第1056話 モヤモヤ

 とりあえず、四種類のガラスドームを作ってみた。


 茶色の日本酒。緑色のワイン。透明のウイスキー。あと、いろいろな瓶をバラバラにして足したものと、あまりパッとしねーな。


「ってか、海典の樹って太陽の光を浴びてイイものなのか?」


 レイコ教授、どうなのよ?


「大丈夫だとは思いますよ。海に生るとは言え植物。陽の光なくしては生きられないと思いますし。それで枯れたらどれだけ弱いんだって話です。亜種とは言え世界樹なんですから」


 そりゃそうか。世界を支えると言われるほどなんだから。ましてや海の中に生るまでのもの。太陽の光で枯れるなら海に入った時点で枯れてるわ。いや、よく知らんけど。


「なら、透明でやってみるか」


 なにか異変が出たら結界で暗くすればイイんだしな。


「プリッつあん、これを硬くしてみてくれ」


 緑色のをつかんでプリッつあんに頼んでみる。


「? わかった」


 触らなくてもイイようで、緑色のドームを見詰めた。


「──はい。硬くしたわよ。どのくらい硬くなったかはわからないけど」


 硬度とか言う概念を知らなければ、どのくらいとはわからんわな。


 コンコンと床で叩いてみる。


 結界に伝わる感じからして鉄並みにはなった感じがする。なぜわかるかはこれまでの経験からです。


「重さも大きさも変わった感じはしねーな」


 物質の密度が高まって小さくなったってことなく、なにかの力が加わった感じでもなし。ただ、結界や伸縮能力を使ったような感じがあるだけ、か……。


「今度は柔らかくしてくれ」


「わかった」


 と、また緑色のドームを見詰める。


「なったわよ」


 先ほどと同じく二秒程度、か。伸縮能力と変わらん感じかな?


 緑色のドームをつかむ指先に力を入れると、粘土のように潰れた。


 グニョグニョにして丸めてみるが、粘土のように混じることはなく、ただ変形した感じだった。


「できるのは形を変えるだけか」


 まあ、それはそれで使い道はあるから無駄能力とは言わないが、そう欲しいと思える能力ではないな。


「柔かくなったの解けるのか?」


「う~ん。硬くすれば元に戻るかも」


 それも伸縮能力と同じか。元を知っておかないとエライことになるな。


 ……特に背とか体型とか、女にするときは細心の注意をしなければ命にかかわりそうだ……。


 プリッつあんができるならオレにもできる。とやってみたらアラできた。それでイイのか?


 とは今さらか。あるなら使えるようになれ、だ。


 ……オレの能力もプリッつあんの能力も無自覚で使ったら大惨事だからな……。


「硬いのは硬度でイイが、柔らかいのはなんて言うだ? 柔度か?」


 まあ、それでイイか。オレたちしか使えない能力なんだし、他人にはわからんのだから。


「使いこなせるのは徐々に、ってことで、まずは崩壊しそうなところを排除するか」


 さて。怪獣どもはどうしたかな~?


 と下を覗いてみる。


「まあ、そんなもんか」


 綺麗に、などは望んでなかったし、好き勝手にやるだろうと思ってたので、これと言った感慨はない。


 まさに怪獣が戦ったような跡に飛び降りる。


「ほんじゃやりますか」


 崩壊しそうな箇所を土魔法で取り払い、とりあえず無限鞄に仕舞う。


 それだけで時間がかかってしまい、その日はプリッシュ号改に宿泊することにした。


「ってか、クルーザーより充実してね?」


 快適に暮らせるようにと、それなりの広さにはしたが、どこぞのスイートルームも顔負けの部屋が四つもありやがり、風呂も総大理石で造られていた。


 どんな技術が使われてんだよと突っ込みたいくらいの洗浄トイレが四つもあったりと、なかなか摩訶不思議な空間となっていた。


「誰が維持してんだよ?」


「この子たちよ」


 と、メガネをかけたドレミがいました。あ、勝手に連れていたのがいたね。つーか、イイように使ってるね、君は。


 ちゃんと十人くらい余裕で食べれる食堂もあり、並べられた料理からして厨房もしっかりしたものがあるとわかる。


 ……なんとなく、プリッつあんが気に入ってるのがわかるな……。


 プリッつあんのものはオレのもの。オレのものはプリッつあんのもの。ってな暗黙の了解があるかは知らんが、ドレミが管理しているなら遠慮は不要と、食うもの食ったら適当に部屋を選んでベッドにダイビングする。


「もー! 寝るならお風呂に入ってよね!」


 と、なぜかプリッつあんがいました。いや、なんでよ?


 リ○ちゃんキャッスルみたいなのを自分の無限鞄から出し、暖炉の上に置いた。


「ちゃんとお風呂に入ってよ!」


 そう言い残してリ○ちゃんキャッスルに消えていった。


「…………」


 しばし考えていたが、止めた。答えなど出そうにもなかったから。


「風呂に入るか」


 このモヤモヤを洗い流すために風呂へと向かった。

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