第881話 なに事!?

 今回は、自分の部屋へと転移した。


 久しぶりの我が家。玄関から帰りたかったが、なんかメンドクセーから自分の部屋にしたのだ。


「マスター。このままお風呂へ向かいますか?」


「ああ。一汗流してくるわ」


 あと、一緒に入ってこないでね。オレは一人で入りたい派……ではないけど、スクール水着を着たスライムと入る趣味はないんですから。


 部屋を出ると、なんか館内がしーんとしていた。


 時間的には午後の三時過ぎ。仕事が一段落する頃(いや、知りませんけどねっ)。休憩でもしてんだろうと、構わず風呂場へと向かった。


 男が少ない我が家。風呂には誰もおらず一人風呂……と思ったら、ピータとビーダが湯船に浮いてました。


「ぴ~」


「び~」


 なんか気持ちよさげな二匹。地竜って風呂に入る生き物なのか?


「気持ちイイか?」


「ぴ~」


「び~」


 気持ちイイのはわかったから、腹を見せるのは止めなさい。魚が死んでるようにしか見えないから。


「しかし、お前らが風呂が好きとはな。別荘──じゃなく、水輝館みずきかんでは入ってなかったのに」


 水輝館の風呂もサプルが入るに当たり、館並みに広くした。薪風呂で温度も変わらないんだがな?


「たぶん、水質が違うのでは?」


 と、レイコさんの声が風呂場にこだました。


 レイコさんの数ある能力(?)が一つ、言霊飛ばし(テキトーです)。これは、離れた場所から言霊を飛ばすものである。まんまな説明でメンゴ。


 ちなみに壁に耳ありって能力(?)もあります。


「水質? そう違いがあるとは思わんが?」


 軟水とか硬水といった話か?


「この館の水ってどこから引いているんですか?」


「陽当たり山の中腹に造った人工池からだよ」


 山に住む者は、湧き水や清水を利用してしているが、ここら辺は雪が少なく春になると雨が降らなくなるので、たまに水不足に陥る。


 それを解消するために、陽当たり山に人工池を造り、土魔法で雨水が池へと流れるようにした。


 一応、小川に見せるようにしてあるが、実は結界を敷いて濾過しているのだ。


「……村人のべー様がそれだけの知識と技術があることが不可解です……」


 まあ、前世の記憶があり、知識があるからな。とは言わず、肩を竦めるだけに留めた。親しき仲にも礼儀あり、だからな。


「そう言えば、館の中がやけに静かですよね」


 オレが答える気がないとわかったのか、レイコさんが話題を変えた。ってか、オレ、風呂ではのんびり浸かりたい派なんですけど……。


 とは思ったが、確かに静かだな。誰もいねーのか?


「マスター。館の者は全員外に出ているようです」


 と、脱衣所からドレミの声。つーか、脱衣所からも出てなさい。脱衣所込みで男湯なんだからさ~。


「外に? バーベキューでもしてんのか?」


 親父殿がバーベキューを気に入り、よくやっていると、サプルから聞きました。


 ……なんだろう。自業自得なのはわかってるが、なんか涙が溢れてくるや……。


 深く考えると溺死しそうなのでスルー拳、千倍! オレは気にしないもんっ!!


「バーベキューと言うよりお祭りと言ったほうが適切かもしれません。屋台がいくつか出ております」


 はぁ? 屋台? なにがどうなってんだよ?


 物凄く気になったので、まださっぱりはしてないが、風呂から上がることにした。


 着替えて外に出ると、確かに祭りのような賑わいを見せていた。なにがどうなってんのよ!?

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