第1104話 焼いても煮ても旨いらしい 2019.01.05
捕獲したクエオルすべてからミズチが出て来た。
「凶悪ではあるがコーヒーモドキで死ぬのが救いか」
体内にいる状態でもコーヒーモドキをかければ死ぬことも確認できた。
「ベー様。メイドが目覚めました」
腕時計を見れば二時間が過ぎてる。これが危険な時間かどうかはわからないが、目覚めたメイドの感じからしてそう危険は見て取れない。
「脈拍、瞳孔、熱に問題はなし、か」
簡単な診察に問題はねーが、相手が寄生虫ってのが怖い。なにか病原菌とか持ってるかも知れんしな。
「メイドはカイナーズに送れ。一月は隔離だ。絶対に外に出すなよ」
「……皆は大丈夫なんでしょうか……?」
オレの指示に即答せず、心配そうな顔をして尋ねて来るミタさん。さすがにこの状況ではメイド道は貫けんか。
「大丈夫に決まってんだろう。うちで働いているメイドは家族も同然。どんな手を使っても死なせんよ」
この十一年。家族を守るために薬学を学び、人脈を築いて来たんだ、高々寄生虫ごときで死なせんわ。
「はい!」
メイドの運搬はミタさんとカイナーズに任せ、オレは結界にしがみつくウパ子のためにクエオルを捌くことにする。
「わたし、気持ち悪るいからパス!」
と、捌き始めたら、頭の上のメルヘンさんがどこかへと飛んでいった。軟弱者が!
獣に魚に魔物と、いろんなものを捌いて来たオレに気持ち悪いとかはもうねー。ただ、海の蟲はノーサンキューと言っておこう。
「この毛は、食えるのか?」
毛は短くてごわごわしてるので使い道が思いつかん。ワームの毛ってのもダメだろうな。
「おいちくないからいらない」
まあ、毛を好んで食う生き物はいねーか。ゴブリンだって食わねーしよ。
結界刀なのでクエオルは簡単に捌け、内臓っぽいものは危険っぽいので廃棄する。
「あ、おいちいのに……」
がっかりするウパ子。食えるのか、内臓っぽいもの?
「生がおいちいの」
どこぞの飲兵衛みたいなこと言いやがる。まあ、食えると言うなら食うがイイ。ほれ。
「この苦味がたまらないでし」
通なのかゲテモノ食いなのかわからんな。でも、気になるのでイケナイ子に食べさせてみよう。
頭と尾は切り捨て、念のために塩水で丁寧に洗う。こんなもんか?
いろいろな獣や魔物を捌いたことがあるとは言え、それは大雑把な捌き。ご近所に配るためであり、食べるための捌きはサプルがやっていた。
なので、なんとなくで捌き、なんとなくで判断するしかないのです。
「こんなもんか」
三匹捌き、一口大に切り分け、塩胡椒を振りかける。
馴染む間にコンロ作り。これは土魔法であらよって感じで即完成。炭を入れて火魔法で簡単に着火。ってか、久しぶりの火魔法だな。昔は出すのに四苦八苦したのによ。
イイ感じに火が回り、網を乗せていざ勝負。君はどんな味を見せてくれるかな?
「レアでお願いちます」
レアって言葉と意味をどこで覚えきたのか是非とも知りたいが、今はクエオルとの勝負中。集中しろ、オレ!
見た目はモツっぽく、内臓系はあまり食わないので、レアがどんな状態かはわからんが、まあ、こんな感じかな? とウパ子の皿に入れた。どうよ?
「おいちいでし!」
まあ、失敗ではないようだ。
次々と焼いてウパ子の皿に盛る。
「匂いはイイんだよな」
食欲を誘う匂いが辺りに充満し、オレの胃袋も攻撃して来た。
オレの考えるな、感じろはイケると言っている。だが、心情的に躊躇してしまうのだ。
「いい匂いだ」
と、赤鬼さんたちが集まって来た。仕事はイイのかい?
「今、休憩中なので」
案外、カイナーズは規律が緩いのか? まあ、上に立つのがアレだしな。
「食いたきゃ食ってイイぞ」
食いたいと言うならオレに否やなし。じゃんじゃんバリバリ食いやがれ!
って、材料が切れた。野郎ども、ちょっと食材を捕って来いや!
「お任せあれ! 野郎ども、散れ!」
野太いかけ声とともに野郎どもが闇へと散っていく。うん、ノリのイイ野郎どもだ。
「ベー様、鍋もお願いします!」
鍋? あー確かに鍋にしても合いそうだ。ちょっと辛めのゴジル鍋がよさげかも。
よっしゃ、やったるでー! と持っている食材をテキトーにぶつ切りにして鍋に放り込む。
鍋なんぞテキトーでも味はイイ。勘でゴジルを入れ、日本酒で風味(?)を出す。さあ、完成だ。じゃんじゃん食いやがれ~!
「……なにしてんの……?」
クエオルを捌いたり焼いたり煮たりとしてたらメルヘンさんやミタさんたちが戻って来たました。
「うん。それはオレも誰かに尋ねたいところだった」
ほんと、オレはなにやってんだ? 誰か教えて!
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