第1098話 元に戻った
プリッシュ号改を先頭に八隻の飛空船がやって来る。
もちろん、プリッシュ号改は人のサイズになっており、率いる飛空船も人サイズだ。だが、そのうちの一隻がやたらとデカいのだ。
プリッシュ号改を人のサイズに合わせようとしたら三十メートルくらいにはなる。正面から見たら横は二十メートル(これは左右に回転翼があるからだ)。高さは十五メートルくらいだろう。
その状態のプリッシュ号改を基準として背後にいる飛空船は五十メートル級の、たぶん、輸送船だろう。同じ形だから。
だが、デカい船は横も高さも三倍あり、もう浮遊島と呼んでもイイくらいである。
「なに、あれ? 島を改造したのか?」
「博士ドクターがヴィベルファクフィニー号って言ってたよ」
はぁ? あれが? オレが作っていた形とまったく違うぞ。どこで改変があった!?
「まあ、竜機や戦闘機が離発着できるようにするにはあのくらい大きくしないとならないしね」
なにサラッと言ってんだよ。オレが作ろうとしてたのは遊覧船だよ。空母じゃねーんだよ。つーか、あんなのなにに使えって言うんだよ。コンセプトなによ?
「べー乗るだけだけなんだし、別にいいでしょ」
ま、まあ、船で寛ぐのが目的だから構わんのだが、あそこまでデカいと船感ねーだろう。
「あと、中にカイナーズホームの支店を出したからよろしくね」
「それはもうカイナーズの船だろう。カイナーズでやれよ」
カイナーズ号って名前にしろや。オレの名を使うなよ。オレ、なに一つ関係ねーじゃん。
「そこはべーが活用してよ」
「なんの丸投げだよ。せめてどうしたいかを言えよ」
オレに丸投げするとかイイ度胸だな。まあ、オレクラスになるとそれをさらに丸投げするけどな。
「従業員を働けるようにして」
根本からかよ。丸投げにもなってねーよ。
「ったく。遊覧船が移動販売船かよ。しばらくはヤオヨロズとハルメランの往復で稼ぐしかねーか」
まだ一都市としか交易約束を交わしてないが、いずれ他の都市にも話が伝わるはず。それまでは細々とやるしかねーだろう。
「とにかく、この都市にカイナーズの拠点を創って名を知らしめろ。魔物駆除や盗賊退治とかして。軌道に乗ったら都市の外にカイナーズホームを造れ。外なら税金も安いだろうし、商売の住み分けもできる。ただし、儲けすぎるなよ。あくまでも傭兵会社としてやっていけ」
一人勝ちは反感を買う。持ちつ持たれつがイイ関係だ。
「往復計画は婦人と相談しろ。ついであんちゃんも巻き込め。市長代理殿にはオレから話しておくからよ」
「婦人とアバールに恨まれそう……」
大丈夫。お前は厄災みたいな生き物に噛まれても死なないんだからよ。オレは普通に死ぬので安全なほうを担当させてもらいます。
「ってか、あんなデカいの降りられるのか?」
いや、浮遊石を使っているだろうから降りられはするだろうが、よくあんなデカい図体を維持できるよな。どんなファンタジー理論が働いてんだよ?
「そこは博士ドクターと小人族の技術を信じていいと思うよ」
疑ってるのは博士ドクターの性格だ。なんかマッドな感じに爆走してる感じだからな……。
「産業革命が起こる前に宇宙革命が起こりそうだ」
「宇宙か。いいよね。おれ、宇宙の戦士も好きなんだ。全方位敵に囲まれるとか燃えるよね!」
だったら魔王を名乗れや。勇者ちゃん唆して全方位から攻撃させてやるからよ。
アホはとりあえず放置して、着陸したプリッシュ号改の元へと向かった。
着陸したプリッシュ号改から武装したメイドさんと、タケルとカーチェ(あと諸々)が降りて来た。
「お前らまで来たのか」
「う、うん。まあ……」
なにやら歯切れの悪いタケル。なんだい、いったい?
「PTSD。急性ストレス障害だよ」
と答えたのはカイナ。お前よく知ってんな。高校で習うものなのか? オレはテレビで知ったけど。
「まあ、あんなのと戦ったらそうなるわな」
「そうだね。あれはなっちゃうよね。アハハ」
それは相手がなっちゃうって意味の笑いか? つーか、お前の笑いのツボがわからんわ。
「……他人事だと思って……」
「アホか。死は平等だ。特別な……ヤツが目の前にいたな。お前って死ぬの?」
殺しても死ななそうだけどよ。
「どうだろう? 前の持ち主は十万年くらい生きてるとか言ってたけど」
「確かに魔神だな。厄災とか起こしてくれるなよ」
犬の様な竜はこいつに弟子入りしたほうがイイんじゃね。百年も学べば厄災竜とかになれんだろう。
「起きても最強の村人さんが吹き飛ばしてくれるから大丈夫さ」
「そうね。神を恐れぬ傍若無人の村人だもん」
と、元のサイズと衣装に戻ったメルヘンがオレの頭にパ○ルダーオン。
酷い言われ様だが、まあ、そんな暴言も今は心地イイ。なんだか元に戻ったって感じだぜ……。
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