第1160話 悪巧み
「……なんの悪夢だよ……」
魔法少女のドレスを纏うオバチャンたち。胸焼けが止まりません。
どう言う状況? とお嘆きの方々にお答えしよう。
変身セット──じゃなくて、変身ステッキができたので、動作確認を誰かにお願いしようとしたら、なぜかオバチャンが名乗りを上げ、変身ショーが始まったわけですよ。
「ヤダよ。下着がみえちゃうじゃないか」
「ハハ! 旦那に見せてやりなよ」
「今夜は暑くなりそうだね」
オレのライフがゼロになりそうな会話があちらこちらから聞こえて来るこの地獄。誰か助けてください!
「ベー様、大丈夫ですか?」
吐血まであと五秒ってくらいには大丈夫じゃないです。
「ミタレッティー様。ナリューから連絡で大図書館の魔女様方が集まり出したそうです」
「わかりました。何人か応援に出してください。ベー様はどうしますか? 約束の時間まであと三十分くらいですが」
もうそんな時間か。変身ステッキに……と言うより魔法少女になるオバチャンに萎えてて忘れてたわ。
「いく。これ以上ここにいたら確実に吐くから」
別に急ぎではねーし、まだレヴィウブにいる。ゆっくりでイイさ。
「あ、シャワー浴びてからいくわ」
造船所にあるシャワー室でサッパリ。魔道具の冷蔵庫からよく冷えた牛乳をもらい一気飲み。プッハァ~! ウメー!
ちょっと気力が回復。あと三時間は戦えるぜ。
「ミタさん。なんか食うもんある?」
「サンドイッチがありますよ」
じゃあ、それちょうだい。食いながらいくからよ。
造船所から出ると、別のメイドさんがランチボックスみたいなものを持って来てくれた。あんがとさん。
中を見ると、サンドイッチとリンゴとバナナが入っていた。ピクニックか!
無限鞄から自作の空飛ぶ箒を出し、柄先にランチボックスをぶら下げて、箒に跨がった。ちなみにドレミは猫型になって穂のほうに乗りました。
オレが浮かぶと、ミタさんと二人のメイドさんが続いた。
……この世界だとメイドにワンダーワンド(魔女に箒的な感じ)とか、後の世に伝わりそうだな……。
オレの責任じゃないもーんと、フュワール・レワロを設置した場所へと向かった。
「ん? なんだ?」
フュワール・レワロを設置したところに、なんかたくさんの天幕が張られていた。
「戦争か?」
と思わず口にしてしまうくらい兵士が溢れていた。
「探索のために集められたみたいです」
まあ、人数制限はしてねーから何人来ようが構わねーが、だからって数を集めても無駄なところだぞ、あのフュワール・レワロは。
「よろしいのですか? あれ、乗っ取りですよ」
と、久しぶりのレイコさん。
「だろうな。オレもそのつもりで置いたし」
あの皇帝と弟が企みそうなことぐらい想像はつく。フュワール・レワロを見せたら帝国の利益のために動くってな。
「なにを仕掛けたんです?」
「仕掛けてはいねーよ。ただの釣り餌さ」
それと情報収集だな。帝国の力を見せてもらおうじゃねーか。
「それに、あのフュワール・レワロの使用権はオレのもんだ。入れるも入れないもオレ次第。さぞや優遇してくれるだろうさ。クク」
もっとも、あちらもオレの考えそうなことは読んでるだろうが、拒むことはできまいて。さあ、閣下。オレの真の目的を知ったとき、フュワール・レワロを切ることができるかな?
「スッゴい悪いこと考えてる顔になってますよ」
おっと。これから友好時間。笑顔笑顔っと。
フュワール・レワロを中心に三十メートルくらい空間ができてるので、そこに着地する。
「威嚇されてますね」
「重要人物がいるところに降りて来たからな」
お偉いさんがいるところにどこの馬の骨(表現違うか?)ともわからないヤツが降りて来る。不敬どころか完全に敵対行動だろうよ。
「わざとやってます?」
「はい。わざとやってます」
必要なら畏まるが、回避できるのなら畏まらないほうが楽でイイ。だから、優勢に立っているときに自分の存在を確立しておくのです。
地面に着地すると、補佐官さんと士官っぽい感じのにいちゃんがこちらにやって来た。
「ご足労ありがとうございます」
「構わんよ。大図書館の魔女は来てるんかい?」
「はい。ご案内します」
「あいよ」
さあ、誰が来てるのかな? と考えながら補佐官さんのあとに続いた。
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