第1067話 ブルー島に帰宅
「プリッシュ号改、発進!」
メルヘン船長の号令でプリッシュ号改が空へと旅立った。
で、四日後、無事我が家に到着しました。
え? 道中は!?
とか言われても困ります。なにも起こらない平和な道中。語ることなんてなにもねーよ。景色を楽しみながらコーヒーをいただきましたってくらいだわ。
「村もすっかり冬だな」
雪が降ってもうっすら積もるくらいの地域なので雪国のような必死さはない。
薪は暖かいうちに集めてるし、冬を越せないような税の取り方はしてない。塩漬け文化や燻製文化もある。隊商の往来はなくなるが、馴染みの行商人は来てくれる。
……って言うか、オレが協力して来させてます……。
まあ、この地域では暖かい時期に飢饉がなければ冬はそれほど怖くないのだ。
ましてや日頃から備蓄しているオレにはのんびりできる季節。唯一、大変なことと言えば冬越し用の本を集めるくらいだろう。
「って、今年は忙しくて集めてなかったわ」
春から忙しいこと。スローライフが詐欺だと言われちまうぜ。
「ベー。庭に降りるね」
「ああ。よろしく」
ちなみにプリッシュ号改は、村が見えてから小さくさせてます。
館の前はなにもなかったのに、いつの間にか花壇なんかできてる。
まあ、今は初冬だから花は植えられてはいねーが、春になったら見事になるだろうよ。いや、誰がするかは知らんけど。
「ベー。プリッシュ号改専用の発着所を作ってよ。地面に降りるんじゃ味気ないし」
「あいよ」
別に苦もない作業なので作ってやることにする。
プリッシュ号改から飛び下り、体を元に戻して地面に着地。転移結界門の横にプリッシュ号改の発着所を土魔法で作る。で、ガリ──ではなく伸縮トンネルを作れば完成です。
プリッシュ号改が発着所につき、結界で繋留させた。
降りて来るメイドさんたちを眺めていたら、館からもメイドさんが出て来た。
……相変わらず無駄にメイドが多いところだよ……。
「お帰りなさいませ、ベー様」
ダークエルフのメイドさんが代表して挨拶し、他は頭を下げた。
「ああ。ただいま。なにか問題はあったかい?」
「問題らしい問題はありません。平和な日々でした」
それは羨ましい。オレの日々は波乱しかねーよ。
「それはなにより。親父殿やオカンは?」
「お館様も奥様も日々平和にお暮らしになっております」
なんだろうな。まるでオレがトラブルメーカーだと言われてるかのようだぜ……。
「そうか。ありがとな、うちを守ってくれて。これからも頼むよ」
伸縮トンネルからミタさんらが出て来たので、転移結界門の扉を開けてブルー島へと入った。
「こちらは夜か」
未知の技術で創られた箱庭には、昼夜を決められる機能があり、ボブラ村に合わせることも可能なのだが、オレはあえて現地に合わせている。
空飛ぶクジラ──ブルーヴィと箱庭は繋がっており、夜は寝るので静かにするようブルーヴィの時間に合わせてあるのだ。
「外灯までつけたのか」
別にうちの回りまでつけなくても、とは思ったが、出入口がここだけなのだから設置は必要か。
「ミタさん。オレは海にいくから家に灯りをつけておいてくれや」
まあ、いない間に他のメイドさんによって掃除はされているだろうが、家は住んでこそ命が宿るもの。その灯火をつけてください、だ。
「畏まりました。食事はいかがなさいますか?」
外の時間は午後の二時くらいだが、帰って来たらイイ感じに腹が減るだろうから用意しておいてもらう。よろしこ。
「ベー様。車を出しますか?」
「いらない。歩いていくよ」
最近、動いてないし、運動がてら歩いていくとしよう。
「わたしもいくー」
と、いつの間にか着替えたメルヘンが頭にパイ○ダーオン。ちなみに左右には、猫型になったドレミといろはがいます。
道には外灯が等間隔で設置され、歩くに不便はなかった。
「結構住んでるヤツが多いんだな」
至るところで灯りが見て取れ、メインストリートな感じのところは、ちょっとした繁華街みたいになっていた。
「ってか、電気は大丈夫なのか?」
これだけの灯りともなれば火力発電所並みの電気を生み出さなければ不可能だろうよ。
カイナなら火力発電所の一つや二つ、造るのは造作もないだろうが、そんな大がかりの施設は見て取れない。どうなってんだ?
まあ、それは後々で構わんか。オレ一人でブルー島を所有するにはデカすぎる。家と同様、島も人が住んでこそ命が宿る。のどかな感じが壊れない程度には発展したらイイさ。
「牛でも放って牧場化するのもイイな」
エリナに牛の番でも創ってもら……うのは止めよう。なんか変な牛になりそうだし。
やはり、南の大陸から仕入れるか。ラーシュの手紙では水牛っぽいのがいて、その乳を飲んでるそうだからな。
そんなことを考えてたらメインストリートに到着した。
「……店なんか建てて客なんて来るのか……?」
なにか観光地のように見えるのはオレだけか? ってか、宿屋まであんのかよ。しかも二軒!?
こんなときこそミタさん、なんだが、いないのなら仕方がないと、姉御がいる岬へと向かった。
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