第1122話 逃げた先は
「ふぅ~。怖かった」
なによあれ? なぜにあそこまで殺気立てるのよ? メッチャ怖かったわ!
「貴重な寿命が一年くらい減った気分だぜ」
こう言うときこそコーヒーだと、雪が積もる林の中でマン○ムタイムとしゃれ込んだ。
「それで、ここはどこなわけ?」
テーブルの上で自分用のテーブルにつきながら紅茶を楽しんでいたプリッつあんが尋ねて来た。
いたの!? とか言うくだりはすべてカット。いるときはいるんです。それで納得してください。
「帝国のどこかだな」
公爵どのから聞いてないから知らん。仮に聞いても帝国すべてを知っているわけじゃねーから大雑把な位置しかわからだろう。まだ地図とか国家機密級の時代だし。
「でも、レヴィウブのあるところなのは間違いない」
咄嗟のことで意識せず転移バッチを使ったが、買い物せにゃならんな~とか考えてたからここに転移してしまったのだろう。
……どうせならレヴィウブの中に転移して欲しかったぜ……。
「せっかく来たんだし、買い物してくか」
買い物せにゃならんなとは思ってたが、別に急ぎと言うことでもねー。できたらイイなくらいなもんだったが、来たんなら買い物せにゃ損だろう。夕方まで戻りたくねーし。
「レヴィウブって確か、カイのおじ様といったところよね?」
カイのおじ様って、君、そんな呼び方してんの? いや、呼び方にかんしてオレがどうこう言えませんがね!
「ああ、そうだ。いろんなものがあって楽しいぞ」
ショッピングモールってよりは物産展な感じかな? 帝国各地のものが集まって、見ていて飽きないぜ。
「さて。歩くにはちょっと遠かったような気がしたからゼロワン改でいくか」
曲がった感じはなかったから道なりに進めば大丈夫だろう。
無限鞄からゼロワン改ーーとキャンピングカーも出て来た。
「そう言や、つけっぱなしだったな」
それにバイブラストの紋章もそのままだ。まあ、外すのもメンドクセーし、このままでイイか。
ゼロワン改へと乗り込み、たぶん、レヴィウブへと続くだろう方向へと発車させた。勘だけどね。
「道に雪ないね」
「そうだな。まるで道が温かいかのように解けてるわ」
土を固めたような道(ちなみに馬車が交差できるくらいに道端がある)なのに、なんか魔法でもかかってんのか?
それらしい魔力は感じんが、まあ、経営(?)してんのが悪霊も真っ青な幽霊だからな。どんな不思議があったって驚きはしねーよ。
「森ね」
「森だな」
なにやら大森林に入りそうな感じの濃密な木々が生い茂っていた。
「本当にあるの?」
「さぁな? いってみりゃわかるさ。ダメならダメでドライブを楽しめばイイ。それにこれだけの大森林なら冬でも活動している魔物はいんだろう。ちょっと運動がてらの狩りと洒落込もうじゃないか」
「狩られる魔物にしたらたまったもんじゃないけどね」
それもまた弱肉強食。強者の糧となれ、だ。
「ん? 前に馬車がいるわよ。なにか停まってる感じ」
馬車? 見えんぞ?
暗くてわからんが、目のイイプリッつあんが言うのならいるのだろう。ゼロワン改の速度を落とすか。
「……確かに停まってるな。それも複数台……」
道が広く、快適な道なのに事故か? 左側によっているところを見ると正面衝突ではなさそうだが。
ゆっくりと進み、旋回できる位置でゼロワン改を停車させた。
「プリッつあん、なるべく質のイイよそゆきの服に着替えろ。たぶん、前の馬車は貴族のだ」
バイブラストの紋章をつけて村人ルックでは怪しまれる。TPOをわきまえんとな。
「べーってそう言うの気にするんだ」
「そんな感心いらねーんだよ。オレは必要ならどんな格好でもするわ」
言い捨てキャンピングカーの後ろへと転移し、こそっと中に入った。
「コーリンに冬用も頼んでおいて正解だったぜ」
帝国には秋を予定してたが、狂うのが我が人生と、冬に延びたときを考えて、念のためにと頼んでおいたのだ。
「だからサリバリたちが死にそうになってたんだな」
どんだけ急いでんだよと思ったら、冬用まで仕上げてたんだ。張り切りすぎだ、あの服飾狂いは。
貴族の外出着と思われる厚手のシャツや革のズボンを穿き、フードつきのコートを纏った。あ、手袋も作ってあるよ。隙がねー女だぜ。
「ちょっとキツいな。成長したか?」
まあ、育ち盛りなんだからしょうがねーか。伸縮能力でちょっとデカくするか。
「……こんなもんかな?」
いろいろ動いて調整。一分くらいでイイ感じになった。
キャンピングカーから出ると、白いコートを纏ったプリッつあんがいた。早いお着替えで。
「べーが遅いのよ」
「着なれてない服だからな」
ボタンが二つ以上ある服なんて久々に着た。ボタン、上手くかけられなくてびっくりしたわ。
なんてことはどうでもイイんだよ。停まっている原因のところへ向かうとしますか。
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