第1302話 目くそ鼻くそ
ハイ、終~了~! お疲れしやした!
「見せ場は!?」
叫ぶ茶猫。どうしたよ?
「いや、散々意気っておいて見せ場はなしかよ! 全世界の村人に謝れ!」
「お前、なに言ってんの?」
「おれがおかしいみたいに言うな! お前がおかしいんだからな!」
「しゃべり猫に言われてもなぁ~」
「お前ほんと、いい加減にしろよな!」
猫とは思えない力で頭を齧られるが、メルヘンと比べたら甘噛みだ。気にもならんよ。
「レイコさん、こいつら見たことある?」
「ありません。と言うか、物体えっくすってなんなんですか?」
オレも物体Xは知らんのよね。映画タイトルとエイリアンってことぐらいは辛うじて知ってるくらいだ。
「まあ、宇宙から来た生命体、ってことだよ」
「……宇宙、ですか……」
幽霊にはピンとこんのか?
「本当に宇宙から来た生命体なんですか、これ?」
「そこまではわからんよ。だが、こんな気持ち悪いものは宇宙から来たとしか思えんよ」
この世界にもグロテスクな生き物はいるが、体毛もなく蟲とも魔物とも違う生き物がこの星で生まれたとは思えねー。
「中尉。増援を呼べるか?」
山岳隊の中に無線機っぽいものを背負ったヤツがいる。たぶん、通信員だろうよ。
「それが、先ほどから通信ができなくなりました」
「ミタさん、スマッグは?」
「問題ありません」
この辺の磁気が乱れてるだけならイイが、意図的に妨害されたら相手は知的生命体となり、それなりの技術力があるってことになるな……。
「ベー様たちと同じ転生者と言うことはありませんか?」
「それはない。とも言い切れねーが、オレはないと思う」
宇宙生命体を呼び出せる能力を願わない限りはな。
「……なんか嫌な流れになってんな……」
どんよりしたものが渦巻いてる感じがする。これは、オレに、ではなく世界規模で関係している感じだ。
「まあ、成るように成るか」
土魔法で封じ込めた物体X群を結界でモザイク処理。R18な表現法で消去させた。
「解剖とかしなくてよかったんですか?」
「二匹は生かして捕獲してあるよ」
結界で捕獲した物体Xを引き寄せる。
「二匹だけですか? もっと捕まえたほうがいいのでは?」
「これがどんなもんかわからんうちは少ないほうがイイ。増殖されたら対処しきれんからな」
どこぞのエイリアンみたいだったら大変だからな。
「一匹はカイナーズに。もう一匹は帝国に送る」
「なぜよ?」
と、大人しくしていた委員長さんが前に出て来た。
「世界の流れ、時代の流れ、常に変化している。昨日まで非常識だったことが今日常識になったりもする。それらに取り残されたくないのなら常に最前線にいろ」
帝国は転生者の影がちらほらと見えている。なら、世界情勢には嫌でも付き合ってもらう。いろいろ問題を放り投げられる国は必要だからな。クク。
「……悪いこと考えているでしょう……?」
「嫌なら断ればイイさ。帝国がなくても世界は常に変化していくんだからな」
まあ、委員長さんに拒否権はねー。いや、叡知の魔女さんには、ってのが正しいか。オレのほうが世界の謎を握っている量が多いんだからな。溢れたものを見逃すなんてできんだろうよ。
「……わかったわ……」
物体Xを厳重に結界でくるめ、収納鞄に入れる。
「それは、叡知の魔女さんにだけ開放できるようにした。外から隔離した場所でやれな」
叡知の魔女さんならそんな場所を用意できるだろう。なんか不味そうなこともやっているだろうからな。
「……そんなに危険な生き物なの……?」
「わからん。だが、星の彼方から来た生き物に注意するに越したことはねー。常識外の生き物だからな」
まあ、この世界にも常識外の生き物がたくさんいるけどね!
「そうですね。ここにも常識外の村人がいますし」
オレ、血も涙も出る普通の人間なんですが……。
「ベー様。カイナーズの増援が来ます」
と、なぜか空を指差すミタさん。
なにが来んの? と見てたらなんか光った。なに?
「特別仕様のC−17です。二万キロは余裕で飛べるそうですよ」
C−17? 飛行機か?
「まあ、使い捨てのようですけど」
そのC−17とやらが山沿いに進路を取ると、なんか粒っぽいものがたくさん吐き出された。
「カイナーズの空挺部隊です。昔、パラシュートの使い方を知らないまま落とされましたっけ……」
なんか遠い目をするミタさん。つーか、使い方知らないで落とされてよく生きてるね、あなた……。
複雑な思いで見てたら爆音が轟き、振り返ったらC−17とやらが爆発していた。
……使い捨てにもほどがあんだろう……。
「空挺部隊百三十名がベー様の下につくそうです」
「……カイナーズのスケールについていけんよ……」
やることなすこと非常識すぎんだよ。
「ベー様と義兄弟となるだけありますよね」
「オレ、あいつより常識的だよ」
「ベー様の言葉を借りれば、目くそ鼻くそですよ」
できれば五十歩百歩と称して欲しかったです……。
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