第1016話 ヤベー!

 大老どのから造船所のことを聞いていると、応接室的な部屋のドアが叩かれ、博士ドクターとフミさん、あと、長官が入って来た。


 長官とはバイブラストから来た長官っぽい人ね。名前は知らん。


「どうしたい、雁首揃えて?」


 それはなんの集まりです。


「わたしは、ベーさんにお願いです」


 と、博士ドクター


「わたしは呼ばれて来ました」


 と、フミさん。


「わたしは、帝国へいく打ち合わせを」


 と、長官さん。


「んじゃ、オレは博士ドクターでプリッつあんはフミさん。長官は大老どのとだな」


「いや、そのすべてにお前は顔を出せ!」


 なんで? 指揮するのは大老どのなんだし、受け入れ体制は長官。オレいらないじゃん。二人で話し合えよ。


「フミにはわたしから言っておくわよ。フミ。プリッシュ号を可愛く改造して欲しいの」


「では、ヴィアンサプレシア号のドックへいきましょうか。あそこなら改造できますので」


 プリッシュ号がなんなのかわからないにも関わらず、当然とばかりに対応するフミさん。カッケェェェェッ!


「ベー。帰るときはちゃんと声をかけてよ」


 覚えてたらな。


「ミタレッティー。ベーをお願いね」


「はい。お任せください」


 オレ、まったく信用ねー。って当然だね。だから反論も反応もしないんだからっ!


 プリッつあんとフミさんが出て行き、博士ドクターと長官は、ミタさんがどこからか出してきた椅子に座った。ここに茶出す係りはいないのか?


「で、なによ? まずは誰からよ?」


「なんでそんなに不満げなんだ? なにもしてない男が」


 決まってんだろう。なにかさせられるからだ。


「では、簡単な用件のわたしから」


 多分、簡単ではないだろう博士ドクターが一番に口を開いた。まあ、なによ?


「ドックを一つ増やしてください。小人族サイズで。あと、伸縮トンネルをつけてください。大型船でも出入りできるように」


 あん? ドックを? なんで?


「わたし専用のが欲しいのです。ヴィアンサプレシア号のドックを借りてたのですが、帝国に行くとかで追い出されたんです」


「なにも普通のドックを使えばイイじゃん」


 知らぬ間に二つもあったじゃん。充分だろう。


「あれはあれでよいのですが、ヴィアンサプレシア号のドックは作業機器が充実して使いやすいんですよ。特に重力がなくなるのが最高です」


 そう言や、そんな機能もつけたっけ。オレは力があるから使わなかったのだ。最初は楽しいが、ふわふわしてやり難いのだ。


「んじゃ、ヴィベルファクフィニー号のドックをやるから残りは頼むわ。ただ、今回のは開閉式の屋根から出入りするようにしたからクレイン造船所には置けねーと思うぞ」


 オレの部屋で作ることを考えて作ったものだからな。


「それは大丈夫です。今ならクレイン造船所を拡張しても文句を言う方はいませんからね」


 なんか大丈夫じゃねーような気がしないではねーが、そんときは別なところに場所を用意してやればイイ。なんならブルー島でもイイ。そう言うこともあろうかと選んだ箱庭だからな。


「じゃあ、設置は任せるよ」


 無限鞄からドックを出す。大きさはシングルベッドくらいだが、博士ドクターも無限鞄は持っている。問題はねー。


「任せてください!」


 なんか変なスイッチが入っちゃった感じの博士ドクターがドックを無限鞄に入れて飛び出して行った。


「よかった。簡単な話で」


「簡単ではないわ! また造船所の改築に金がかかるだろう! それに、これ以上飛空船を造られても置き場がないわ! あの御仁、十日で一隻造ってしまうのだからな」


「十日で一隻って、よく材料あるな?」


 どんだけ資源を食い潰してんだよ。


「材料などほぼ無限だわ。伸縮トンネルを使えばな」


 おや。それを考えるヤツがいたか。賢いのがいるじゃねーか。


「でも、金や銀は制限かけてるから注意しろな」


 さすがにそれやっちゃうと不味いからさ。もちろん、オレもやらないよ。非常時以外は、ね。


「それはやった。まったく、周到な男だよ、お前」


「オレは渡してイイものだけ渡してんだよ」


 いえ、ウソです。金や銀を規制したのはたまたまです。ヤベー。今度から注意しなくちゃ!


 と、内心の慌てふためきを押さえ込みながら優雅にコーヒーをいただいた。

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