第1224話 ウルグ(イルカ)

 触らぬ神に祟りなし。


 世界のタブーに挑む勇気はオレにはねー。これはパンドラの箱。厄災しか詰まってねー。見なかったことにしよう。


「それほどのものですか?」


「少なくともオレは触れたくねーな。タケル辺りならイイかも知れんけどよ」


 アニメな潜水艦ならこの宇宙船を調べることも可能だろうし、なんかあったときに対処できるはずだ。アナクロなオレでは見てるしかねーよ。


「気になるならオレから離れてタケルに憑けばイイさ。あいつならもっと先にいきつくと思うからよ」


 オレは先にいくより今を生きることを選んだのだ。これ以上は無理だ。


「今はベー様に憑いてほうがおもしろいのでまだ憑いてます」


 イイ雰囲気だが、幽霊に言われても素直には喜べねーな。オレが死ぬとき、無理に引き止めないでくださいね。次は幽霊なんて笑えんからよ。


「ふふ。ベー様なら最強のリッチになりそうですね」


「エリナの同類とかなりたくねーよ」


 そうなったら魔王ちゃんか勇者ちゃんに退治してもらうよ。どっちかなら倒せんだろう。


 まあ、未来のことは未来に考えるとして、今は淡水人魚の暮らしを見物しましょうかね。


「ベー様。いったん休める場所を築いてもらってよろしいでしょうか? レニス様も休ませたいので」


 あ、イカンイカン。妊婦がいたの忘れたったわ。申し訳ありません。


「わかった、創るよ」


 って、どこに創るかね? カイナーズも休ませるとなると結構場所を取るな。


 宇宙船(仮)はかなり……と言うか、全容がわからないほどデカく、下に続いてて、平らな場所がありません。


 壁には水草で編んだ家? がびっしりくっついていて入る隙間ナッシング。立ち退き要求したら暴動が起きそうだ。


 どうしたもんかと悩んでいると、イルカが現れた。


「え、イルカ? なんで?」


 いや、元の世界にも河イルカがいたからこの世界にいても不思議ではねー。だが、やたらと警戒心が薄くね? まるで犬がじゃれて来てるみたいだぞ。


「家長さん。これは?」


「ウルグと言って、懐っこい性格で、戯れで飼う者がいるのだ」


 まさしく犬やな。つーか、人魚が愛玩動物を飼うとか、淡水人魚はそう言う性質があるんだな。


 イルカ──ウルグがさらによって来て、オレらに体を擦りつくて来る。野生がまるでナッシング。まあ、これも存か。オレも癒しをくれるのと共存したいぜ……。


「プリッシュ様に蹴られますよ」


 内緒でお願いします。お供えものを捧げますので。


 何匹かのうち一匹がオレへとよって来て、体を擦りつける。


「なんか可愛いな」


 こうも懐かれると飼いたくなって来る。が、責任が持てないようなら飼ってはダメだ。


「あ、そうか」


 こいつにフュワール・レワロを取りつけたらイイやん。ブルーヴィと同じくな。


「お前、オレに飼われるか?」


 と言う以前に飼ってイイかを家長さんにお尋ね申す。


「構わぬよ。個人で飼っているウルグは、皮を巻いているのでな」


 首輪ならぬ尾輪か? う~ん。語呂がワリーな。テールリングにしておこう。


「お前、オレに飼われるか?」


 ウルグの目を見て問うと、わかったのか体を強く擦りつけてきた。


「ウルグってなに食うんだい?」


「魚だ」


 そこは元の世界と変わらんか。


「家長さんたちは食わねーの?」


「我々は食わん。体が受けつけんのだ」


 そこは海の人魚と同じか。同種ってことかな?


「オレは世話できんので代わりに頼めるかい? その分の礼はするからよ」


 さすがに連れていくことはできんし、クレイン湖にいきなり連れていくのも危険だ。ここに合わせ進化したり病気とか持ち込まれてクレイン湖がバイオなハザードになったら嫌だしな。


「それは構わんが……」


 承諾はいただきました。ではと、無限鞄からフュワール・レワロを出して、ウルグの背に結界ドッキング。少々行動は阻害されるだろうが、これから食いっぱぐれがないのだからガマンしてちょ。


「レニス。これはフュワール・レワロ。ブルー島と同じものだ。レニスを管理者とするからこれに触ってくれ」


 フュワール・レワロの大きさはバレーボールサイズ。個人用なのかフュワール・レワロの容量? は小さい。ボブラ村の半分くらいだ。


「わたしでいいの?」


「構わんよ。ブルー島と繋ぐからダイビングしたくなったら来たらイイさ。管理者なら離れていても思うだけで入れるからよ」


「わたしだけ?」


「ああ。その辺は融通利かねーんだよな、フュワール・レワロって」


 管理者が許可してフュワール・レワロを触らないと出入りができない。製作者、もっと簡単に創ってくれや。


「まあ、しょうがないね」


 そう言ってフュワール・レワロに触れ、中へと入った。


「レニスねーちゃんが消えちゃった!?」


「大丈夫だよ。サプルもそれに触ってみろ」


 素直なサプルはフュワール・レワロに触り、レニスと同じく中へと入った。


「カイナーズの連中も入って休みな」


 レニスを一人にできないと、半分くらい中へと入っていった。


「ドレミ。レニスに分離体をつけてるよな?」


「はい。いろはの分離体を密かにつけております」


 超万能生命体に隙はない、か。ありがとうございます!

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