第1297話 水着回
弱肉強食な異世界の南国は平和だった。
クルーザーやシーカイナーズの偵察艇が海に出てるが、凶悪な生き物は現れてない。南国っぽい魚が泳いでいるだけだ。
「こんな平和なところもあるんだな」
「べーの頭の中も平和じゃない」
毒舌メルヘンが鬱陶しいです。
「べー様。アイスコーヒーです」
「あんがとさん」
なぜか水着姿のミタさんから氷いっぱいのアイスコーヒーをもらった。あー旨い。
「ってか、なんで皆水着なの?」
メイドさんはもちろん、魔女さんたちまで水着になっている。
……なんの水着回だ……?
「べーだって水着じゃない」
いやまあ、そうだけど、TPOを考えてのことだよ。南国の海で村人ルックは似合わんだろう。
「あと、なんで君はスクール水着なの?」
胸にプリってゼッケンまでつけてよ。どこのバカが製作したんだよ?
「エリナからもらったの」
あの腐嬢か! ほんと、碌なことしねーな!
「結構着心地いいのよ。羽も水着の中に収納してくれるんだ」
「能力の無駄遣いだな」
まあ、オレも能力を無駄に使ってるが、あの腐嬢よりはマシな能力の使い方をしてると思うぞ。
「まあ、好きにしたらいいさ」
南国の海でメイド服や魔女服ってのも野暮。つーか、魔女さんたち、よくビキニなんてもん着れたな? 肌を晒すのに抵抗がないのか?
「最初は抵抗しましたが、メイドが平然としてるので諦めたようですよ」
と、レイコさんが教えてくれた。いや、いつの間にそんな情報を仕入れたのよっ!?
「順応力のある魔女さんたちだよ」
海に入り、海中を探索したり、浮き輪で泳いでたりする。
……ここがどこだかわからなくなるぜ……。
「しかし、魔女も水着になったら普通の女の子だな」
魔女サダコも……うん、なんでもありません。きっとイイって男もいるさ。たぶん、だけど……。
「べーって女の子に興味ないの?」
「子どもに興味はない」
いや、お前も子どもだろうって突っ込みはノーサンキュー。中身……も子どもっぽいかもしれないが、好みとしては二十歳以下は範疇外だ。
「そんなんじゃ結婚できないわよ」
「そのときはそのときさ」
前世も死ぬまで独身だった。結婚を知らねーんだから結婚できない悲しみも喜びも知らねーよ。
「難儀な性格してるわね」
「それをひっくるめてのオレさ」
どんなオレでもオレはオレを肯定する。なに一つ恥じることはねーよ。
「この性格も困ったものね」
「オレはなにも困ってねーよ」
アイスコーヒーを飲み干し、サマーベッド(って言うらしいよ)から起き上がった。
せっかくの南国の海。楽しまなくちゃ損である。
「ミタさん。ザルザイドの町に戻るまで仕事なしだ。この南国のを楽しめ!」
言って駆け出し、結界サーフィンを創り出して南国の海に乗り出した。
ウィンドサーフィンといきたいところだが、残念ながら風がねー。なので結界サーフィンを操り、波乗りを楽しんだ。
「あはは! 楽しい~!」
と、プリッつあんが頭にパ○ルダーオンしてるのに気がついた。
……久しぶりすぎて全然気がつかんかったわ……。
「べー! もっとスピード出してよ!」
すっかりスピード狂になりやがって。オレの速度にビビるなよ!
なんて言ったものの、水上で五十キロも出せばチョーコエー! おしっこチビりそうだわ……。
「べー! ちんたらしすぎよ! ミタレッティーに追いつかれるじゃない!」
ミタさんがなんだって? こちとら結界サーフィンを操るだけで精一杯だわ!
と、水上バイクが何台も追い抜いていった。
「……うちのメイドはなんでもこなすよな……」
ゼルフィング家のメイドになって数ヶ月なのに、なんでこんなに元の世界のものを使いこなせるんだよ? 意味わからんわ!
「もー! 追い抜かれたじゃない!」
「サーフィンは速さではない。技だ!」
水上バイクでできた波を使いジャンプしたり回転したりと、サーフィンのおもしろさをメルヘンに教えてやる。
「おー! ミタレッティーすごぉ~い!」
オレのテク、まったく見てねー!
「……ミタさん、どこでマスターしてくるんだ……?」
まるでアクション映画のようなアクロバティックな動きを見せている。
他のメイドもミタさんほどではないが、何年も乗ってるのかと思うくらいの技術だ。ベテランって域だわ。
「メイドに能力をコピーして他に写せる者がいるそうよ。わたしも見たことはないんだけど」
能力をコピー? もしかして転生者か?
まあ、どうでもイイか。今は南国の海を楽しもうじゃないか。
結界でジャンプ台を創ったり、波を起こしたりと、エンジョイサマーを満喫した。
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