第1063話 ただ待つのみ
園花館の玄関前に出現する。
玄関前にはダークエルフの男と武装した赤鬼さん、そして、サキュバスなメイドさんがいた。
「親父さんを連れて来た。服を頼む」
「畏まりました。ブラーニー様、お部屋にご案内させていただきます」
戸惑う親父さんの背中を押してやり、メイドさんに任せた。
よし。ミッションコンプリート。オレ、イイ仕事した! と満足して回れ右。さて、我が家に帰るべ。
「なに帰ろうとしてんの」
なにか後ろから頭をわしづかみされ、園花館へと引きずり込まれてしまった。止めて~!
「やっぱり逃げようとしてたよ、この丸投げ村人は」
さっきまで座ってた椅子にものでも置くように座らされた。チッ。
「なんでもかんでも丸投げするな! 最後まで面倒見るさね」
丸投げしてこそオレだ! とか主張したいところだが、空気が読めるオレは口を開かない。言ったらその何倍も返って来そうだから……。
プリッつあんのウザい蹴りを顔面に受けながら、出されたコーヒーをいただく。ってか、腹減ったな。そう言や、朝、食ったっけ?
なんか摘まみながら作業をしていた記憶はあるが、まともに食った記憶がない。まあ、いつものことだろうと言われたらそうなんだけどね。
「ミタさん。みたらし団子ちょうだい」
あと、炊きたての餅も。メルヘンを包んでプリ大福にしてやるからさ。
蝶のように舞うメルヘンを捕まえようとするが、蜂のように攻撃して来るのでなかなか捕まえられない。誰か殺虫剤持って来てー!
「静かにする!」
カイナが投げたカップがオレの額に直撃する。痛い~!
手加減しただろうが、魔神の肉体を持つアホ。五トンのものを持っても平気な体を超えて衝撃をもたらしやがった。
……なに、この理不尽は……!
「それでは、初めようか」
額を押さえて苦しんでるオレを無視して、なんか会議だかなんだかが始まった。オレ、本当に必要か?
いない子扱いされてるのに、オレがいる必要ってなによ? いじめか? 無視すんなら帰らせろよ。
誰も目を合わせてくれないので、いつの間にか出されてたみたらし団子をいただくことにした。あ、緑茶ちょうだい。
「まず、決めるべきは島の名前、そして、代表かな?」
珍しくも司会を担当してるカイナ。お前、そんなキャラじゃないだろう。
「どこかのバカがやらないからでしょう」
みたらし団子を食べるメルヘンがなんか言ってますが、意味がわかりません。まあ、知りたいわけじゃないのでサラリと流しますけど。
「島の名前はゼムさんたちで決めてよ。町を仕切るんだし」
「よろしいので? 皆様を差し置いて」
いぶし銀のおっちゃんが遠慮気味に口にした。
「ベーが関わっていることに上下も貴賤もないよ。あるとすれば仕事量の大小だろうね」
カイナの言葉に婦人が力強く頷いた。うん、まあ、それはオレも認めよう。できるヤツに押しつけてるし。
「島の名前はゼムさんに任せるとして、代表を誰にするかだけど、やっぱりレイレットさんだよね。風格あるし、荒事にも慣れてるしさ」
だったら、マフィアだってカイナーズでもイイじゃねーか。なにが違うんだ?
「そうですな。あっしもそれでよろしいかと」
「わたしも構いません」
いぶし銀のおっちゃんも婦人も承諾した。なぜよ?
まあ、オレにも異論はねーが、なぜ皆がミタパパが承諾されるかがわからねー。
「わたしでよろしいのか?」
ミタパパもわかってないようで、片眉をしかめてカイナに尋ねてる。
「ベーが選んだ時点で決まったようなものだけど、レイレットさんは領分を侵さないし、集団を纏めて来た経験もあるからね」
それは、マフィアもカイナーズも同じだろう。なにが違うんだよ。
「マフィアは裏で暗躍するもの。うちは表に出て力を示すもの。その中間に立てるのはレイレットさんしかいない、ってことさ」
なるほどな。言われてみたら確かにだ。カイナのくせによく考えているじゃねーか。ってか、そう言うことができんならオレを巻き込むなや。
「言っておくけど、すべてはベーがいてこそ。ベーがいなけりゃこんなにスムーズには動かないからね」
カイナのジト目をサラリと流す。
「わかった。わたしが代表となろう。だが、わたしはベー様より預かった園花館を優先させてもらうぞ」
「あっしはそれで構いやせん」
「カイナーズもそれでいいよ。ただ、代表を立てることはさせてもらうよ。この島の顔なんだからね」
「では、レイレット様とゼルフィング商会は分けたほうがよろしいですね」
主要メンバーが話し合い、島の取り決めが築かれていく。
オレも島のことに口を出す気はないので右から左へと聞き流す。
つーか、もう島のこととして話が進んでんだから解放して欲しいんだけど。
そう声を大にして言いたいが、空気を読め、空気になることができるオレは明鏡止水(現実逃避>。ただ、時(嵐)が過ぎるのを待つだけである。
あー今日の夕食なにかなぁ~?
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