第982話 格付け

「ベー。外のなーに?」


 詰め込まれたおもしろいものを見聞していると、プリッシュ号の内装替えが終わったのか、プリッつあんがやって来た。


「外の?」


 なんのことだ?


「なんか水槽にいろんなものが入ってたんだけど」


「あ、ああ、あれな。あれは実験してんだよ」


 見聞に夢中になって忘れったわ。


「なんなの、あれ?」


「人魚に売れそうなものを海水に浸けて様子を見てんだよ。並のものじゃ海の中に持って行けんからな」


 結界を纏わせれば問題はないが、そればかりではあんちゃんも困るだろう。結界発生具の貸し賃として一日金貨四枚もらっている。


 まあ、オレはタダでも構わないんだが、それでは示しがつかないと、金貨四枚で貸し出しているのだ。


「どうだった? なんかふやけてたり錆びついてたりしたか?」


 早く結果を知るために塩分濃度と、錆びた鉄棒を入れて置いたのだ。


「そこまで見なかったけど、これと言って変わりはなかったわよ。なんで水に浸けてるんだろうと思ったし」


 やはり時間を進めないとわからないか? まあ、一日浸けて変化なければ大丈夫だろう。ダメなら結界を纏わせればイイんだしな。


「了解。プリッシュ号はもうイイのか?」


「うん。中は終わったわ」


 外をなんかやって欲しそうな感じだったが、今の状況を読んでか、口にすることはなかった。成長しやがって……。


「なら、中の家具類や絨毯、人形はプリッつあんの無限鞄に入れてくれ。このままじゃ終わんねーよ」


 十二時間ぶっ通しでやってるが、全然終わる気配がねー。つーか、腹減りました!


「わかったー。ファーミは家具ね。ソーミは絨毯。ラーミは人形よ」


 メガネなドレミたちに名前をつけたメルヘンさん。もうあなたの手下ですね。了解です。


 建物に消えて行くドレミ軍──ではなくプリッ隊。なんかプリン体みたいだが、まあ、なんでもイイわ。食事にしよう。


「ミミッチー、肉食べたい!」


 どこにいたのか、突然現れた役立たず。ニートはデッカイねーちゃんだけで間に合ってんだよ。


「肉ー! 肉ー! 肉ー! 肉食わせろー!」


「突っつくな! 日に日に図々しくなりやがって! 焼き鳥にすんぞ!」


「ミミッチー、鳥も食える。岩窟鷲、ちょー好き!」


「共食いだろ!」


「ミミッチーはミミッチー。ミミッチー以外は食べられる」


 おっかねー梟だな。油断したら食われそうだ。


「大丈夫。ベーは食べない。プリさまも食べない。なんか不味そうだから」


 食わないのなら不味かろうがなんだろうが構わんが、なぜプリッつあんがさま呼び? お前らの力関係どうなってんのよ?


「ミミッチー、黒羽妖精苦手。あいつら、ミミッチーいじめるから。でも、プリさま、ミミッチーいじめない。食べ物くれる」


 いや、くれてんのオレだよね! プリッつあん、一回もあげてないよね! まさか、プリッつあんが頂点だと思ってんのか!? 


 クソ! そんな格付け、オレは絶対に認めねーぞ! オレは宿主だぞ! 


 ………………。


 …………。


 ……。


 いや、それだと下だよ! 寄生されてるほうが弱いよ! なに言ってんだオレは! そ、そうだ。オレたちは共存体。どちらが上なんてないのだ。


 オレたち皆平等。格付けなんて獣がすることだ。知的でインテリジェンスな村人は、人を獣を上にも下にも置かない。だって命は平等たもの!


「ベー、肉ー!」


 ──ふべし! 


 ミミッチーに蹴られ、建物にぶつけられてしまった。


「なにすんじゃい!」


「肉ー! 肉ー! 肉食わせろー!」


 テメーの羽根むしって焼き鳥にしたるわ! と、本気で思ったが、腹減ってむしるのもメンドクセー。まずは食事だ。


 無限鞄からオーク肉のシチューを出し、トマトを何個か出した。


「美味しい~!」


 本当になんでも食う梟だ。つーか、熱々の鍋に嘴突っ込んで平気なのか? まあ、問題なさそうだが……。


 鍋一つでは足らないだろうから、もう一つ出して、自分用に皿に盛る。


「肉食え。ほれ」


 シチューは飽きないが、オーク肉は飽きたのでミミッチーの鍋に放り込んでやる。


「この肉なに? メッチャ美味しいんですけど!」


「オークって言うブタだよ。バイブラストにはブタいなかったっけ?」


 そう言や、いるって聞いたことねーな。


「ブタ? 知らない」


 やっぱいないのか。じゃあ、なんの肉が主流なんだ?


「角が大きいヘブランって生き物を食べてる。でも、ミミッチーは好きじゃない。臭いから」


 そりゃ血抜きしてねーからじゃねーのか? 


「ヘブランか。興味あるな」


 地上に出たら狩りにでも出てみるか。一頭仕留めてサプルに料理してもらおう。旨けりゃヘブランも売ってもらおう。


「ミミッチー、食ったら手伝えよ。働いたらもっと旨いもの食わしてやるからよ」


 まあ、いないほうが捗るような気がしないでもないが、役に立たねーニートにタダ飯食わせるほどオレは優しくねー。食った分は働かせるからな、覚悟しろ!


「……働きたくないけど、美味しいもの食べたいからガンバる……」


 んじゃ、いっぱい食え。ほら食え。もっと食え。オーク肉はすべて食い尽くしやがれ!


「ミミッチー太らせてどうするの!?」


 それは食ってからのお楽しみだ。オラオラ、もっと食いやがれー!

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