第1301話 物体X 2021.01.01
昼食になる前に薪を確保できたぜ。
あとは、草木が生えないよう結界で覆っておくか。
「ミタさん。カイナーズに整備しておいてくれと伝えておいてくれ」
「畏まりまた。第一陣にそう伝えます」
侵略速度が速いこと。
生乾きのまま無限鞄へと放り込み、用意してくれた昼食をいただいた。
食後のコーヒーを飲んでいると、山岳隊が戻って来た。どうでした?
「獣の気配がまったくありませんでした」
「つまり、獣も逃げ出すことがあるってことか。噴火でもするのかな?」
まだ火山帯にいったことはねーし、専門家でもねーが、眼前にある山脈は、なんか火山でできた山脈っぽい。活火山だったりしたらいつ噴火しても不思議じゃねーだろうよ。
「噴火ってわかるものなんですか?」
「いや、はっきりとわかるわけじゃねーよ。地揺れが多くなったり湖が沸騰したり噴火直前に獣が逃げ出すって話もあるな」
まさか地下にナマズでもいるわけでもねーしな。なにかしらの前兆は現れるはずだ。
「少し休憩したら出発しようか」
体力オバケな感じだが、オレは働く者に優しい男。ホワイトベーとはオレのことだ。
「じゃあ、フィアラさんの前で言ってみてくださいよ」
「ごめんなさい。調子づきました」
誠心誠意、全力で謝りますので婦人には黙っててくださいませ。
「……その変わり身が早さが見事ですよ……」
オレのブライドは七色七変化。強いものに染まるんだよ! 文句あっか!
周りの怪訝な目などなんのその。休憩を終え、出発する。
山岳隊の……なに中尉だっけ?
「ダオさんですよ」
あ、そうそうダオだったっけ。まったく記憶にないけど。
ダオ中尉を先頭に、ゴルザ族が左右を固め、オレの後ろにはミタさん率いる武装メイド隊。そして、委員長さんと勝ち気な感じの魔女さん。敵性勢力がいたら確実に襲われる面子だな……。
「意外と道幅はあるんだな」
三メートルくらいはあるだろうか、竜車二台が余裕ですれ違える。そんなに物流が激しかったのか?
土魔法で道を均しながら歩いていると、竜車の残骸が道端に転がっていた。
「襲われたみたいだな?」
エボー(荷車を引っ張る竜のことね)の死体はないが、引きずっていた形跡はある。
「蟲かな?」
獣の足ではない。なにか鋭い爪で作られた穴がいくつもある。
「かも、しれませんな。穴の様子から一メートルくらいのサイズで、数十匹いる感じですね」
とは、ダオ中尉。
「大暴走、って感じじゃねーな」
「はい。これは狩りですな」
やはりか。
「気配は?」
「ありません。静かなものです」
俗に言う嫌な静けさってやつだ。
さらに進むと標高が上がって来て、植生も変わって来た。
「さっきのが増えてねーか?」
穴の数がハンパなくなって来やがったぜ。
「なあ、なんか不味い状況じゃね?」
「そうだな。不味いかもな」
これで不味くなかったらなにが不味いんだって状況だろうが、オレの考えるな、感じろは凪のまま。危険はないと言っている。
「ベー様基準でそうかもしれませんが、世間一般の常識から言えば危機的状況ですからね」
大暴走も四度も五度も経験したら驚きもしないよ。まあ、さすがに飛竜が百匹も襲って来たら『ヤベーかな?』とは思うがよ。
「ヤベーで済まされるからベー様は非常識と言われるんです」
そりゃなんの力もなく、一人だったらおしっこチビるくらいビビるだろうが、オレには三つの能力があり、一騎当千のミタさんがいて、カイナーズや魔女さんたちがいる。あ、茶猫も入れておくか。
「大多数が非常識なら、もはや非常識が常識。皆、常識人さ」
「なんの屁理屈ですか?」
「偉人は言いました。屁理屈も理屈のうちだ、ってな」
「そんなこと言う偉人が本当にいたら歴史から抹消したほうが未来のためですよ」
幽霊は偉人(架空の、だけど)に厳しいこと。
「まあ、なんであれ、だ。なにが現れようとこのメンバーで事足りるってことだよ」
「それ、フラグな」
考えるな、感じろが凪の状態なら慌てる必要ナッシング。百や二百の大暴走くらい瞬殺よ!
なんてフラグを立てたのが悪かったのか、なんか遊星のほうから来ちゃったような物体Xが現れました。
「……ベ、ベー様、なんですか、あの化け物は……?」
幽霊に化け物呼ばわれするも物体X……群。
「宇宙からの侵略者、って感じかな?」
岩さんや人魚が宇宙から来たんだから物体Xも宇宙から来てたってなんら不思議じゃねーよ。
「誰も手を出すな。オレがやる」
「ベー様、危険です!」
「問題ない」
久しぶりに殺戮阿吽を抜いた。
「最強の村人がどんなものか、見せてやるよ」
もし、村人バトル・ロワイアルがあったら。有象無象の村人どもをぶっ飛ばして、オレがぶっちぎりで勝者だぜ!
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