第1210話 混ぜるな危険

 どんどん集まるダンボール箱。たくさんとは言ったが、救援物資じゃねーんだから限度を考えろよ。いや、あって困るもんじゃねーから口にはしないけどさ。ってか、この気温と湿気ですぐ悪くなんだろう。


 腐らないよう積まれたダンボール箱の山に結界を施す。


「う~ん。こりゃ倉庫を造ったほうがイイかな?」


 見た目が悪いし、防犯的にも不味い。いや、そうなると人を配置しなくちゃならんか。また婦人に怒られるな。どうしよう……。


「ベー様。人を配置するならこちらで選別しますが?」


 悩んでるオレにミタさんが声をかけて来た。


「そうしてくれると助かるが、人、大丈夫なんか?」


 無理してまではいらんのよ。


「大丈夫ですよ。メイド長ががんばってくれてますから」


 あ、逆らってはダメなメイド長さんね。最近見てないけど元気にやってる? 


「あ、うん、そうか。ガンバってんなら休暇とか与えておいてよ」


 倒れられたらマジ困るんで身も心も休ませてやってくださいませ。


「はい。与えておきます。今のゼルフィング家にはなくてはならない存在ですからね」


「ミタさんも休みたかったら好きなだけ休んでもイイんだからな。なんなら長期休暇でもイイぞ。ミタさんもガンバってんだからよ」


 ってか、ミタさんって休んでるの? いつもいる感じだけど?


 ……ダメな雇い主で本当にごめんなさいね……。


「ありがとうございます。ですが、あたしはベー様の専属メイド。ベー様のいくところならどこにでもついて参ります」


 まるでそれが自分の使命とばかりに胸を張るミタさん。オレ、そんな崇高な存在じゃないんだけどな……。


「そうかい。まあ、休みたくなったら好きなときに好きなだけ休みな。オレは気にせんからよ」


「はい。そのときは休ませていただきますね」


 そう言いながら休まないだろうから甘いもので労ってやろう。また花人族のハチミツでイイかな?


「はい! お願いします! 絶対ですからね!」


 いや、なにも言ってないんだけど。あなたも人の心を読むとか止めてください。


「カイナーズホームに倉庫を造る依頼をします。人はすぐに手配しますね」


 万事君に任せた。好きなようにやってくださいませ。オレは野菜を選別しますんで。


 海の人魚を基準にしたのか、ウリ系が多く、豆やさつま芋、カブにニンジンと根菜類が続いた。


「ゴーヤまであるんかい」


 前世のオレはあまり苦いのは好きではいからゴーヤは口にしたのは一、二回くらい。苦いとしか記憶にないな。


「人魚、ゴーヤとかも食うのか?」


 この世界の苦瓜もなかなかの苦さだが、ゴーヤの苦さとは違う、ような気がする。ごめん、はっきりとは言えませんです。


「はい。最近人気で発注が多いとアバール様がおっしゃってました」


 あんちゃん、ちゃんとカイナーズホームを使うようになったか。よきかなよきかな。


「なら、ゴーヤを中心にやってみるか」


 どちらもウリ科? ウリ属? なんだ? わかんねーが、苦いってのは同じ。それでイイやろ。もし、淡水人魚の口に合わなければ海の人魚に渡せばイイんだからな。


 木箱を出して収納結界を施す。収納空間は荷車二台分。そこにゴーヤを詰め込んだ。


 収納結界箱八つ。カイナーズホームがどんな生産計画を立ててるのか怖くなるぜ……。


 他の野菜も収納結界箱に詰めてると辺りが暗くなって来た。


「ベー様。作業を続けるなら明かりを灯しますが、いかがなさいますか?」


「いや、明日やるよ。急ぐことでもないからな」


「わかりました。それと、サプル様たちもこちらで夕食とのことです」


 あ、サプルたちまだいたんだ。と言うか忘れてました。ごめんなさい。


「ってか、サプルたちなにしてんだ?」


 オレのように景色を楽しむ性格でもねーし、観光するものもねー。ボブラ村より風光明媚なところだ。


「ギンコ様たちと狩りをしてるようですよ」


「え? レニスもか?」


「はい。カイナーズの皆様方が苦労してるようです……」


 それはカイナーズに同情するよ。つーか、カイナのヤツ、よく許してんな。まあ、医療技術も高そうだから大丈夫だとは思うけどよ。


「トカゲさんたちの邪魔になってねーんだろうな?」


「ちゃんと見返りを渡しているので問題はありませんよ」


 それならイイが、無茶はせんでくれよ。あ、お前が言うなとかはノーサンキューでお願いしますぜ。


「まあ、そっちはカイナーズに任せるわ」


 混ぜるな危険な連中の世話はオレには荷が重い。オレはこちらで異種族交流をするからよ。

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