第1055話 怪獣大決戦

「ゲスい波動を感じるわ」


 ニコニコ顔でプリッシュ号改に戻ったら、メルヘンが蔑んだ目で出迎えてくれました。


 アハハ。ヤダなー。ここら一帯幸せの波動で満ちてるのに、なに言っちゃってんでしょうね? そんな目をしてたら幸せが逃げちゃうぞぉ~。


「これまでにないくらい、よからぬことを考えている顔ね」


 ヤレヤレ。困ったメルヘンさんだ。この空のように広い心を持たないと幸せな未来はこないんだからね!


 そんな心の狭いメルヘンは無視して、ドームを作りましょうね~。


「あ、ミタさん。この下、崩落の恐れがあるからカイナーズの連中に教えておいてね」


「畏まりました。そう伝えます」


 ってか、まだ島を探索しきってないのか? 大きいとは言え、一日あれば回れるだろうに。


「なんか問題があったのか?」


 ミタさんの表情に変化はなかったが、一言増やしたことに違和感を覚えた。


「実は、木の魔物に邪魔されて、まだ半分も探索できてないようです」


 木の魔物、か。植物の魔物はよく見るが、木ってのは初めてだな。どんなのだ?


「待ち伏せ型で命を吸い取るそうです」


 まあ、よくあるタイプか。動くほうが珍しいしな。


「レイコさん。魔木って確か、魔大陸に生えてたものだよな?」


 前に先生がそう言っていたような……。


「はい。ですが、ある時期を境に世界に拡散されたようです」


「天地崩壊か」


「でしょうね。その環境では発生しない植物が突然発生したり、生き物がいたりと、世界各地で確認してますから」


「ここにも箱庭があった感じだな」


 いろんな環境の箱庭があったことからして、世界各地から命を集め、そして、世界各地へと箱庭を放ったんだろう。


「死人は出てねーんだろう?」


「はい。苦戦はしているようですが、死者は出しておりません」


「それはなにより」


 カイナーズのヤツらが死ぬようなら島全体を消毒せんとならんからな。


「ピータとビーダ、いるか?」


 ジャケットの内ポケットを突っ突いてみる。ウパ子と遊んでた記憶はあるが、それからの記憶がございません。戻ってる?


「ぴー!」


「びー!」


「はーい!」


 ん? なんか一つ多くね?


 ジャケットから金色とピンク色の生き物が出てきた。


「……ウパ子まで入ってたのかよ……」


 ってか、いつ入ったんだよ? まったく気がつかんかったわ!


 意外と俊敏なウパ子がオレの体の上を駆け回り、肩に乗ったら水のビームを吐き出した。


 気球部とゴンドラを繋ぐ鎖に当たり、纏わせている結界が微かに切られた。


「こわっ!」


 なんだこいつ? メッチャあぶねーもん吐き出しやがったよ!


「まあ、見た目はアレですが、神話に出てくるような竜ですからね」


「そんな竜がなんで魚に食われんだよ!」


 つーか、それを倒しちゃうここの方らさらにヤバいもんじゃねーか!


「たぶん、数が多かったでしょうし、何匹かは倒していると思いますよ。海中を探せば骨と魔石があるはずですよ」


 ミタさん、よろしこ!


 目を向けると、畏まりましたと頷いた。


「ピータとビーダ。島の魔木を食い尽くしてきてくれ。ミタさん。カイナーズを下がらせてくれ」


「畏まりました。速やかに撤退させます」


 はい、よろしこです。


「ピータビーダ。あと、ウパ子。頼むな」


 プリッシュ号改から放り投げ、三匹を五メートルサイズにデカくする。もちろん、崩壊しないように結界を施しているので大いに暴れちゃってくださいな。


「ぴー!」


「びー!」


「シャアァァァ!」


 最後のは水のビームを吐いているのでしょう。


「なんか怪獣大決戦みたいなことになってるわよ」


 それも自然の理。ちっぽけな人がどうこう言える立場じゃねーさ。


 さて。怪獣大決戦とやらが終わるまでに作っちゃいますかね。


 無限鞄から酒の空瓶を出して、粉々にする。


「ステンドグラスみたいなのできるかな?」


 まあ、とりあえずやってみるかと、錬金の指輪を発動させた。

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