第1306話 いざ、出陣じゃ
「──Xだ!」
投げナイフに酸素を籠めてると、山岳隊のヤツが声を上げた。
視線を周りに向けると、羽の生えたXが壁一面から飛び立っていた。キモ!
「結界内には入って来ないから安心しろ」
「ベー様。中からは攻撃できますか?」
「できるよ。やりたいなら攻撃しな」
まだ投げナイフに冷気籠めは終わってない。弾に余裕があるなら暇潰ししてろや。
「弾はある。一匹でも多く排除しろ」
六人の山岳隊とスネーク大隊の八人が羽の生えたX──X3へと弾丸をばら蒔いた。
「うるさくて集中できないわよ!」
と委員長さんが怒るので防音の結界を纏わせてあげました。ガンバレ。
「宇宙の生き物、なにか弱くないですか?」
「今はこの世界に慣れているところか、先遣隊と送り込まれた羽虫か、ただ単にはぐれて落ちて来たか、さて、なんだろうな?」
まだなんの情報もないこの状況ではなんとも言えんよ。
「だが、人魚のことを考えると、楽観的にはなれんよな~」
人魚は新天地を求めてこの世界にやって来た。星を航る船を造る技術を持った生命体が、だ。
星の寿命が尽きたとか、戦争とかならイイ。だがもし、物体X群に追われたとなれば最悪だ。この世界の位置を知られているかもしれないってことだ。
「もしかすると、転生者はそのためにこの世界に来たかもしれませんね」
それが正解じゃないことを切に願うよ。
「オレはただ、悠々自適にスローライフを送りたいだけなんだがな」
こんなスローライフ詐欺みたいなこと望んじゃいないんだよ。
「あ、そうだ。ミタさん、手榴弾とか持ってる? あったらちょうだい」
銃は不得意だが、投げる武器なら大得意だぜ。
「はい。破片を飛ばすのと爆発するのがありますが、どちらにしますか?」
ありゃまあ、手榴弾って一種類だけじゃなかったんだ。
「投げやすいのならなんでもイイよ」
オレが投げると、爆発するより当たったときの衝撃のほうが大きいからな。
「では、M67手榴弾を。カイナ様製なので威力は三割増しです」
と、金属製の箱を出し、蓋を開けると丸っこい手榴弾が入っていた。
使い方をレクチャーしてもらい、ピンを外して結界の外へと放り投げる。
五秒後に爆発。空中だどいまいち威力がわからんな。だがまあ、投げやすくてイイ。これなら五百メートルは余裕だな。
……まあ、途中で爆発しそうだけど……。
十個ほど試してなんとなく要領は得たので、手榴弾をポケットに詰め込んだ。
二百個くらい詰め込んだ頃、底に到着した。
「委員長さん、どんな感じだい?」
「三百は籠められたと思うわ」
「さすが委員長さん。叡知の魔女に選ばれるだけはある」
魔力量はバリラ(赤き迅雷の魔術師だよ)よりやや下って感じかな? 魔女の凄さがよくわかるぜ。
「山岳隊。投げナイフを仕舞い込め」
「魔女さんたちは、少し休め。スネーク大隊は、まだ大丈夫か?」
「全然余裕ですよ。これなら二日は撃ち続けられます」
頼もしいことで。
「じゃあ、二時間後に出発するから休み休み撃ってろ」
「了解です」
スネーク大隊に任せ、オレはコーヒーブレイクとする。あーコーヒーうめ~。
「……緊張感のない男ね……」
「まだ緊張するほど追い込まれてるわけじゃねーからな」
どちらかと言えば物体X群のほうが追い詰められてんじゃね? 次々と撃ち落とされてるし。
「ってか、死体で埋め尽くされそうな勢いだな」
まるで雪がこんこんと降るかのようにX3の死体が積み重なっていく。
「数を増やせるタイプか。Gな生き物より厄介そうだな」
一匹見たら十匹はいると思え。なら、数千匹いたら数万匹はいるってか? もう絨毯爆撃でもしなくちゃ全滅させられんだろう、これは……。
結界で集めて細胞が破壊されるまで圧縮。土魔法で固めてポイ。数万年後に大地の肥やしとなれ、だ。
さすがに一時間も撃ち落としてたらX3の数が減り、二時間後には狙わないと撃ち落とせないくらいの数となった。
「委員長さん、体力は回復できたか?」
「ええ。できたわ」
顔は気丈にしてるが、声音は正直。大して回復してないようだ。
「それはなにより。山岳隊、スネーク大隊、準備はイイか?」
「問題ありません」
「いつでもどうぞ」
「ミタさん」
「万全です」
どいつもこいつも元気なこった。
「よし。いざ、出陣じゃ!」
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