第1307話 害虫駆除

 結界灯をいくつか展開させた。


「なんと言うか、生物の体内みたいだな」


 今自分が踏んでいるところを足で叩くと、肉っぽい弾力があり、結界刀で斬ったら透明な液体が滲み出て来た。


「……生きてると言うより装置って感じだな……」


 一帯を結界で包み込み、いっきに圧縮する。


 厚みは一メートルくらいあり、切り口からは透明な液体が漏れている。


「爆発することはないか」


「あったらどうするつもりだったんですか!? 無謀すぎますよ!」


「爆発してくれるなら万々歳だよ」


 それなら問題はいっきに解決だし、オレの結界なら噴火したって防げるさ。


「と言うか、最悪のほうに流れてるよ」


 切り口がまるで細胞分裂かのような働きを見せている。


 まあ、一瞬にして治癒、とかじゃない。じわりじわりと治癒している感じだ。


「このスピードを考えると、落ちて来たのは百年も前かな?」


 なんともゆっくりな侵略だな。


「百年もかけた侵略を村人に阻止されるんだから、Xさんたちはたまったもんじゃないでしょうね」


 仲良くしましょうってんなら仲良くもするが、問答無用で侵略して来るヤツらの事情など知るか。惨めに潰されろ、だ。


 一通り、結界圧縮して一帯を元に戻した。


「反撃がねーな?」


「その敵を呼び寄せる姿勢、止めたほうがいいですよ」


 滅ぼしても心が痛まない相手にしかしないよ。


「そう言って村周辺の魔物を根絶やしにしたじゃないですか」


 それを反省してのことです!


「……もう、いないの……?」


「いや、分散してるんじゃねーかな? スネーク大隊もXをぶっ殺してるだろうし」


 カイナーズも敵には容赦はねー。見つけたらミンチにしてるだろうよ。


「……Xさんも落ちて来るところ間違えましたね……」


 それで諦めてくれたらいいんだがな。どうも侵略する手口が確立された感じがするし、繁殖力が異常だ。多少の失敗など恐るるに足らん、って感じだぜ。


「さて。どちらに向かおうかね?」


 肉の壁は幾方向にも続いている。


「まるで樹の根だな」


 おそらく、どれもマグマにまでいってると思うが、そのままマグマにダイブは御免被る。


「ミタさん。爆破できるようにしてくれや」


「畏まりました」


「逃げ道を塞ぐ気?」


「大丈夫だよ。オレの土魔法は神の域だ」


 文字通り、土魔法は神(?)からもらった能力。間違ってはいない。


「どれにしようかな? 神様の言う通り。よし、あの穴にいくか」


「また、そんな適当な……」


 オレの当てずっぽうも神がかっている。ダメなときは神様が悪いってことだ。


 ……こんなことにオレに強要させる神様が憎いぜ……。


 結界圧縮排除しながら先を進むと、Xがわらわらと現れた。


「べー様、ここは我々がやります」


 と言うのでスネーク大隊に任せた。


「今さらだけど、補給なしてよく戦えるな?」


 ってか、装備も変わってるな。ランボー者が持ったら似合いそうな機関銃をぶっ放しているよ。


「いえ、一小隊には補給兵がいて弾薬を召喚しています」


「召喚って、また凄いことやってんな」


 それはもう無敵じゃねーか。いや、最初から無敵の軍隊だけど!


「……あなたたち、いったいなんなのよ……」


「帝国だけが発展してるわけじゃねー、ってことだよ」


 小人族がイイ証拠だ。努々忘れるなかれ、だぜ。


「背後からXが現れました!」


 メイドさんからの報告。


「ミタさん」


「畏まりました。皆殺しにしなさい!」


 メイドから出る言葉じゃねーが、うちのメイドからはよく聞く言葉だ。


「オレも手榴弾に慣れておくか」


 前はスネーク大隊に任せ、ポケットから手榴弾を出してピンを抜いて、メイドさんの間から全力投球。Xを何匹も粉砕しながら五秒後に……爆発しねーな。


「不発か?」


「……壊れたと思いますよ……」


「貧弱だな、手榴弾って」


 もっと硬いイメージがあったんだがな。これなら鉄球のほうがまだ殺傷力があるぜ。


「べー様、四十メートルから五十メートルくらいの場所に投げてください」


 ミタさんからの言葉だと、もう殲滅されてますけど。


「しょうがねーな。なら、大リーグボールハリケーンだ!」


 手榴弾を結界で包み込み、渦巻くような動きをさせてXを薙ぎ払い、百メートルくらいのところで爆発させた。


「やっぱり威力がショボいな」


 もっとこう、家が吹き飛ぶくらいの威力が欲しいぜ。


「生き埋めになっちゃいますよ」


「大丈夫。土魔法で補強させながら進んでるからな」


 結界圧縮排除したら土魔法で補強する。イイ訓練になるぜ。


 少しずつ先に進んでいると、後方からのXが潮が引くようにいなくなった。


「……不味い流れですよね……」


 だな。


「つまり、この状況を不味いと判断できて、違う対処を考える存在がいるってことだ」


 ただ、人並みの知能があるとは思えない。決められたことを決められた通りに動いて、問題が出たら考える知能はある感じっぼいな。


「メイドさんズ、下がれ」


 土魔法で砲弾をいっきに二十発創った。


「害虫駆除はオレに任せておきな」


「頼もしいのに、なぜか不安を感じさせるのがべー様ですよね」


 ちょっと黙っててくれません。今、シリアスな場面なんですから。


「やっぱりX2か。害虫に不足はねー」


 結界灯に照らされた領域にわしゃわしゃさせた触手が現れた。


 結界砲に砲弾を詰める。


「殲滅技が一つ、殲滅拳!」


 砲弾の尻を全力で殴って撃ち出した。

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