第1164話 ミッションクリア

 ん? なんだ? 外が騒がしいな?


 ったく。こっちは疲れてんだから静かにしろよ。もうちょっと寝たいんだからよぉ……。


 毛布を被り、眠りにつく。


 ………………。


 …………。


 ……。


「──うっせーな! なんだよいったい?!」


 ギャーギャーと近所迷惑だろうが! 静かにしろや!


「マイロード。お水です」


 横からコップが現れた。


 なんかよーわからんが、喉も渇いていたのでありがたくいただく。うん。旨い。


「で、なんなんだ?」


「フューワル・レワロから獣を狩って来たようです」


 そう言われてカーテンを開けて外を見れば……見えん。夜か。にしては人が集まってんな……。


「オレ、どのくらい寝てた?」


「十時間ほどです」


 そんなに寝てたんかい。想像以上に疲れて……るわな。いろいろあったし。疲れてないほうがおかしいわ。


「マイロード。なにか召し上がりますか? 外でミタレッティー様が食事の用意をしておりますが」


 自分の腹を擦る。ん~。腹は減ってるな。


「食べる。あ、その前にシャワーを浴びる」


 思えば四日くらい風呂入ってねーや。このままでは汚いとサプルに会ったときに風呂に投げ込まれるな。


 ……ってか、サプルのヤツちゃんと平穏に……は無理なような気がする。メイド長さんらに乞うご期待です……。


 シャワー室に向かい、溜まりに溜まった疲れと汚れを落とす。あービバノンノン。


 ホカホカとシャワー室から出ると、プリッつあんがいた。あ、久しぶり。元気してた?


「どったの?」


 なにか疲れたご様子。徹夜したの?


「……もう面倒臭いところだったわ……」


 なんか愚痴が始まったが、要約すると堅苦しいところで、楽しめなかったことだった。


 まあ、そりゃそうだろうよ。皇族が自由とかあり得んだろう。まだレヴィウブだからプリッつあんが切れないでいられてるはずだ。


「双子ちゃんたちは?」


「なんか用があるとかで、どこかに出かけたわ」


 プリッつあんにも教えないか。情報統制はしっかりしてんだな。


「仲良くなれたんか?」


「まあ、程々にはね。いい子たちよ」


 メルヘンにも母性とかあんのかね? なんか母親みたいな笑顔してるわ。


「それより、いつまでここにいるの?」


「んー。もうちょっとかな?」


「どう言う意味よ?」


「たぶん、ブルーヴィが南の大陸に着く頃だと思う」


 空クジラはそんなに速く飛べないし、今まで小さな世界にいたから外の環境に戸惑っているはず。


 それに、航行を任せたみっちょん(黒羽妖精ね)たちも気分屋だから遠回りしてるはずだ。


「南の大陸?」


「勇者ちゃんも心配だし、ラーシュとも会ってみたかったからな、ブルーヴィを手に入れたときに計画したんだよ」


 村人としてのアイデンティティーが失われるかもしれんが、ブルー島の開発もしなくちゃならん。南の大陸には乳を出す牛がいるそうだから牧場にしようと思ってんのよね。


「まったく、落ち着きがない村人ね」


「若いうちに旅をしろ、ってな。世界を知るのも人生を豊かにするもんだぜ」


 せっかく世界を知る術があるのなら遠慮なく使え。そして、楽しめ、だ。


「そうね。世界はおもしろいわね」


 それでこそワールドワイドな妖精だ。いや、テキトーだけど。


「そうだ。これを双子ちゃんに渡してくれ。オレからのプレゼントだ」


 空飛ぶ箒を変身ステッキを無限鞄から出す。


「なにこれ?」


 カクカクシカジカあーだこーだとそう言うわけよ。わかった?


「ふ~ん。変なこと考えるわね。まあ、箒はともかく変身ステッキはいいわね。わたしも欲しいわ」


 了解。作っておきます。


「お願いね」


 と、メルヘンが去っていった。


 ふぅ~。これで放置した罪はチャラだな。言ったら怖いから黙ってるけど。


「ドレミ。コーヒーちょうだい」


「はい。すぐに用意します」


 重要なミッションはクリアした。コーヒーを飲んで落ち着いたら外に出てみるか。


 備えつけのお茶セットからコーヒーを淹れてくれ、なんともイイ香りを出すコーヒーを渡してくれくれた。


 ん~。マン〇ム。


 あ、なんか久しぶりに言った感じ。

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