第1219話 妊婦さんは大切に
「ベー様。あれを移動できるようにして百ほど創ってください」
くれませんか? ではなく創ってくださいかよ。君ら本当に人使い荒いよね。
「わかったよ」
全方位囲まれて「ノー」と言えるほどオレのハートは強くありませぬ。心の平穏を守るために創らせていただきます。
あらよっほらよっどっこいしょー! な魔法の言葉を百回繰り返して更衣室──なんか「ルーム」って呼び名になってるので、オレもルームって呼びます。で、ルームが百個(室か?)が完成しました~。午前様になったけど!
「ありがとうございます、ベー様」
喜んでもらえてなによりですよ、ケッ!
ふて寝して起きたら昼近くになっていた。
「ベー。最近生活が乱れてるわよ」
起きたメルヘンからの理不尽なお叱り。あなた、オレの頭の上にいたよね? 見てたよね? ねぇ、理解できてる? 周りが乱れさせてんだよ、畜生が!
と叫んでもメルヘンには馬耳東風。うん、それはお前な! なんて返されるのがオチなので黙っておきます。
「あんちゃん、やっと起きた。寝坊助はダメだよ」
なぜか妹にまで叱られるこの始末。この世の理不尽を世界の中心で叫びてー! まあ、誰も共感してくれないから心の中で叫びますけど!
「ハイハイ、ごめんなさいね」
それより朝食……ではなく、昼食にしてくださいな。腹減ってんだからさ~。
ミタさんだか誰かが作ってくれた昼食がテーブルに出され、感謝を込めていただきます。あー旨い。
「ねぇ、あんちゃん。人魚さんのところいくんでしょう?」
あ、それな。すっかり忘れてた。ってか、ウェットスーツ着たままだったよ。
「ああ。いくよ」
そう言えば家長さんとララさんは?
「一度帰られましたよ」
見渡すオレにミタさんが教えてくれた。オレの思考読まれてる?!
「思考と言うより行動がね」
ヤダ! メルヘンに思考が漏れてる!?
「……ベーは表情に出るのよ。どうでもいいことだけはね……」
「あんちゃんの表情読めるのプリッシュだけだよ。あたしですらわからないことが多いのに」
ヤダ。妹に理解されてない兄だったの?! 理解されてるとばっかり思ってたのに!!
「サプルもサプルで我が道を爆進するからね、周りに目を向けてる暇なんてないでしょ」
兄と妹を一番理解してるのがメルヘンと言うこの……なんだ? まあ、アレ的なアレだ。考えず感じてくださいませ。
「はは。プリッシュは偉大だね」
「この兄妹に理解を示せるレニスも偉大だけどね。さすがおじ様の孫よね」
レニスにも飛び火(?)してる。まあ、他人とは思えないところはあるわな。一番しっくり来る言葉は「オレと同じ臭いがする」だな。
今は妊娠してるから大人しいんだろうが、子どもが生まれたらはっちゃけるだろう。そんな未来が見えるぜ。
「そう褒められると照れるよ」
カイナと似ることに照れるとか、レニスもイッちゃってんな。カイナが聞いたらはニヤケそうだけどよ。
「……ここに正常なのはいないのね……」
ぷぷっ。自分は正常だと思ってるよ、このメルヘン。可笑しいんですけど。誰よりも正常じゃないクセに~。
「ぶっ飛ばすわよ」
それはドロップキックをかます前に言えや。
「ふふ。仲いいわね、ベーとプリッシュって」
「そうだね。妬けちゃうね」
なんて和気藹々。周りの視線はなにか冷めてる感じがするけど。
「それで、あんちゃん、人魚さんのところいくんでしょ? あたしもいってイイでしょう」
「構わんけど、楽しいかわからんぞ?」
未知の場所。いってみなけりゃわからない。お前、そんな冒険とか興味ないだろう。
「ダイビングしてみたいの」
うん。こいつは好奇心旺盛な性格でしたわ~。
「お、それいいね。わたしもやりたいわ」
妊婦は黙ってろ。つーか、大人しくしていろ。カイナーズ、お前らなんとかしろや!
カイナーズの連中を睨んだら一斉にそっぽを向かれてしまった。うぉいっ! テメーらの管轄だろうが! 拒否してんじゃねーよ!
「ベー様にお任せします。我々では手に余ることなので」
「レニス様のこと、お願いします」
「他は我々がフォローしますので」
ちゃんとオレの目を見て言いやがれ! オレに丸投げしてんじゃねーよ!
「因果応報ね」
メルヘンが四文字熟語使ってんじゃねーよ! どこで覚えくんだよ!
「おじ様、ベーなら守ってくれると信頼してくれてるんだから面倒見てあげなさいよ」
そんなメンドクセー信頼ノーサンキューだわ!
とは言え、カイナには借りがあるし、妊婦を放っておくのも気が引ける。サプルも姉のように慕ってる。嫌だと言えぬこの状況。是とするしかありません。
「わかったよ。面倒見るよ」
妊婦用の結界はトータが生まれそうなときに考え、試行錯誤して来た。まあ、妊婦がダイビングするとか想定はしてなかったけどな!
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