第767話 文房具
「ベー様。大量にお買いいただけるのならコンシェルジュをおつけしますが。荷物を持っての移動は大変でしょうし、何度もレジを通るのは時間がかかります。コンシェルジュならその場で計算してお渡しできますよ」
へー。そんなことまでしてくれんだ。サービスイイんだな。なら、頼むか。
「ありがとうございます。では、シャロリア。お願いしますね」
と、白髪で白い肌のねーちゃんが現れた。
「コンシェルジュのシャロリアと申します。よろしくお願いします」
スーツ姿がなんとも違和感。なにも他の店員と同じ服にすればイイんじゃね?
とは思うが、カイナーズホームの決まりはカイナーズホームが決めろ、だ。まっ、気にしなきゃ気にらんていどだしよ。
「おう、よろしくな」
「はい。ご購入を決めているものがあれば案内致しますが?」
そうだな~? 昨日、いくつかは考えたが、なにからにすっぺ?
「ベー様。カイナーズホームの見取り図です」
と、ミタさんがパンフレットみたいなものを差し出してきた。ありがたいが、コンシェルジュさんの仕事を奪っちゃダメだよ。あなた以上の万能な人はなかなかいないんだからさ~。
コンシェルジュさんの名誉を守るため、口にはしないが、あとで注意しておくか。覚えてたら、だけど。
「ん~。文房具コーナーが近いか。コンシェルジュさん。文房具コーナーに案内してくれや」
「はい。畏まりました」
こちらですと、コンシェルジュさんが歩き出し、そのあとに続いた。
「ミタさん。買い物があるんならまた別行動でもイイぞ。多分、夕方まではいると思うし、昼はフードコートで食うからよ」
昨日も買い物したし、そんなにないだろうが、休みを与えるのも雇用主の勤めだしな。
「いえ、買い物は昨日のうちに済ませたので今日はおつきします」
「別になくてもブラブラ見て回っても構わねーぞ。女って、そう言うの好きだろう?」
それが魔族の女に当て嵌まるかはわけらんが、見ている限りでは楽しく買い物しているような気がする。
「好きなのは認めますが、優先すべきはメイドとしての仕事。ベー様におつきします」
まあ、そう言うのなら勝手にしろだ。別に遠ざけたい訳じゃねーしな。
「ベー様。ここが文房具コーナーです」
三分もしないで到着。他と同じようにスッゴい広さだった。
「文房具って結構種類があるんだな」
「はい。実用性のあるものから遊び心を持たせたものまで六十万種揃えております」
それ、誰が求めてんだよ。って突っ込みも今更か。無駄を極めしカイナーズホームだもんな。
サラッと流して文房具コーナーを見て回る。
「万年筆はどこだい?」
こちらですと案内され、万年筆が売っているコーナーにやって来た。
「いろいろあるもんなんだな」
万年筆なんて使ったことねーから良し悪しなんてわからんが、見た感じからして高いってのはわかった。
……まあ、一番高いものでも九十八円ですけどね……。
「コンシェルジュさん。万年筆、三百本ほど頼むわ。あと、便箋とか手紙を書くものをまとめて頼む。五十万円くらいで揃えてくれ。なるべく統一してくれると助かる」
「はい。では、こちらで揃えさせていただいきます」
五十万円分なら軽く一年は保つだろう。試しみたいなもんだし、気に入ってくれたのなら来年送ればイイんだしな。
「ベー様。でしたらメモ帳もいかがですか? なにかと便利ですよ」
そうだな。ラーシュの文官に持たせるのもイイかもな。手紙じゃ内政にも手を出してるそうだし。
「なら、無地のを適当に頼むよ。スケジュール帳とかは使い辛いだろうしな」
暦が違うんだから無地のほうが無難だろうよ。
「無地より罫線があるものの方が使い易いかと。記録を残すならノートでもよろしかと思いますよ。どちらもあれば便利でしょうけど」
ノートか。まあ、あっても邪魔にはならんか。勉強用にも使えそうだし。
「なら、メモ帳とノートを三十万円分を揃えてくれ。ついでだから鉛筆と消しゴムも頼む。まあ、付属品は任せる。プラス十万で揃えてくれや」
だいたいそんなもんかな。ラーシュの国、そんなに文明が遅れる訳じゃねーから、書くのに必要なのはだいたいあるしな。
あの国、紙とか生産してるし、それほど貴重なものでもないらしいし。
「文房具コーナーではこんなもんかな」
思いつけばまた来たらイイんだしよ。
「コンシェルジュさん。次はスポーツ用品コーナーに頼むわ」
ラーシュにサッカーを教えたら人気が出て、兵士の間ではイイ娯楽になってるらしい。なんで、ボールをたくさん送ってくれと書いてあったんだよ。
「はい。畏まりました。ご案内致します」
コンシェルジュさんのあとに続いてスポーツ用品コーナーへと向かった。
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