第766話 買い物スタート

「ありがとうございま~す。豪華客船二十億円となりま~す」


 カイナーズホームに入るなり、はっちゃけ店長が現れてそんなことを満面の笑みで言いやがった。


「来て早々押し売りかよ! イイ度胸してんな、この腐れ店長がっ!」 


 上手い返しでやり込めたいが、このはっちゃけ店長に勝てるイメージが浮かばねーよ。


「え? 買わないんですか?」


「いや、買うけど、買うこと前提で言われると腹立つわ!」


 クソ! 誰だよ、こんなのを店長にしたアホは? って、カイナか。アホはアホを呼ぶのかよ!


「ベーに突っ込ませるとか、やるわね」


 なにがだよ! オレの周り、突っ込みしたくなるようなヤツらばかりだわ! とくに頭の上のあなたに突っ込みてーよ!


「今日はいっぱい買うから最後に言えや。最初に言われると買う気が萎えるわ。それより換金してーから案内しろ」


 こいつに構ってたら気力を根こそぎ奪われてたまんねーわ。


「はぃ~。ではこちらで~す」


 なんか腹立つ接客しやがって。もうちょっと客商売を勉強してこいや!


 突っ込んだら負けだと堪え、はっちゃけ店長のあとに続いた。


 で、やって来た場所は、サービスカウンターなところ。あ、ここで換金できるとか言ってたっけ。


「いかほど換金しますか?」


 お前がすんのかい! と思わず突っ込みそうになるのを無理矢理飲み込む。静まれ、オレの突っ込み魂よっ!


「金塊でも大丈夫か?」


「はい、金でも銀でもカイナーズホームは喜んで買い取らせていただきますとも」


 そんなに金や銀を買い取ってどうすんだ? と言う疑問が浮かんだが、換金できるならなんでもイイよと頭から放り投げた。


「量が量だから下に置くな」


 金の延べ棒が詰まった収納箱を八つ、床に置いた。


「なかなかの量ですね。これはさすがに査定するのに時間がかかりそうです」


 だろうな。自分でも無茶言ってんなーと思うしよ。


「時間がかかるのなら料金後払いでもイイか? 換金したものから引いてくれたらイイしよ」


 無限鞄があるとは言え、わざわざ出すのもメンドクセー。引いてくれんのなら助かるんだがな。


「でしたらベー様専用のロイヤルメンバーズカードレッドをお渡ししますね。入金や支払い買い取りが便利になりますので」


 カードなんて持ったことねーからよくわからんが、これを出して買い物すればイイってことか?


「残高がなくなっても最大百億円まで使えますので、ご安心ください。利子はつきませんが、なるべく早く入金してもらえると助かります」


 つまり、借金はするなってことね。よくわかったよ。


 赤いカードを受け取り、サプルの金も換金させた。次回からは一人でもこれるようにな。


「はい。では、サプル様にはロイヤルメンバーズカードブラックをお渡ししますね。残高がなくなっても十億円までは使えますので」


「あんちゃん、十億円んてどのくらい?」


 なかなか難しい質問をしてくるね。前世を含めて十億円がどのくらいかなんて考えたことねーよ。


「ま、まあ、気にせず買い物しろ。足りなくなったらオレがサプルのカードに入金しておくからよ」


 構わんよなとはっちゃけ店長に聞くと、問題はないらしい。なんかテキトーだな、おい。


「店長。サプルに誰か案内をつけてくれるか?」


 できればまともな店員をお願いします。つーか、お前は却下だからな。


「はい。カイナーズホーム随一のコンシェルジュをおつけいたします」


 なんだ、コンシェルジュって?


「早い話、案内人ですよ」


 と、万能メイドなミタさんが耳打ちしてくれた。言葉からして前世のものなのに、オレより知ってるミタさんマジサイコー。


「まあ、なんでもイイわ。サプル。買い物楽しんでこい」


「うん、わかった!」


「メイド長さん、サプルの世話頼むわ」


 暴走しないように抑えてね。


「はい。お任せくださいませ」


 んじゃ、任せたと、オレたちも買い物に向かった。 

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