第1161話 会合(?)
案内された天幕に入ると、なにか偉そうな方々が集まっていた。
簡単に分けるとしたら、大図書館組に軍人組、あと、高位貴族組ってところかな?
ってか、閣下はいないんだ。来ると思ってたんだがな。
右手を胸に当て、左手は腰に回して軽くお辞儀する。
「お待たせしました。わたしは、ヴィベルファクフィニー・ゼルフィングと申します。お見知りおき願います」
一応、帝国式に挨拶をした。
「この子どもが本当にフュワール・レワロの持ち主なのか?」
挨拶が返って来るより速く、貴族組から不満の声が上がった。
帝国にも話の見えないヤツはいるもんだ。まあ、わかるヤツばかりも嫌だけどよ。
「カーテルン卿、失礼ですぞ」
それを嗜める将軍っぽいワイルドなダンディー。感じからしてA級冒険者に匹敵する強さだ。
「不服なら帰ってよいぞ」
それを後押しする大図書館の魔女。派閥争いか。大変だね。
「そちらの方が申すのもごもっとも。この見た目で外国人なんですからね」
子どもにそう言われてさらになんか言いようものならカーテルン卿とやらが恥をかくだけ。そうしたいのならドンドン言え、だ。
「失礼した。想像していたのと違ってな」
謝罪できるか。無理矢理ねじ込んで来たってわけじゃないようだ。こいつらは閣下の派閥かな?
「お気になさらず。こう素直に受け入れると逆に不安になって来ますからね」
バカもときには安心できる存在となる。特にこう言う状況では微笑ましい存在になることを知ったよ。
「ベー様、こちらに」
と、補佐官さんが席を勧められ、皆様の会合(?)にお邪魔します。
「紹介します。こちらは第一衞章軍、軍団長のサラエマル様です」
補佐官さんが司会になり、将軍っぽいワイルドダンディーを紹介する。
「サラエマル様には調査隊の指揮をお願いします」
「よろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いします」
やはり軍で入るのか、つーか、衞章軍ってなんや? 初めて聞いたわ。
「続いて資源署より調査隊の指揮をしますカーテルン様です」
資源署とかあるんだ。いろいろあるんだな、帝国って。
「もうわかってはいるでしょうが、帝国大図書館を纏める図書館長ララ様です」
あ、図書館長なんだ。つーか、皇帝の弟を教える図書館長ってなによ? 帝国での図書館の位置がよーわからんわ。
「わたしたちは勝手に動かせてもらう」
「前にも言いましたが、自己責任なら好きなようにしてくださって構いませんよ。もちろん、採取したり狩ったりもね」
「気前がよいのだな」
と、軍団長さん。
「フュワール・レワロの中は弱肉強食。強い者が法です。その命は強い者のためにあります。なので、弱い方は入らないことをお勧めします。ただ餌になるだけですからね」
どう説明しても止めることはないのだがら、一回入ってどんなものか知るとイイ。ちゃんと自己責任で、って言ってるんだからな。
……あとでそんなこと知らぬ! とか言ってくれたら楽しいんだがな……。
「それと、あのフュワール・レワロはわたしが管理してるので、万が一わたしが死んだら出れなかったり入れなかったりするのでご注意を」
なにを、とは言いません。そちらで勝手に解釈してくださいませ。
「お主は、何歳なのだ?」
「十一歳ですよ」
中身は五十は過ぎてますが、いつでも少年の心を忘れたことはありませんぜ。
「そうか」
表情筋が死んでるのか、喜怒哀楽がまったくない大図書館の魔女どの。だったらもうちょっと言葉を増やして欲しいもんだが、人外に要求しても無駄。雰囲気で感じろだ。
「譲渡は不可能ですよ」
「なぜに?」
「大図書館の魔女では無理だからです」
「そうか」
「はい」
それ以上は言わない。大図書館の魔女なら予想はできるだろうからだ。
「では、フュワール・レワロにいってみますか。いろいろ説明するより見たほうが早いでしょうから。構いませんか?」
「構わない。頼む」
席を立ち、フュワール・レワロへと向かった。
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