第1296話 オッケー牧場

 転移した先は、白い砂浜だった。


「おー綺麗な海だな~!」


 マリンブルーとはこのことを言うんだろう。南国感全開だぜ!


「これで晴れてたら最高なんだろうけど」


 生憎の曇天。まあ、しょうがねーか。天候は時の運だしな。


 回れ右すると、ヤシの木っぽいものが聳え立ち、その奥には濃い緑のジャングルが広がっていた。


「ここを港にするのか?」


 ビーチにしたほうがイイんじゃねーの?


「港にするのは反対側よ。ここは海水浴場にするらしいわ」


 お、シーカイナーズにはわかってるヤツがいるじゃん。


「晴れたら海水浴でもするか」


 村では砂浜が少なく、海水浴したら海の衆に怪訝な目をむけられ、岩場を改造しての海水浴だった。


 こう言う白い砂浜での海水浴をしたかったんだよな。


「ってか、ジャングルに生き物はいんのか?」


 またウパ子みたいのがいるとか止めてくれよ。


「猪みたいのはいたみたいよ。遠くに陸地があるから泳いで来たんじゃない?」


 陸地? また回れ右をして目を細めて見るが、陸地なんぞ見えんかった。


「晴れたら見えるわよ」


 ってことは十数キロくらいか? それなら泳いで来れるか?


「海には危険なのはいんの?」


「そこまではわからないわ。二日しか滞在しなかったから」


 まあ、ウパ子みたいなのじゃなければなにがいてもイイさ。


「そう言や、ピータやビーダを放ったらかしたままだったな」


 あれ? どこに置いて来たっけ?


「ジャウラガル族のところで野生に戻っています」


 ああ、トカゲさんのところか。なら、問題ねーな。


「港までの道はあんのか?」


「ないわよ。そんな余裕なかったみたいだしね」


「ここからバルザイドの町まで何日かかった?」


「ん~? 二日くらい、かな?」


 二日くらいか。そこそこ距離はあるんだな。念のため、転移結界門を設置しておくか。


「港にいってみるか」


 土魔法で道を築きながら港へと向かった。


 小さな島なようで二百メートルほどで港へ──いや、港を見下ろせる場所へとと出た。


「港にするには不便じゃね?」


 こちら側は岩場で波も荒い。波消しブロックや防波堤を設置しないと大変だろうよ。


「空母に戦艦か。よく海を越えて来れたもんだ」


「三隻ほど沈んで二隻が座礁したみたいよ。人は死んでないけど」


 元の世界なら軍事裁判ものだな。


「よし。港はカイナーズに任せて砂浜に戻るか」


 いつまでも見てたらオレもやりたくなるからな。さっさと離れるとしよう。


 せっかくだからとジャングルを探索したが、これと言ったものはなく、小川が数本あるだけだった。


「う~ん。飲み水がねーか。これは溜め池を造ったほうイイか?」


 って、イカンイカン。気持ちが島改造に向かってるよ。これ以上、寄り道脇道してたらプリキックを食らってしまう。


 メルヘンに屈したりはしないが、メルヘンの背後にいる者には土下座でへつらう所存である。


「よし。ここをキャンプ地とする」 


 砂浜を右足で叩き、砂で海の家を創り出した。


「ミタさん。パラソルとか持ってる?」


 あと、リゾートにあるリクライニングチェアだがベッドだかがあると助かります。


「はい。あります」


 持っているとは確信してたけど、どう言う理由で持ってたかは理解できんよ。


「じゃあ、お願い」


「畏まりました」


 カラフルなパラソルやリクライニングチェアだかベッドだかを出してくれ、なぜかシャレオツな屋台まで出した。


 まあ、なにか食うものを出してくれんだろうと軽く流しておく。


 結界で更衣室を創り出し、中に入って海パン(トアラ作)にアロハ(トアラ作)に着替え、結界サングラスをして更衣室から出た。


「よくわからないけど、三日間は休むってことでオッケー?」


 誰だ、メルヘンにオッケーとか教えたヤツは!


「ああ、オッケー牧場」


 なんかムカついたので、昭和生まれにしかわからない返しをしてやった。


「……そう。ちょっとカイナーズホームにいって来るわ──」


 転移バッチを発動してカイナーズホームへと飛んでった。水着でも買いにいったのか?


 まあ、なんでもイイや。


「カイナーズが山岳隊を組織するまでここでゆっくりするから」


 リクライニングチェアだかベッドだかに寝っ転がり、しばしのバカンスと洒落込んだ。

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