第1264話 神様ヘルプミー!
準備がどんどん進めらていく。
それをコーヒーを飲みながら眺めるオレ。それを軽蔑の目で見る魔女さんたち。なんのカオスだよと突っ込みをする者はなし。なんとも平和な状況である。
「ん~マ○ダム」
なんてセリフ、久しぶりだな。忙しかったんだな~。
「……激動ではありましたが、激務ではなかったですよね……」
幽霊がなにか言ってるけど、暖簾に腕押し糠に釘。いや、それって自分を貶めてんじゃね? とかの突っ込みもろとも明後日にさようなら~。オレは今日をのんびりゆったり生きてるのです。
「……その図太い神経に恐怖すら覚えますよ……」
幽霊に恐怖されるオレ。心外です。
捕まえたエボーと荷車が繋がれ、慣らし運転に出た。
「完全にジャッド村主導になってますね」
まあ、ジャッド村のヤツらに任せたからな。
「それを計画的にやってるからべー様は怖いですよね」
別に計画はしてねー。そうなったらイイなぁ~ってくらいだよ。
「成るようにやったら成った。それだけさ」
失敗したらそれまで。次に活かしましょう。が、オレのモットーだ。
「ってか、シープリット族、誰も来ねーな? 道に迷ったか?」
いや、道なんてねーけどよ。
「べー様が食べるものを、と言ったから探しているのではないでしょうか?」
とはミタさん。さすがのミタさんもシープリット族の動きは把握できてないようだ。
「シープリット族、なんかカイナの下から外れているようだが、大丈夫なのかい?」
給料はカイナーズから払われてんだろう? 好き勝手やっててイイんかい?
「おそらくですが、カイナ様はシープリット族をべー様に預けたのだと思います。カイナーズの中でシープリット族は異質な存在ですから」
「野蛮人には近代戦闘は性に合わんか」
わからないではない。シープリット族のような獣人系の種族は、理性的より本能的に生きている。ましてや万年戦国時代のような魔大陸で生きてたら近代戦は相容れないだろうよ。
「オレに預けられても困るんだがな」
インテリジェンスな村人はインテリジェンスに人を利用するのが得意なんだけどな。
「いいように扱ってるじゃないですか。それって、なにか考えがあってのことですよね?」
心が読めるんだからわかるでしょ。
「表面的なことしかわかりませんよ。それでなくてもべー様の頭の中は意味不明なんですから」
幽霊から意味不明扱いされるオレの頭の中。オレ、シンプルな頭してるんだけどな~。
「まあ、シープリット族はここで自由にやらせておけばイイさ」
野蛮人には野蛮人なりの使い道はある。そのときまでじっくり教育してやるよ。
「ミタレッティー様。シープリット族が第一次防衛線を突破しました」
言い方が敵になってますけど? ってか、ここはなんの戦線だよ?
「同じ方向から来るんですか?」
「四時、六時、九時から来ます」
「べー様。順位決めはしているのですか?」
いえ、なにも決めてません。とは言えないこの状況。オレの灰色の脳細胞よ、閃くがよい!
「……この方の頭の中は本当に意味不明だわ……」
ちょっと黙っててくれます? 今、灰色の脳細胞さんが働いてくれてるんだからさ!
………………。
…………。
……。
「よし! オレの灰色の脳細胞さん、ご苦労さまです」
村の方々に邪魔にならないところに向かい、土魔法で三十メートルくらいの山を築き、テッペンな結界で創った一番と描いた旗を突き立てた。
空飛ぶ結界でさらに離れたところに同じくらいの山を築いて二番の旗を突き立てる。さらにさらにと山を五つ。テッペンに番号つきの旗を突き立てた。
「なんですか、いったい?」
「野蛮人を燃え上がらせて勝負を納得させるもんだよ」
副司令官さん以外に飛び抜けたヤツはいなかった。なら、団子状態で来るはずだ。そんな状態で順位をつけるのは不可能だし、納得もしまい。
「ミタさん! シープリット族に通信を出せるか?」
ワンダーワンドに乗るミタさんに叫んだ。
「放送できます!」
カイナーズ、本当に容赦ねーな。
「なら、己の全力を出して旗を取ってオレの前に持って来いと伝えてくれ。旗を持って来た勇者に誇りを授けるとな」
「畏まりました!」
どこかに飛んでいくと、どこからかサイレンが鳴り、ミタさんの声が発せられた。
「──べー様よりシープリット族の勇者たちへ。山の上に立つ旗を武と威を持ってつかみ取れ。旗をべー様に捧げなさい。誇りと栄誉が与えられるでしょう」
どこからか雄叫びが上がる。ん? なんか大きくね?
「そう、ですね? 百人二百人では出せない雄叫びですよね?」
ジャングルからシープリット族が……って、なぜに大軍!? どこから湧いて出た?!
「もしかすると、魔大陸から呼び寄せたかもしれませんね」
「……あのアホ、オレに丸投げしやがったな……」
丸投げするなら一言言えや。なにも知らせず丸投げは嫌がらせでしかねーわ!
続々とジャングルから出て来るシープリット族。軽く千は超えてんじゃね?
「どうするんです?」
それはこちらが聞きたいです。神様ヘルプミー!
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