第1265話 理解できる人が欲しい
オレの人生、阿鼻叫喚で溢れているような気がする。
「それはべー様の自業自得ですよね?」
違うと言えぬこの悲劇。オレは罪深い男である……。
「──なんなのよいったい!」
騒ぎを聞きつけたのか、魔女さんやザイライヤー族のオネーサマ方がやって来た。
……ある意味、この女性陣も野蛮人だよな……。
「なにか失礼なこと考えているでしょう?」
ハイと言ったらギルティーなのだからスットボケー。コーヒーが旨いでござる。
「……現実逃避してるでしょう……」
当たらずとも遠からず。明鏡止水と書いて現実逃避と読むからな。
「委員長さんもべー様のこと理解して来てますね」
そんな理解いらんがな。オレを本当に理解してくれる者よカムヒア~。
「本人にそう言えば飛んで来るんじゃないですか」
そこはオレのサンクチュアリ。ドントタッチミーですよ。
「……べー様は、肝心なことはわたしにわからない言語で心を誤魔化しますよね……」
常に心を読まれてるんだから防衛はするでしょうが。
「なんでもいいけど、村の人たちが怯えているわよ」
確かにあの阿鼻叫喚はオレでも怖い。F級村人には耐え難いもんだろうよ。
「なら、見えなくするか」
ヘキサゴン結界を展開して村から見えないようにする。あらよっと。
「また変な術を……」
「変を変のままにせず、自分の中で考えて、ダメなら仲間と考えて自分たちなりの答えを出して自分たちのものにするんだな」
魔女派が強くなれば帝国の中でも発言権は増すんだからな。
「あ、ケガ人の回復頼むわ。他種族に回復魔術をかける機会はそうはねーぜ」
種によっての違いを知れる。オレなら金貨百枚出しても惜しくはねーな。なのでエルクセプルや回復薬を用意しておこうかね。
「さすがに脱落者が出て来たか」
開始から約十五分。なんのバトル・ロワイアルと言いたくなるくらいのマジな肉弾戦。目を背けたくなるような負傷者が放り出せれている。
「容赦ねーヤツらだよ。ミタさん。観戦しているカイナーズのヤツらに負傷者を運ばせてくれや」
「畏まりました」
シープリット族もシープリット族だが、他のヤツらも他のヤツらである。阿鼻叫喚に大盛り上がり。賭けまでやってるヤツまでいるぜ。
「……魔族が落ち着くには何百年とかかりそうだな……」
まあ、あれはあれで頼もしいんだが、抑えるためには敵や理由を作ってやらんとならん。まったく、メンドクセーことだぜ。
運ばれて来る負傷者を魔女さんたちと一緒に回復させる。
「まったく、バトル中毒かよ」
腕が変な方向に曲がったり、泡を噴いてたりしてるのに、誰も彼もが満足顔。こいつの血には変なのが混ざってんじゃねーのか?
「なんかこいつらに回復薬を使ってやるのも惜しくなるな」
薬師としてはあるまじきセリフだが、無駄に傷つくヤツらに慈悲の心も萎えて来るわ。
「同意だわ」
委員長さんも同じ気持ちになっているようで、オレの呟きに応えて来た。
「まったくよ! あんなに苦労したのに!」
「もう、半分も消費したわ」
「でも、効果を知れて楽しいです! ウフフ」
「誰か回復薬を持って来て!」
なにかヤヴァイのが混ざっているが、聞かなかったことにしよう。オレは薬師。傷を負った者を救うのが仕事である。
「そう言い聞かせないとならない仕事ってなんでしょうね?」
それは一生答えが出ない……なんだ? う、上手く言えねーけど、人は答えを求めて生きるのさ。
さあ、集中だ集中。オレはS級な村人でA級な薬師。ケガ人を前にして逃げられるかよ。オレは誇りを持って薬師をやってんだよ!
「……なんか安そうな誇りですね……」
それは言っちゃいけないサンクチュアリ。安かろうが高かろうが誇りを失くしたヤツにイイ仕事はできない。誇りを持て、人よ!
「……ほんと、よくわからないべー様です……」
幽霊に理解されても嬉しくねーよ。オレは人に理解されたいわ。
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