮肉が利いてますこと。


「止まれ!」


 と、先頭にいる中尉が声を上げた。


「なにか来るぞ!」


 確かになにか這いずる音がする。ヤヴイ感じのな……。


 すぐに土魔法で横穴を掘り、皆を中へと入れた──その瞬間、なにかが通りすぎていった。


「……X4かよ……」


 もう数字じゃなく個別呼称をつけたほうがいいかもな……。


「ミタさん、上にいるヤツに連絡してくれ」


「わ、わかりました!」


 スマッグを出してどこかへと連絡した。エリナの能力、マジチートで助かるわ。


 穴から顔を出し、上を見るが、X4の姿はなかった。


「……あれは、ヤヴイものだったな……」


 オレの考えるな、感じろが働いた。X3の比ではねーくらいのヤヴイものだ。


「時間が惜しい。飛び降りるぞ!」


 言って穴へとダイブした。


 勇者ちゃん、この先にいてくれよ!

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