第983話 そう、それが──

 その後、ミミッチーは美味しくいただきました。


 ってことはなく、ただ無駄飯くらいの梟には風見鶏がお似合いだと、建物の天辺に追いやった。


 ……ほんと、使えねー梟だぜ……。


 ドレミ軍団の応援により、なんとかおもしろいもの仕分けが終わり、無限鞄へ仕舞うのも一時間で終了した。


「なんだかんだで四日も費やしたぜ」


 箱庭と言い、ここと言い、やたらと時間を費やしてしまったな。帝国での計画が狂いまくりだぜ。


 まあ、自業自得なんだが、こうも狂うと修正もできん。バイブラストでの計画も最初から練り直しだわ。


「ベー。中は終わったよ~」


「おう、お疲れさん」


 いや、プリッつあんもプリッ隊にやらせて大して仕事はしてないが、名指揮官ぶりを見せたので、ミミッチーよりはマシだ。


「んじゃ、骸骨嬢のところにいくぞ」


「見た目で相手の名前を決めるベーが骸骨って言うからには骨だけの人なの? あと、嬢ってことは女の人?」


「ドレスを着た骸骨だな」


 日頃からインパクトのあるヤツらを見てるからか、あまり細部まで記憶に残ってない。つーか、そのまま記憶から消えて欲しいわ。


「訊いても無駄だろうけど、名前は?」


「確か、ニンジンとかカラメルとか言ったかな?」


 呼び方の感じではキャラメルかな? 意味は前者だったような気がする。


「キャロリーヌですよ、ベー様」


 あ、うんうん! それだそれ! これまでにないくらいかすってんじゃん! オレ、やるぅ~!


「……喜ぶほどのことでもないし、喜ぶところがわからないけど、しゃべる骸骨さんなのね……」


「はい。驚きですよね」


 ……幽霊がしゃべるのと骸骨がしゃべるの、どっちが驚きなんだろうな? 誰かオレに教えてくれや……。


「まあ、なんでもイイだろう。いけば会えんだからよ」


 下に通じる穴に空飛ぶ結界を創り出し、飛び乗った。


「──ミミッチー! いくわよー!」


 呼ぶなよ。そのまま野生に帰してやろうと思ってたのに。


「はぁーい!」


 まあ、イイ。ミミッチーの世話(してんのはオレだけどな!)はプリッつあんに任せた。


 空飛ぶ結界を操り、下へと降りる。


「そういや、他のドレミはどうした?」


 腰につかまる猫型ドレミ(オリジナル?)に尋ねる。


「半数は戻しました。公爵様やミタレッティー様にご連絡を入れるために」


 あ、うん。連絡は大切だよね。お気遣いありがとうございます。


 下へと到達して、あとは歩きで非常用通路へと向かう。


「なんか綺麗に、ってか、瓦礫が排除されてんな?」


「いろはたちが退けました」


 Gがごとく蠢くいろは団。敵にしちゃいかんヤツらだな。


 はっ! うちの国にはいないがラーシュのいる大陸にはいるそうだし、先に送り込んで絶滅させるのも手だな。勇者ちゃん、なるべく早く里帰りしてくんねーかな。あ、その前にいろは撲滅団を組織せねばならんな。


 なんて真剣に考えてたら非常用通路に到着していた。


「なに真剣な顔で考えてたの?」


「Gを──いや、害虫を滅ぼすことを考えてた」


「ベー、虫嫌いだったっけ? ミミズや丸虫、平気で触ってたじゃない」


「まあ、平気は平気なんだが、サプルが大嫌いでな、ムカデとか見ると炎を放つから危険なんだよ」


 田舎暮らしだからミミズや丸虫を見ただけで暴走はしないが、Gなら完全に暴走どころか破壊神になりかねない。いや、なると断言してもイイだろう。


「あー、確かに。サプル、ハエを殺すのに壁焼いてたからね」


 うちのはすべてに結界を施してあるから燃える心配はないが、まだ結界を上手く操れない頃は毎日がヒヤヒヤもんだったぜ。


「ん? 非常用通路がねーぞ?」


 確か開けっ放しで戻ったよな。


「一定時間過ぎたら勝手に閉まるようになってる」


 ほーん。ちゃんと考えて造ってあんだな。


「んじゃ、また開けてくれ」


「パージメントオープン」


 半球形のものが上昇して螺旋階段が現れた。


「ミミッチー、先にいけ」


 梟だけどカナリアになれ。そして、なんかある前にオレに知らせよ。


「ミミッチーお願いね」


 なぜかオレを見るミミッチー。表情筋なんてないのに、渋い顔をしているのがわかった。だが、プリ様のご命令。さっさといけや、ほれほれ。


 ミミッチーを蹴って螺旋階段を下りさせた。


 数十段下りたところで安全だなと判断し、オレも螺旋階段へと足を踏み出した。


 素材不明な螺旋階段を下ること三百段以上。深過ぎね!?


「ミミッチー、まだなのか?」


「ミミッチー、下りるの初めて。知らない」


 そこからさらに数百段。疲れたのでマンダ○タイム。あーコーヒーうめーと体力を回復させる。


 よしと下りるが、まったく下に着かねー! どうなってんだよ、こん畜生が!


「ベー。飽きた」


 オレもだよ。だが、ここから上に戻るのも拷問だ。なら希望(?)がある下に向かうほうが建設的だわ。


 もう根性で下りてると、なにかガコンと音がした。なによ?


「狭間に着いた」


 数十段先をいくミミッチーがそんなことを言った。


 さらに下りると、壁がなくなり、前に嗅いだ下水道の臭いが鼻をついた。


「臭っ!」


 プリッつあんには辛いようで、オレの頭の上で悶えていた。


 オレはまだ大丈夫だが、どうしても嗅ぎたい訳じゃないので結界を纏った。


「あ、ヴィどの! やっと来たでごさる!」


 その声に手すりから顔を出すと、数メートル下のリビング島にエリナと骸骨嬢、そして、見知らぬ白いエルフがいた。誰!?

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