第1091話 共存共栄(笑)
「べー様!」
と、愉快な仲間の中にミタさんがいた。あら、あなたも来ちゃったのね。
「ご苦労さん。手間をかけさせて悪かったな」
見えないところでガンバるあなたに感謝です。
「い、いえ。べー様の言いつけを守らず申し訳ありません」
「いいよ。ドレミも来たし。それに、ミタさんが来たってことはブルー島や村は落ち着いたってことだろう」
そのくらいの信頼は持ってるよ。
「はい。タケル様の活躍により黒丹病は消滅しました」
タケル? あ、まあ、未來的漫画的な乗り物だし、不可能ではねーか。ってか、タケルのこと忘れてたわ。
「そうか。タケルには感謝しねーとな」
あと、完全無欠に忘れていたことに謝罪しよう。
「ん? プリッつあんはどうした?」
真っ先にドロップキックかまして来そうなんだがな。
「プリッシュ様は飛空船団を率いてプリッシュ号改でこちらに向かっております」
飛空船団? なんでまた?
「それがプリッシュ様が指示されたのです。べー様が必要としてると言って……」
謎が謎を呼ぶメルヘンのこと。深く考えてもしょうがねーだろう。そうなんだ~と流しておけ、だ。
「そうか。まあ、プリッつあんがそう言うのならそうなんだろう」
「なに積んでるんだ?」
謎が謎を呼ぶメルヘンでも共存共栄(笑)してる仲。空荷で来るとは思えない。ましてや飛空船団を動かすには婦人の協力が必要だ。なにか積んでるとは考えつくわ。
「ほとんどが海産物かな。あと、うちの兵を百名だね。なんでプリちゃんはそんなこと言ったの?」
答えたのはカイナで、メルヘンの指示に困惑しているようだ。
「……オレの考え筒抜けかよ……」
なのにメルヘンの考えがわからないオレ。共存共栄(笑)は建前か? いや、共栄のほうはしてるけどさ。
「べーの一番の理解者だしね」
メルヘンの一番の理解者がオレじゃない件について、誰かわかりやすい説明をプリーズです。
「まあ、時間が省けてよし、だ」
もう少し落ち着いてからとは思っていたが、ヤオヨロズ国とこの都市が共存共栄(本気)していくなら早いほうがイイだろう。
「市長代理殿。薪はすぐに用意できるから好きな様に交渉するとよい。まあ、代金を弾んでくれれば薬はすぐに用意しよう」
悪戯っぽく笑って見せた。あ、老魔術師の顔でだよ。
「出た。影の宰相モード。それで村人とか言っちゃうんだからクレージーだよ」
うっさいよ。ただオレは知恵を出してるだけ。決めるのは市長代理殿だ。
「べーの言葉はほどほどに聞いておきなよ、お嬢さん。すべてを聞いてたら忙しくて婚期を逃すからね」
前世ならセクハラで訴えれるぞ。
「ご安心ください。物好きにも好きだと言ってくださる殿方がいますので」
輝くような笑みを見せる市長代理殿。運のよいお嬢さんだ……。
「それは失礼。結婚式の際にはウェディングドレスを贈らせていただきます」
柄にもない一礼をするカイナ。できたんだな、そういうこと。びっくりだよ。
「ミタさん。市長代理殿に二名のメイドをつけてやって。二十四時間体制で。給金も上げてやって」
市長代理殿には長生きして欲しいからな。
「畏まりました。体制ができるまでこの二名をつけさせていただきます」
見知らぬメイドさんが二名、前に出た。
「市長代理殿。そう言うことじゃ。仲良くやってくれ。そのうち武力もつけるのでな」
「……老師様の多大なるご協力に感謝いたします」
誠心誠意、オレに頭を下げる市長代理殿に、頷きで返した。
新たに決意したような顔で市長代理殿が部屋を出ていった。人に化けた二人のメイドさんを連れて。
「べー様。あたしも様子を見て参ります」
たぶん、他のメイドから報告は受けているだろうが、自分の目で確かめたいのだろう。好きにしなと言っておく。もうこの城で文句を言うヤツはいないからな。クク。
「偽装してるのになんで悪そうな笑みを見せるのさ?」
「芸は細かく。徹底的に。まあ、拘りだ」
身も心もその者になる。オレ、役者でも食ってたかもしれない。おっと、詐欺師とか言っちゃイヤよ。
「それで、おれを召喚した理由はなんなの?」
自分で召喚とか言っちゃうんだ。まあ、カイナなら喜んでやりそうだけどよ。
「カイナーズで傭兵会社をやらないか?」
とのセリフにカイナじゃなく、軍服を着た白い肌に白い髪の鬼族だろうねーちゃんが驚いた。アルビノか?
「お前は驚かないんだな?」
「まーね。前々からは考えてたから。でも、おれたち魔族だから断念したんだよ」
そりゃそうか。魔大陸ならまだしもこの大陸では魔族は悪って立場だからな。
「でも、いつかべーが解決してくれると思ってた。まるで根拠はなかったけど」
なんだよ、その意味不明な確信は? いや、当たったからなんも言えねーけどさ。
「傭兵会社は今すぐにでも創れるよ。プリちゃんが言ったとき、そうなるよう人選はしたから」
少年の心を持っていても魔族の代表としての心構えはしっかり持っているようだ。
「市長代理殿がよりよい政治をするために力を貸してくれ。報酬は都市から出させるからよ」
「うちは高いよ」
お、こいつ、交渉なんかして来たぜ。
「これからヤオヨロズ国とこの都市は、最低でも五十年は仲良くしていく。その費用は防衛費として出させるさ。魔族? 異種族? 平和の前には些細な言葉さ」
カイナーズ以上の武力を示せるのなら示せばイイさ。他の都市と契約すればイイだけのこと。
「ここは、貿易都市群帯。話し合いだ調和だなんて二の次。まずは武力があってこそ己を主張できるところだ。さあ、他の都市はどうする? 戦うか? 敗けを認めるか? いや、利用しようと考える」
「カイナーズはそれを利用するのですね」
アルビノのねーちゃんが口を挟んで来たが、正解とカップを掲げてみせた。
「利用し利用されるか、助け助け合うかはカイナーズ次第。共存共栄バンザイだ」
言葉は言い様使い様。行動だって同じさ。
「……了解。生きるなら繁栄しなくちゃね……」
よりよい未来に乾杯だ。
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