第1181話 あるある
では、我が家に、とはならない。
さすがに留学者たちも疲れただろうし、歓迎会をやる時間でもない。まずは旅の疲れを落としてもらましょう。と、ミタさんからの進言でした。
「ミタさん。ブルー島に案内してやってよ」
もうブルー島がどうなってるかオレにはわからんしさ。
「畏まりました。レイア。ハーマリー。皆様を宿舎にお連れしてください」
そっちは任せてピータとビーダを外して、オレも一旦ブルー島へ。離れの様子を見ておこう。
まあ、メイドさんが管理してくれてると思うが、オレの住み家はブルー島の離れ。まずはそこに帰らんとな。
転移結界門は見えていたが、横に建つ小屋(二畳ほどの)まで視界に入らなかった。いつの間にできたんや?
「おう。やっと帰って来たな」
その小屋には元行商人のじいさんがいた。
「なにしてんだ?」
「ここの門番をさせてもらってるよ」
門番? は、雇おうとはしてだが、なにも引退してまで働くこともねーだろう。ってか、暇じゃねーの?
「まあ、じいさんがそれでイイのならオレは構わんけどよ。そう言や、息子はどうしたい?」
シャンリアルの領都へ海産物を運ぶ話をしてたのは微かに覚えてます。それで許して。
「ああ。それならアバールに回したよ。ぶっ殺す! とは言っておったがな」
うん。あんちゃんには精神を落ち着かせる薬を渡しておこう。
「あんちゃんに任せておけば大丈夫だな。オレもそのうち手伝うよ」
いつになるかは知らんけどな。
「とにかく、留守を守っててくれてありがとよ」
「大したことはしとらんが、お帰んなさいだ」
やはり、迎えられるものはイイもんだな。帰って来たと思わせてくれるぜ。
じいさんに迎えられ、転移結界門を潜った。
「……こちらは夜か……」
時差ボケになりそうだな。
転移結界門を出たところには魔法的な光が灯されており、歩くのにそう不便はなかった。
離れまで来ると、島全体を見渡すことができる。
「……灯りが増えたな……」
一月ちょっとしか離れてないのに、島の発展が著しすぎる。
「はい。メイドやボーイの家族も住んでますから」
「ここ、そんなに暮らしやすいところでもねーだろう」
なにもない島だし、館との時差もある。自給自足はできない。買い物は外。暮らすには不便だと思うんだがな?
「いえ、とても暮らしやすいところですよ。カイナーズホームによりインフラ整備はできてますし、飲食店や食料品店もありますから」
ファンタジーの住人がインフラ整備とか言っちゃイカンでしょうが。いや、もう今さらすぎてどの世界に住んでるかわからなくなるけど!
「それに、ベー様のいるところは安全ですから」
その代わり苦労が多いと思うのはオレの気のせいかな?
「そうかい。好きにしたらイイさ」
無人島ってのも寂しいしな、人がいてこそ楽しい日々が送られるってもんさ。
離れのドアを開けると、プリッつあんとメイドさんがいた。
「お帰りなさいませ」
「ああ。ただいま。離れを守ってくれてありがとな」
このメイドさん一人で守ってたかは知らんが、このメイドさんしかいないのだからこのメイドに礼を言っておこう。
「ホー。ミミッチーも守ってた!」
あ、ああ。いたな、こんな珍獣も。完全無欠に頭から抜けてたわ。
「はいはい。守ってくれてありがとな」
どうせ食っちゃ寝だったのだろうが、文句を言うとメンドクセーからな、素直に感謝しておこう。
「遅かったわね」
「村を見せながら来たんでな。プリッつあんは早く帰って来てなにしてたんだ?」
「シャワー浴びてた」
「そっか」
としか返せない。早く帰ってまですることか? なんて思ってはいけない。メルヘンとはそう言う生き物なんだからな。
「ベーも浴びたら?」
「寝る前に浴びるよ。まだ親父殿たちに挨拶もしてないからな」
ただいまと言うのも息子の勤め。蔑ろにはできんよ。
「ミタさん。コーヒーちょうだい」
「はい。どうぞ」
わかってましたとばかりにコーヒーが出て来た。
ありがとさんと受け取り、コーヒーをいただく。
「やっぱ、我が家は落ち着くな」
旅から帰って来たあるある~。
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