第1068話 扉
「ん? 石畳?」
姉御の喫茶店へと続く方向へと石畳が敷かれていた。
ちなみに結界灯を打ち上げているので足元くっきり。その細かに行われた作業まで見て取れた。
「職人がやってんのかよ?」
ただ石を敷いただけではなく、地盤を堅め、加工された均等の石を隙間なく敷いてあるのだ。日曜日のおとうさんが、ってレベルじゃねー。その道うん十年の仕上がりだぜ。
それが理由かは知らんが、石畳の道は百メートルちょい。喫茶店までは届いてはいなかった。
喫茶店には明かりが灯り、何人かの客がいるのが見えた。
「他も明かりがあるってことは、まだ暗くなってそれほど過ぎてないってことか?」
ブルー島に合わせた時計とかはないのでよくわからんし、飛んでいる場所の空を映しているので、住むとなったら時差ボケ必至だろうよ。
……オレのために作ったのに、一番オレのためになってねーとか自業自得すぎるぅ~……。
「まあ、海外旅行も楽しいしな。人生、遠慮なく楽しめだ」
村人だってたまには観光旅行にいきたいじゃない。
「ベーの場合、トラベルと言うよりトラブル行脚よね」
うっさいよ! そんなトラベルとトラブル似てるよね! 的な表現なんていらねーんだよ! つーか、誰もトラブルなんぞ求めてねーわ!
クソ! 世界で一番平和を愛してるのはオレなのに、神はそんなにオレが憎いのか!
「なんだかんだ言って、ベーは艱難辛苦を真っ正面から蹴飛ばすのが好きだしね」
メルヘンがそんな難しい言葉使ってんじゃねーよ! ってか、その表現が意味わからんわ!
メルヘンとの会話(?)に付き合ってられるか! と頭の上から強制離脱させ、ドレミの背に強制装着させてやった。しばらくプリッナイトしてなさい!
これと言って姉御に用はないが、だからと言ってよらないのも不義理。ましてやウパ子の件を教えないわけにはいかない。姉御、メッチャ強いからな……。
姉御の過去は知らないし興味もない。が、冒険者や吟遊詩人からいろいろ冒険譚、いろんな物語など聞いていると、昔の話や英雄譚は必ず出て来る。
世に数人しかいないS級の冒険者なんかは特に語られることが多い。
そんな話を他方向から聞いていると、なんかどこかの誰かに似てるな~って思って来る。
で、そんな話を冒険者ギルド(支部)で話すと場がツンドラ級に凍るわけよ。
なにがなんだかわからないが、勘がイイ者なら悟るでしょう。これ、この人の前で言っちゃダメなやつだってわかるでしょう。そして、やっちまったと理解するでしょう。
……世の中、触れちゃいけないことに触れたら殺されるより酷い目に合うんだぜ。皆、注意しろよ……。
ただ、知らないままでは今後の生活に関わる。全容じゃなくても触りだけは知っておかないと、空気の読めないバカが取り返しのつかないポカをやらかす。
オレの知らないところでポカするならお好きにどうぞだが、知るところにいるんだから好き勝手すんじゃねー、ボケがっ! と関わるしかないじゃない。
たぶん、事情を知るだろう村長を村の外に連れ出し、結界に結界を張り巡らせ、丁重にお聞きしました。
うん。あのときは大変だった。人は恐怖でハゲるって知ったよ。そして、本当にごめんよ、村長……。
遠くもない過去を振り払い、姉御の喫茶店へとお邪魔します。
「ってか、喫茶店の名前、岬とか単純すぎね?」
「単純な名前も覚えられないベーにだけは言われたくないわね」
ハイ、そうですネ。申し訳ありませんデス。
「岬、ここにしかないからいいのよ」
とはカウンターの奥で、フルー○ェを作る岬のマスター。そこはコーヒーじゃね?
「コーヒー人気ないのよ。わたしも好きじゃないし」
なんのための喫茶店だよ! コーヒーあっての喫茶店だろうが!
「この島、ほとんどが女の子だから甘い物が人気があるのよ」
あ、うん、そうでした。ほとんど女ならしょうがないよね。好きにしてください……。
喫茶店なんて馴染みがないから通うことはないし、コーヒーを飲むのに場所は問わない。そこがセイントマ○ダムだ。おっと。突っ込みはなしで頼みますぜ。
「中でもフ○ーチェが大人気ね。牛乳の消費が多くて大変よ」
なにやらブルー島でフルー○ェが大人気です。ってか、それはいろいろアウトなことがあるのでパフェとかケーキとかに流行をシフトしてもらえると助かります。
「ネラフィラが作るフ○ーチェって絶品よね! 毎日でも通いたくなるわ」
メルヘン。君の感想にはオレも同意だ。だが、世界は違えど守らなければならないアレやコレがあるのだ。それ以上は流行らせないでくれ……。
「うん。フ○ーチェうめ~!」
まあ、それはそれ。これはこれ。フルー○ェが旨すぎるのが罪なのだ。
「とりあえず、メロン味でお代わり!」
フ○ーチェよ、永遠なれ!
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