第1218話 柔堅能力
プリッつあんの柔堅能力、なかなか反則なものだった。
物を柔らかくしたり堅くしたりだけではなく、柔らかいまま堅くしたり、堅いまま柔らかくしたりもできやがった。
「それがなんなのよ?」
まったくわかってないプリッつあん。君の能力なんだから理解しなさいよ。
まあ、わかるように説明すんのもメンドクセー。習うより慣れろ、だ。
「ミタさん。ちょっとオレに銃を撃ってみて」
「わかりました」
と、なんの躊躇いもなく銃を出してオレめがけてぶっ放しました。
……そこは躊躇うなりして欲しかったです……。
「弾きはするが衝撃までは殺せないか」
銃弾が当たった胸を擦りながら呟く。
五トンのものを持っても平気な体なので「痛っ!」ってくらいだが、普通の体では蹲って泣いてるところだな。
「なにをされたんですか?」
「プリッつあんの力でウェットスーツを柔らかくしたまま強度を上げてみた」
まあ、だからなんだと言われたら困るんだけどな。検証してみただけだし。
「ベー様。その力で他のウェットスーツもできますか?」
「まあ、できるな」
この能力は伸縮能力より簡単だ。目標物を見て念じればイイだけだからな。危険と言えば危険な仕様だが、プリッつあんは興味ないようで使うつもりもないし、オレは能力を制御できてる。なんらオレに不都合はねーさ。
「もしよければメイド用のウェットスーツを同じようにしてもらえないでしょうか?」
はん? メイド用のウェットスーツ? 意味わからんのだけど?
「水の中に潜れるようにしておきたいのです」
ますます意味がわからんですたい。
「ベーが空だの海だのいくからでしょう。今だって湖の中にいく気満々じゃない」
「まあ、そうだけど、別にウェットスーツなんていらんやろ。ミタさんのメイド服、水に潜れたりするし」
オレの結界を纏わせてもいたが、海の中でも大丈夫って前に言ってたじゃん。
「これは特別製であたしだけしか着てません。それに、潜水もしておいたほうが万が一に対処できますので」
メイドが潜水する万が一ってなによ? もうメイドの仕事じゃないよ。いや、うちのメイドはメイドらしいことやってるの見たことないけどさ!
「あ、ベー様。我々にもお願いいたします。凶悪な魔物を恐れず潜水できると作戦の幅が広がるので」
なんかカイナーズのやつらまで言って来たよ。
メンドクセーと突っぱねるのもできない空気。しょうがないのでウェットスーツに柔堅能力を施した。
ってか、遠慮ねーな、こいつら。メイドやカイナーズ全員分をさせる勢いだよ。
このままではオレの人生、柔堅能力を施すだけで終わりそうや。なんとかせなかいかん! 対策を考えろ、オレ!
灰色の頭脳をフル回転させて答えを導く。ポックポックポックチーン。
錬金の指輪を使い、更衣室的なものを創り、結界を施し、伸縮能力と柔堅能力をうんぬんかんぬん。できました~!
「ウェットスーツを着て中に入ってボタンを押せば体に合って柔らかくて堅くなるようにした」
やってみんしゃい。試してみんしゃい。お代はタダだよ~。
カイナーズのヤツにやらしてみて調整を加える。うん。こんなもんか。
「ベー様。これはウェットスーツじゃなくても可能でしょうか?」
「……できると思う。着ている服に設定したから」
「強度を上げることも可能ですか?」
「ん~。できるな。ただ、オレのイメージになるがな」
その辺は結界と同じだから、竜に踏まれても大丈夫なくらいにはなると思う。
「試してもいいでしょうか?」
構わんと同意する。オレも気になるし。
赤鬼のあんちゃんが装備を外して戦闘服のまま更衣室(仮)に入り、ボタンをポチっとな。出て来た赤鬼のあんちゃんに、上官と思われる赤鬼のおっちゃんが拳銃を抜いてぶっ放した。
……カイナーズってブラックなのかな……?
衝撃に赤鬼のあんちゃんは膝を崩したが、根が丈夫なようで「いたた」と言いながら立ち上がった。
「どうだ?」
赤鬼のおっちゃんが尋ねる。
「……防弾チョッキよりはマシな感じですね……」
「なら充分使えるな」
そうなの? オレにはよーわからんわ。
「ベー様。メイドにも試させてよろしいでしょうか?」
今度はミタさんかい。もう好きにしなよ。
なんの需要があるかはわからんが、やると言うなら好きにしろだ。オレの手から離れたのでマ○ダムタイムと洒落込んだ。あーコーヒーうめ~。
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