第1057話 登場です!

 住めば都のプリッシュ号。四日も寝泊まりしていると、愛着が湧くものである。


「……完全にベーの部屋になったわね……」


 散らかった部屋を見て持ち主が呆れている。


 そこに住んでる君も同じでしょうが。暖炉の上、なんかもうリゾート地になってるじゃん。


 プリッスルだかプリトラスだか知らんが、その周りにあるのなによ? 


「リゾートプールを作ってもらったの」


 誰にだよ? とか問う気力もなし。そりゃよかったねと流しておく。


「そうだ。使ってないプリッスルだかプリトラスを一つくれ。管理所に使うからよ」


 意外とプリッスルだかプリトラスはライフライン(?)がしっかりしている。中継島にはちょうどイイだろう。


「じゃあ、プリトラスをあげる」


 と、無限鞄からプリトラスらしきものを出して、放り投げた。雑だよ、君。


「言っておいてなんだが、イイのか?」


 嫌だと言われると思ったんだがな。


「構わないわ。いっぱいありすぎて維持できないから」


 それはつまり、維持できないくらい持ってるってことね。了解了解。


「ミタさぁ~ん。カモ~ン」


「はい。お呼びでしょうか」


 どこぞの宇宙刑事が蒸着するより速く万能メイドが登場する。


 ……宇宙メイド、ミターンとかで誰か物語を創ってくんねーかな。オレ、全巻揃えちゃうよ……。


「なにか?」


「いえ、なんでもありません……」


 そっと目を逸らす。


 熱い視線が側面に注がれるが、そんなものに負けるオレじゃねー! けど、話が続かないのでなにもなかったように振り向く。


「ここに住んで管理してもイイってヤツを集めてくれ。いなかったらそれでイイや」


 こんな辺鄙なところに住めと言うオレのほうが悪いので、いなかったら素直に諦めます。そして、ご隠居さんにポイします。


「あたしが選んでもよろしいでしょうか?」


 珍しく問い返してくるミターン──ではなくミタさん。どったの?


 なんて訊き返そうとしたが、あまりにも真剣な目を見せるので飲み込んだ。


「ミタさんの判断はオレの判断。その責任はオレにあり、オレが決断したのだから好きにしたらイイさ」


 それが例え私利私欲で動いたとしても、オレはそれを受け入れ、責任は取るさ。


「ありがとうございます」


 一礼して下がると、代わりにいつもになった三人のメイドが入ってきた。


「ベー様。カーチェ様より伝言で、先に屋敷に帰るそうです」


 あ! タケルたちのことすっかり忘れったわ!?


「あ、うん。オレが帰るまで休んでろと伝えておいてくれや」


 今はこちらに集中したいんでよ。


「畏まりました」


 と、一人が下がり、二人が残る。いや、別に用はないよ。


「ベー。お昼だよ?」


 あ、お昼だから残ってたのね。じゃあ、昼食にしましょうか。


 場所を食堂……って呼んでイイかわからない、シャンデリアが眩しい食堂へ移る。


「今日は海鮮カレーです」


 場にそぐわないことこ甚だしいが、文句のつけようがないのでありがたくいただきます。


「カレーって美味しいよね!」


 なんとも美味しそうにカレーを食べるメルヘン。なんだかやるせない気持ちでいっぱいだが、カレーはメルヘンをも魅力する、ってことで納得しておこう……。


「そうだな。この島の名物にするか」


 なるかどうかは知らんけどよ。


 のんびりゆったりカレーを食ってると、ミタさんが戻ってきた。なんかダークエルフの男を連れて。


「お食事中、申し訳ありません。管理者を連れて参りました」


 ミタさんらしくもないな~と思いながら、ダークエルフの男に目を向ける。


 たぶん、数百年は生きているだろう気配と、戦士のような鋭い目が印象的だった。


「どこの将軍さまよ?」


 そう問うと、ミタさんも男も驚いたような顔をした。


「どうしてわかりました?」


 渋い声で尋ねてくる男。いや、見たまんまじゃん。他にどう見えるって言うんだよ。逆に訊きてーわ。


「そんな目をした堅気かたぎがいるか。魔王だと言われても納得するわ」


 まあ、引退したような感じだから、魔王ちゃんとか勇者ちゃんでも勝てそうな衰えが見えるがよ。


「さすが、あの魔神を義兄弟と呼べる方です」


 カイナは魔力さえ気にしなければ怖い存在ではねーぞ。まだ、ご隠居さんのほうがおっかねーわ。


「初にお目にかかります」


 と、片膝をつき、なんか騎士っぽいポーズをとる将軍。なによ、突然?


「わたしは、レイレット・オリバー。ミタレッティーの父でございます」


 なんと、ミタパパ登場です!

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