第1163話 転移結界門設置
「殲滅技が一つ、鬼は外!」
鉄粒を三十センチくらいの羽虫の群れへと向かって放った。
大図書館の魔女に言ったように、生命の揺り籠に生息する羽虫はオーガにも勝り、並の攻撃では殺せないだろう。
まあ、五トンのものを持っても平気な体を持つオレが鉄粒を全力で放てばイチコロよ。
鬼は外! 鬼は外! 鬼は外で羽虫の群れを排除するが、何千匹もいると一向に減らねーな。まったくもってウゼーわ。
「焼いてもよいか?」
大図書館の魔女からの冷静な問い。だが、顔は渋そうに歪んでいました。虫が嫌いで?
「やっちゃって!」
と、大図書館の魔女の周りたくさんの火花が散る。
──あ、これヤベーやつ!
ワンダーワンドに立って銃無双するミタさんを結界で包んだ──瞬間、視界すべてが真っ白に染められた。
染められた視界が元に戻ると、羽虫は綺麗さっぱり消えていた。この人外、マジヤベータイプの魔女だ。
なんて愕然としてたら地上まであとちょっと。空飛ぶ結界を出した。
あ、ちなみに生命の揺り籠の天辺から入りました。比較的安全なので。
だだ、世界樹が何本も生えているので枝葉を避けながらのダイブとなっておりますのでご注意を。
「ミタさん! 下に向けてモコモコビームを放て!」
「はい!」
なんか驚くのもバカらしいって感じのミタさんが、柄を下に向けてモコモコビームを発射。まあ、甚大な被害を与えましたとさ。めでたしめでたしっと。
「ベー様! なにか獣がいます!」
見れば濃い緑の毛を持つ、なんかゴリラっぽいものがいました。
「モコモコビームで死なんとはスゲーこと」
「……あたしには満身創痍に見えますが……」
それでも生きてるからここの生き物はおっかねーんだよ。
「とりあえず、もう一発撃っておいてよ。邪魔だし」
「畏まりました」
なんの躊躇いもなくモコモコビームを撃っちゃうミタさんにシビれるぅ~。
いい具合に拓けたので、そこを着地地点とします。
「ミタさん! 先に降りろ! 大図書館の魔女さんは上を頼む! 殺戮技が一つ、雷電!」
着地地点の周りの森から現れるティラノサウルスっぽいトカゲを雷が込められたクナイを連続で投げ放った。
トータが何日もかけて電気を溜めただけあり、イイ感じに黒焦げになるティラノサウルスっぽいトカゲくん。なんか旨そうだ。
着地地点へと降りる。
「殲滅技が一つ、千本桜!」
結界球を打ち、次々と現れるティラノサウルスっぽいトカゲくんをひれ伏させる。
「ベー様! これが通常なんですか!?」
「いや、オレが入って来たから暴走してるだけだ!」
はっきりとは言えんのだが、以前入ったとき、なぜかオレだけ狙われた。たぶん、結界のエネルギーが生命の揺り籠で生きる命に好まれてんだろう。
「しばらく押さえててくれ!」
なんとかティラノサウルスっぽいトカゲくんを排除。その隙に転移結界門を創っちゃいますんで。
チョチョイのチョイで転移結界門を創る。
「ふぅ~。何度創っても転移結界門は疲れるぜ」
まあ、イイ負荷を与えてくれるから訓練にはちょうどイイんだけどな。
「ミタさん! 大図書館の魔女さん! 一度出るぞ!」
転移結界門を開け、外へと飛び出した。
二人が出ていることを確認して門を閉じた。ふぇ~。疲れたぜ……。
「ベー様。タオルです」
なんかガスマスクをしたメイドさんがタオルを差し出してくれた。あ、うん、ありがとね……。
深く追求はせず、ぐっしょりと流れた汗を拭った。はぁー気持ちイイ。
「お水です」
さらにありがたいことにペットボトルを差し出してくれた。うん。ガスマスクがチョー気になりますわ~。
「すみません。ハルは恥ずかしがり屋なのもので」
オレがガスマスクを気になってるとわかったのか、ミタさんが教えてくれた。
あ、そうなの。ならしょうがないよね。恥ずかしいんだもん。
謎が解ければ気にならないので好きにさせておく。個性は大丈夫だし。いや、知らんけど。
水を飲み一息。久しぶりの全力は気持ちイイぜ。
「それで、どうするのだ?」
さすが人外さん。これっぽっちも疲れを見せてませんでした。
「わたしが入るとあんな感じなので、あとは大図書館の魔女さんの好きなようにしてください」
オレはしばらく入らん。疲れたし。まあ、運動不足に感じたら入るよ。ここほど運動できる場所はねーからな。
「多少は落ち着くのか?」
「はい。多少は落ち着きますし、大図書館の魔女なら余裕でしょう」
あの実力ならな。
「わかった。三人ついて来なさい」
「「「はい」」」
魔女の一団から三人出て来て、大図書館の魔女と転移結界門を潜って生命の揺り籠へと入った。
「ミタさん。キャンピングカーある? あるなら出して。ちょっと休憩するからさ」
「畏まりました。すぐに用意します」
ミタさんも疲れたようで、キャンピングカーを出すと他のメイドに任せた。
「ベー様。用意が整いました」
「あんがとさん。ミタさんも休めな」
返事を待たずキャンピングカーへと入り、ソファーへと飛び込み、夢の中に旅立った。
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