第1223話 核心
ピラミッド、と言ってもエジプトにあるのじゃなく、アステカ文明っぽいピラミッドだ。
オベリスク、って言ったっけ? それがいたるところに立っている。
とても人……ではなく人魚が住めるとは思えねーけど、屋根とか必要ない環境だ。地上の常識は通用せんだろうよ。
「……しかし、やけに透明度が高くねーか……?」
それにやけに明るい。LED電球のような明るさだ。どんな摩訶不思議な技術なんだよ?
「魔法ですね。おそらく天地崩壊前の技術でしょう」
かもな。これ、海の人魚だって飛び抜けた魔法だったが、これはもう……なんだ? 技術が飛び抜けてよーわからんわ……。
「公爵どののリオカッティー号も天地崩壊前のもんだが、まだ理解できる技術だ。だがこれは、さらに技術が上をいっている。つーか、技術体系が違うんじゃねーか?」
そこまで技術的知識はねーが、西洋文化と日本文化くらい離れてる気がする。
「そう、ですね。わたしもこんな建造物、見たことありません。人魚さんたちが造った感じもしませんし」
「だな。これだけの石、湖にあると思えんし、石と石の接地面とか鋭利なもんで切った感じだ」
紙一枚入らないほど隙間がない。これ、手仕事でやったら百年単位でかかる仕事だろう。いや、魔法があったら年単位で可能かも知れんけどよ。
「なんの石碑なんですかね?」
「記念品か墓か宗教的儀式か、なんなんだろうな?」
オベリスクっぽいものが剣山のように建てられている。巨大生物でも襲って来るから建てたとか?
「家長さん。これに触ってもイイかい? 大事なもんなら諦めるが」
「あ、いや、構わん。ブラッガは我らの守り柱。槍で突いても壊れんものだからな」
そう言うので遠慮なく触ってみる。
確かに硬い肌触りだ。鉄、ではねーな。この世界に生まれて初めて触ったものだ。
土魔法で反応を見るが、ピクリとも反応しない。石ではないのか?
「これ、殴ってもイイかい?」
「あ、ああ。構わんが……」
では遠慮なくと、結界で足場を創り、踏ん張る。
「殺戮技が一つ、結界パンチ!」
竜だってぶっ飛ばせるだけの威力でオベリスク──守り柱を殴った。
「──ってー!」
メッチャ痛い。拳が砕けたと思うくらい痛いでござる!!
「ベー様!?」
急いで無限鞄からエルクセプルを出して一気飲み。痛みが消えてくれた。
「……し、死ぬかと思ったぜ……」
前にも思ったが、やはり痛みに弱くなってるな、オレ。拷問受けたらすぐにゲロっちゃいそうだわ。
「……ベー様……」
周りはオレの醜態に戸惑い顔。はずかち~!
「だ、大丈夫だ。心配はいらねーよ」
「なにをなさったんですか? ベー様が痛がるなんて……」
「ちょっとこの守り柱の強度を確かめただけだよ。想像を絶する硬さだったぜ」
オレの力で凹みもしないとは、戦車砲ですら傷つけることは無理だろうな。つーか、なにから守ろうとしてんだ、この柱は?
「この世にはどんだけヤベーもんがいるんだよ?」
つーか、これだけのものを造れる技術を持ったヤツはどこにいったんだ? 宇宙の果てにでも旅だったのか?
「まったく、謎が多い世界だよ」
明らかに進化とか文明とか種族とかが狂ってる。ファンタジーだからって許されると思うなよ。
……まあ、神とか出て来てる時点で狂ってるけどな……。
「ワリーな、寄り道しちまってよ」
気になったら寄り道道草上等よ! な今生。悪いと思うが、スルーすることはありません。
「あ、ああ。では……」
オベリスクの謎はまた今度。暇ができたときにすればイイ。世界の歴史に挑むほどオレの寿命は長くねーからな。
剣山のようなオベリスクの間を通り──と言うか泳ぎ、ピラミッドのほうに向かった。
ピラミッドの周辺には淡水人魚の家? 水草で編んだような籠みたいなのが何百とあった。
……文化レベルがいっきに下がるな……。
「遺跡に住んでる感じですね」
生活感があることからして何百年とここに住んでいるんだろうな……。
「こちらだ」
集落? を抜けてピラミッドへと入った。
長い通路を抜けると、そこに銀色に輝く巨大なものがあった。
「……う、宇宙船……?」
なんか謎の核心っぽいものに出会っちゃったよ!
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