第1249話 解剖
薬草採取も三日目に突入した。
「いや、薬草採取、してませんよね」
ハイ。おっしゃる通りでございます。それがなにか?
「……その開き直りがベー様らしいです……」
開き直りではありません。切り替えです。
まあ、薬草採取は他の班に任せてもイイんじゃないかなと思って来たこの頃。今は人体解剖(いや、ヤンキーだけど)に集中したいです。
「と言うか、リンベルクさん、もう限界っぽいですよ」
何度目かのリバースに、まるでカルロスさんと戦ったあとの明日の○ョーのように真っ白である。
「情けねーな」
「都会暮らしの女の子にいきなり解剖をさせたらそりゃこうなりますよ」
「そう言うもんか?」
村の女の子は血塗れになりながらも女子トークに華を咲かせながら解体するぞ。
「同じ都会暮らしの女の子が嬉々(鬼気かな?)として解体してるが?」
どこか先生と同じ臭いがする魔女──と言うよりサダコさんな感じの女の子が十六体目の解剖をしている。
どーゆーこと? と、頭に?を咲かせるレディ&ジェントルマンにお答えしよう。
暗くなり、村に帰ってからも回復魔術談義に華を咲かし、途中で捕まえたヤンキーを使って体の構造を学ぼうと、魔女さんを集めて解剖開始。
「阿鼻叫喚ってああ言うことを言うんですね」
まあ、そんなリバースカーニバルに参加しなかったのがサダコさんだ。
「ミレンダさんね」
あ、そう、ミレンダ嬢が解剖に興味津々で、自らやりたいと申し出て来て、懇切丁寧に解剖を教えたわけですよ。
ほとんどの魔女さんが一体でギブアップしたが、ミレンダ嬢は十六体を解剖してもやる気は失われなかった。
……ちなみに、委員長さんは三体で真っ白に燃え尽きました……。
「ベー様。もう就寝の時間です」
と、結界テントの外からミタさんの声。もうそんな時間か。
村に臭いが満ちると困るので、結界テントを張ったが、外の様子まで遮断したからわからんかったわ。
「サダ──じゃなく、ミレンダ嬢。それで終わりな」
血塗れ魔女さんに声をかけるが、集中しているようで耳に届いてないようだ。
「ちゃんと教育しないと、夜な夜な帝都に現れて誰構わず切り裂きそうですね」
そんな不吉なことを言わないでください。まあ、叡知の魔女さんに手紙は出しておこう。こちらの責任にされても困るしな。
「確実にベー様の責任ですよね」
それはそれ。これはこれ。魔女さんの将来は叡知の魔女さんの管轄です。
レイコさんの非難の目から逃れて嬉々(鬼気)としているミレンダ嬢を結界で強引に解剖台から引き剥がした。
「今日は終わり。また明日だ」
「ま、まだ、まだやらして! もうちょっとでわかりそうなの!」
わかると言うより危ない道が開けそうな必死さである。
夜な夜な帝都で誰を切り裂こうとオレの知ったこっちゃねーが、この村でやられたらたまらねー。危ない道はここで閉ざしておきましょう、だ。
「解剖の道は一日にしてならず! 次の一歩は明日だ!」
結界テントから引き釣り出して、外に控えていたメイドさんにミレンダ嬢を綺麗にしろと命令する。
夜な夜な血塗れな姿で村をさ迷われては怖いからな。
「あと、中にいるのも頼むわ」
真っ白に燃え尽きた委員長さんもついでに頼んだ。
「カイナーズ。暇な連中にヤンキーを生け捕りさせてくれ。一匹につき千円出すからよ」
前世なら悪徳企業のような報酬だが、時給八十円(カイナーズホームはそうだったっけか?)で働いてるなら千円は破格だろうよ。
「何百でもいいのですか!?」
なんか色めき立つカイナーズの連中。カイナーズは薄給なのか?
「まあ、何万匹も生け捕りされたら困るが、千や二千なら問題ねーな」
オレにはプリッつあんの伸縮能力があり、収納鞄やフューワル・レワロがある。千や二千、問題ねーさ。
「おぉぉぉぉっ!!」
と、カイナーズの連中が雄叫びを上げた。な、なんやねん?!
「マイホームを建てる資金が欲しいのだと思いますよ」
マ、マイホーム?
「なんでもジオフロントの一角が整地されて、そこに住宅地を設けるそうですね。メイドの中にも建てる者がいますよ」
ねーさん! オレの知らないうちにジオフロントがとんでもないことになっているようです。
「ねーさんって誰ですか?」
オレの心の中に住んでる謎のねーさんだよ。
「……聞いたわたしがバカでした……」
まっ、ドンマイ。
歓喜だか狂気だかわからんが、カイナーズの連中はやる気百パーセント。きっと明日もたくさん解剖ができることだろうよ。
「薬草採取、完全にどっかいっちゃいましたね」
なに、解剖に興味ない魔女さんが集めてくれるさ。
オレも明日をガンバるために風呂に入ってさっぱりして、夕食いただいて寝ようっと。
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