第1303話 触手

「カイナーズ空挺大隊を預かるシュースケー少佐であります!」


 右目にアイパッチをした赤鬼さん。出て来る場所ゲームを間違えてんじゃね? ってくらい潜入脱出が得意そうな雰囲気だ。


「スネークだな」


「あ、おれも思った」


 茶猫も同じ感想のようだ。


「スネークとはなんでしょうか?」


 茶猫くん、君に任せた。大人の事情に引っかからないよう説明してあげなさい。


「まあ、蛇って意味だが、誰にも気がつかれず潜入し、見事に作戦を遂行して、生きて還る超一流の兵士を讃えてスネークって呼ばれるんだよ」


 うむ。それなら大人の事情には引っかからないだろう。見事だ、茶猫くん。


「……スネーク、ですか……」


 こちらの世界の者にどうとらえられるかわからんが、そう迷惑そうな表情ではなさそうだ。


「まあ、気に入ったら勝手に使いな」


 スネークは英名。大人の事情には引っかからない、はず。


「はい。では、これから空挺大隊の通称をスネーク大隊にします」


「好きにしたらイイが、勝手につけて大丈夫なのか?」


「問題ありません。カイナ様はそう言うことに寛大ですので」


 まあ、確かに寛大か。趣味でカイナーズを創ったようなバカだからな。


「少佐たちは山の探索を頼む。カイナーズの先遣隊がいるはずだからよ。あ、ああ言うのが出たら殺してイイから。ただ、触ったり血を浴びたりするなよ。どんな害があるかわからんからよ」


「了解しました」


 空挺──じゃなく、スネーク大隊が散開していった。


「オレたちは先を進むぞ」


 この道はグランドバルへと続く。なら、勇者ちゃんたちも通ったはずだ。


「勇者ちゃんの性格なら脇道に逸れることもあるのでは?」


 そう言われると不安になって来るな。勇者ちゃん、よく言えば天真爛漫。悪く言えばアッパラパーだ。予想がつかないところがあるからな~。


 ま、まあ、大丈夫。オレの出会い運は勇者ちゃんより勝ってるはずだ。たぶん……。


「マイロード」


 久しぶりにいろはが現れた。


 ……このスライム、異空間にでも隠れてるのかな……?


 次々といろはに似たヤツらが現れる。


「奇妙な音がします」


「奇妙な音? 聞こえる人?」


 他の者を見て尋ねるが、誰も聞こえないと首を振った。


「……聞こえる……」


 と、茶猫。それは猫の特性からか?


「どんな音だ?」


「ジジッ、ジジッって感じだ。ネズミの鳴き声に似てるな」


 ネズミはチューチューじゃないのか? 


「いや、音ってよりノイズか? 耳ってより頭に直接響いて来る感じだ」


 謎の電波を受信してる、ってことか?


「……近づいてくる……」


「の、ようだな」


 土から振動が伝わって来た。


「ダオ中尉!」


「わかっている!」


 オレはなにもわかってないので説明していただけると幸いです。


「ベー様、お下がりください」


 ミタさんの指示に素直に従い、後方へと下がる。オレだと見せ場は作れないからな。


 土から伝わって来る振動は徐々に大きくなっている。


「……デカいな……」


 さっきの物体Xとは違うな。それに、群れがいない。


「ミタさん。スネーク大隊に注意喚起しろ。敵は知恵があるぞ」


 たぶん、スネーク大隊とオレらを分断するつもりだ。親友(年齢不詳で器用貧乏な酒好きだった男だ)がよくやっていた作戦だ。


「畏まりました」


 茶猫の首をつかみ、オレの肩に乗せる。潰されたら三兄弟に申し訳ねーからな。


「来るぞ!」


 右から……触手? がたくさん現れた。


 山岳隊やミタさんが即座に銃をぶっ放す。


 カイナが生み出した銃は元のより威力があるらしいが、現れた触手はワイヤーかと思うくらい強靭で、弾くのが精一杯のようだ。


「中尉! 対物ライフルへ!」


 ミタさんが無限鞄から対物ライフルとやらを大量に出して山岳隊へと配った。


 いろは隊も対物ライフル……じゃなく、レールガンだっけ? まあ、腐から生まれたもの。非常識な威力を見せてるよ。


「血が緑色とか、完全に宇宙産だな」


「硫酸の血じゃないんだな」


「そうだな。あの硫酸、いろいろ使い道があるのによ」


「……転生者って、ほんと非常識ですよね……」


 それはエイリアンを知ってるか知らないかの差ですぅ。


「どんだけ触手があるんだ?」


 対物ライフルには勝てないようで、触手は次々と撃ち落とされているが、触手は次から次へと現れる。どうなってるんだ?


「RPG−7、いきます!」


 戦争映画でよく見るロケットランチャーをぶっ放す我が家のメイドさんズ。もはや突っ込むのも面倒である。


 対戦車と言われるだけあって威力がスゴい。つーか、次々と発射させるメイドさんズがもっとスゴいわな……。


「容赦ねーな、お前んとこのメイドって」


「そうだな。メイドは大切にしなくちゃダメだと思い知らされてるよ」


 次から次へとロケットランチャーを発射し、無限触手を無限に吹き飛ばしていく。


「物体Xもメイドにかかれば雑魚でしかねーな」


 とりあえず、出番がないのでペ○シを出して終わるのを待つことにした。


「おれにもくれよ」


 茶猫にも出してやり、二人で乾杯した。なんの乾杯かはそれぞれで考えてくださいませ。


「……転生者ってヤツは……」


 レイコさんがなにか言ってるが、気にせずペ○シをいただいた。ゲフ。

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