第1209話 生協かよ!
「ここを借りる代価だが、食い物にするか? 武器がイイか? 他に望みがあるなら聞くぜ。もちろん、叶えられないことには応えられんけどよ」
そっちの事情まったく知らんし、言ってもらえると助かります。
「食料をもらえると助かる」
食い物か。湖の中も厳しそうだな。
「わかった。いろいろ揃えてみるから食えるものを選んでくれ。ただ、この大陸にないものだ。口に合わないものやあんたらには毒になるかもしれない。そのことをよく考えて少しずつ、日にちをおいて食ってくれ」
トカゲさんと同じく慎重にいかんとな。
「あ、もしよければあんたらがどんなもの食うか教えてくれるかい。海のもんと湖のもんの違いを知りたいからよ」
正確に言えば湖の生態だな。食うものでわかるだろう。
「少しでよいか? 数年前から飢饉に陥っていて用意するのが難しいのだ」
飢饉か。なら湖の中は荒れてるな。いや、荒れまくってるのか。野盗? 湖族? なんだ? まあ、賊が出るほどには大変なんだな。
「構わんよ。知りたいだけから量はそんなにいらないしな」
「助かる。なら、明日まで用意する」
了解と答えると、ララは湖の中へと消えていった。
「ベー様。なぜララなのかを訊いてくださいよ。わたし気になって昇天しそうですよ!」
知らんよ。昇天したければ昇天しろよ。先生には満足して昇天したと伝えておくからよ。
「ミタさん。ハルヤール将軍とこで使った舟って用意できる?」
ヴィアンサプレシア号にあったら申し訳ねーがよ。
「はい。問題ありません。すぐに用意します。食料はいかがなさいますか? 必要であれば用意しますが」
「ん? 用意できんの?」
皆は忘れてるかもしれないけど、今は冬よ。余分なものってあんのか? トカゲさんたちにも渡してるのによ。
「カイナーズホームの青果部に発注します」
青果部なんてあったのね。本当に誰を相手に商売してるかわからんところだよ。
「なら、オレも欲しいからたくさん頼んでよ」
補給しようしようと思ってなかなかできてないでいた。持って来てくれるなら助かるぜ。
……どう持って来るかは考えないようにするけどな……。
「畏まりました。では、たくさん発注しますね」
そう言うと、控えているメイドたちに指示を出した。と言うか、なんかメイドの数がスゴいことなってね? なんか四十人くらいいるんだけど。いくら何万人と移住して来たと言ってもメイドになる人材多くね? 魔族、オレが思ってる以上に優秀なんか?
「能力を転写できる方がいらっしゃるそうですよ」
疑問に思ってたらレイコさんが教えてくれた。心を読んだの?!
「顔に出てましたよ」
うん。君、常に後ろにいるよね。説得力がないどころか知ってることに恐怖を覚えるよ。
「そんな便利な能力を持ったヤツがいたんだ」
「便利ではありますが、それほど都合よい能力でもありませんよ。技術を習得するには訓練しないと身につきませんからね」
まあ、そう簡単に技術が習得できたら真面目にやってる者としたらやってられんわな。
「と言うか、メイドに関係ない技術を習得してると思うのは気のせいかな?」
館にいない身でどうこう言える資格はないが、メイド以外の仕事をしているほうが多いように思えるのですがね……。
「それはベー様がメイドに関係ないことばかりさせるからですよ」
ハイ、そうですね。メイドがやるようなことさせてませんね。ごめんなさいね。
どんな非難も事実も甘んじて受け入れるのが丸投げ道。ドンと来るがよい。でも、責め立てられたら辛いので止めてください。マジ勘弁です。
「まったく、またプリッシュ様に怒られても知りませんからね」
それは嫌なので怒られないようにします。どうするかは流れに任せるけど。
「べー様。第一陣が来るそうです」
はぁ? 第一陣? なによいったい?
首を傾げてれと、空にシュンパネの光が。なんやと見てたら二トントラックが現れた。ど、どーゆーこと?
「エリナ様にお願いしてシュンパネを改造してもらいました。四トントラックくらいまで瞬間移動が可能になりました」
あ、だから哨戒艇が持って来れたのか。って、変な流通革命とかせんでくれよな。商人とかに恨まれたくねーからよ。
「まいどー! カイナーズホームのアイオでーす!」
緑色の髪をしたなんか軽そうなセイワ族のあんちゃんが窓から顔を出した。
「お疲れさまです。あちらにお願いします」
生協かよ! と突っ込みたいのを堪え、積まれているダンボール箱を降ろすのを眺める。
さらにシュンパネトラックが来て、どんどんダンボール箱を降ろしていく。
そして、競りでも始まんの? と思うくらいの量が集まった。
……飢饉に備えてる自分がアホらしく思えるな……。
まあ、あるのなら使うまで。感謝を込めていただきます、だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます