第799話 プライレッドアローズ
「なぜこうなった!?」
「ベーがアホだからじゃない」
とりあえず、アホなことを言うアホメルヘンを遠くに投げる。
「なぜこうなった!?」
再度問うた。
誰によ? って疑問はオレが聞きてーよ。ほんと、なにがどうなったんだよっ!
「そして、プライレッドアローズってなによ!?」
そう書かれた看板を見て力の限り叫んだ。
「プライレッドアローズ。つまり、魔族の言葉で『赤い大地を走り抜け』って意味さ」
さも当然のように答えるカイナ。つーか、お前か、この騒動の原因は!
今を遡ること二時間前。公爵どのがラリー車を選んでたら、なぜかカイナが現れた。
「ラリーか。おもしろそうだよね!」
突然現れるのはいつものこと。気にもせず「そうだな」と答えると、また突然消えた。
なにしに来たんだ、あのアホは? とは思ったが、あいつの行動原理を追求しても疲れるだけ。サラッと流せと頭から放り出した。
で、公爵どのがラリー車を幾つか選び、それ用の服やら装備やらを揃えて魔大陸に戻ると、なんか車がいっぱい並び、レーシングスーツにヘルメットを被った魔族の方々や作業着を着た魔族の方々で混雑し、ヘリコプターやらプロペラ機が空を飛んでいたのだ。
「ほんと、ベーは楽しいことを思いつく天才だよね」
いや、オレはここまでは求めてねーし、楽しくしてんのはお前だろうが! ってか、もうオレの手を離れているよね?
主催者はカイナ。オレらは参加者だよ!
「……お前は事を大きくする天才だよ……」
自由気ままがここにもいたよ。いや、自由気ままを体現したヤツだわ。
「アハハ。ベーに言われたら光栄の極みだね」
別に褒めてるつもりもなければ賞賛してるつもりもないわ。つーか、嫌味を言ってんだよ!
「ベーも似た様なもんじゃない。カイナのおじ様と違って他人に押しつけるけど」
懲りずに戻って来たメルヘンをさらに遠くへ飛ばした。オレはやりたいヤツにしか押しつけねーわ。
「で、どうすんだよ、これ?」
大袈裟になり過ぎてオレにはもう対処しようがねーぜ。
「もちろん、ラリーレースをするさ!」
そのやる気の一割でもオレにくれよ。なんかもう挫けそうだわ。
「大丈夫大丈夫。おれにお任せ。ベーは用意が整うまで休んでてよ」
そう言うと、開催本部と書かれた大型のテントへと消えていった。
あと、その行動力の三割をオレにくれよ。現実逃避したくてたまんねーよ!
「なんかスゲーことが起こりそうだな!」
この状況に素直に喜んでる公爵どのが一番スゲーよ。
……なんかもうどうでもよくなって来たぜ……。
マ〇ダムタイムでもして落ち着こうとしたが、燃えに燃えた公爵どのにせかされ、ラリー車を出してやった。
「ところで、なぜに公爵どのの部下まで一緒なんだ?」
皆~覚えているか~い? 公爵どのの飛空船、リオカッティー号にいた男装のねーちゃんのこと? そして、副長さんでもあるんだぜ。まあ、名前はいつものように知りませんけどねっ!
「船長を一人にはできませんから」
いつも一人でいるような気がしないでもないが、まあ、深くは追求すまい。サラッと流して行こうぜっ☆
「そうかい。まあ、一人にしないようにガンバってくれや」
そして、面倒は任せた。オレはマン〇ムタイムするんでよ。
いつものように土魔法でテーブルと椅子を作って、カイナーズホームのフードコートで大量買いしたブラックコーヒーをいただいた。
「ベー様。我々にもお願いします」
と、リオカッティー号の船員さんたちもマンダ〇タイムしたいと言うのでテーブルと椅子を用意してやり、ブラックコーヒーを出してやった。
「やはり、ベー様のコーヒーは旨いですな」
顔は知ってるし、船橋でよく見たスキンヘッドさんがブラックコーヒーに喜んでいた。
……改めて考えると、オレ、リオカッティー号の方々と交流なかったわ……。
いや、何度か話しかけたり話しかけられたりはしたが、公爵どのとの会話がメインだったから他のヤツらに意識がいかなかったんだよな。
自己紹介された記憶はあるが、完全無欠に名前が思い出せない。これまでも、そして、これからもスキンヘッドさんと認識させてもらう。
「ちなみに、わたし、バイロンですから」
え、今さらそんなこと言われても困るよ。オレの中ではスキンヘッドさんになっちゃったのに!
「いえ、好きなように呼んでください……」
そう? じゃあ、遠慮なくスキンヘッドさんって呼ばしてもらうよ。悪いね。
「そう思うなら名前を覚えてあげなさいよ」
なにもなかったようにテーブルの上にテーブルを出してお茶するメルヘンさん。
「はぁ~。この平和が長続きしますように」
「いや、一番平和を壊してるのはベーだよね」
………………。
…………。
……。
「イイ度胸じゃワレー!」
「こっちのセリフじゃボケー!」
なんて和気藹々がありましたとさ。チャンチャン。
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