第765話 皆でお買い物
空いてる席に座り、家族に朝のご挨拶。今日もイイ日になるとイイね。
「……今さらだけど、ベーの厚顔無恥はスゴいよね……」
あらヤダ。メルヘンが難しい言葉を使ってますわよ。
そんな賢いメルヘンさんにお返しの言葉を送りましょう。
「可愛さ余って憎さ百倍じゃゴラァ!」
ホバリングするメルヘンをつかもうとするが、ヒラリと躱された。
「それはこっちじゃボケー!」
と、囲炉裏間でファンタジーの住人とメルヘンの住人の戦いのゴングが鳴らされた。
「止めんか、アホ」
と、開始二秒で親父殿の剣の鞘で殴られた。
ひ、酷い。オトンにも殴られたことないのにっ。
……その分、オカンにはよく殴られましたけどね。主に薪で……。
「なんて冗談はともかくとして、サプル。買い物にいく準備はできてるか?」
なにか周りから「うん、知ってた」との言葉が飛び交うが、なにを知ってたって言うんだ? よくわからん家族どもだ。
「うん! 収納鞄いっぱい空にしたよ!」
それはなにより。あんちゃんが金を出してやる。いっぱい買うがよい。
「大丈夫だよ。お小遣い、いっぱいあるし」
まあ、隊商相手に商売(文字は書けぬが、計算はできたりするんだよな、マイシスターは)してるし、ドロテアちゃんシリーズを人魚に売ってるからちょっとした商会並みには持ってたりする。
「まあ、足りなくなったらオレにつけておけ」
そう言っておく。あそこの店長、無駄に押しが強いからな、きっとあれやこれや売りつけてくると思うからよ。
普通に朝食を終え、一旦自分の部屋へと戻り、部屋の隅に積まれた収納箱から金の延べ棒を無限鞄に補充する。
「あと、残り四箱か。そろそろ金山にいって掘り出して来ねーとな」
多いときは二十箱はあったんだが、最近使いすぎてこれだけになっちまったよ。
「無駄遣いをしている気はねーが、ちょっと抑えねーとな」
まあ、必要なら使うけど、節約の意識は持っておくべきだろう。老後を安心に過ごそうと思ったらよ。
「真珠もなんとかしねーとなんねーな」
真珠が詰まった収納箱は三十箱。公爵どのに処分してもらっても増えて行く一方だ。
「ラーシュのところに送ってみるか?」
思えばラーシュのところに真珠を送ったことはなかった。南の大陸は貴金属が重要視され、生物から採れるものは流行らないそうなのだ。
そう手紙に書いてあったので送ることはなかったが、首飾りや指輪、イヤリングと言ったオシャレアイテムにして送ったらどうだろう? 大陸は違えどオシャレガールはいるはずだ。
真珠が入った箱を一つ持ち上げ、部屋の外に出る。
「ミタさん。これをオシャレアイテムにできるメイドを集めていろいろ作ってみてくれ」
「畏まりました」
頼れる我が専属メイドさんはできませんとは言わない。ウルさんに献上するヌイグルミ(海生生物シリーズ)作りもお願いしたら、畏まりましたと数名のヌイグルミ作り班を編制してくれた。
完成したらあんちゃんに渡して、ウルさんに献上してもらう段取りもお願いしたので、オレの役目はコレにて終了。ガンバってくれてるメイドさんたちにはあとで感謝の粗品を送ってあげよう。まあ、やるのはミタさんだけどね。
「んじゃ、いくか」
サプルと待ち合わせた玄関ホールに向かうと、なにやらたくさんいた。なんだ、いったい?
「あんちゃん、皆もいきたいって言うからイイでしょう?」
「ああ、構わんよ」
メイド長さんがいればあのはっちゃけ店長の抑えにもなるし、たくさんいた方が買い物もスムーズだろうて。何人でも連れてけだ。
「で、魔王ちゃんもいくのか?」
ニューブレーメンとの仲を深めなくてイイんかい?
「いく。師匠にはもっと習いたいのでな」
買い物に行っても学ぶことなんてねーとは思うが、学びたいと思うなら壁の落書きからだって学べる。まあ、好きにしたらイイさ。魔王ちゃんの身の回りのものも揃えてやらんといかんしな。
「バリラもか?」
なんか当然のようにいるが、どこいくかわかってんのか?
「前々から噂のカイナーズホームには行きたいと思ってたのよ。アバールのところでは欲しいものが少ないですから」
欲しいものをぼやかしているが、まあ、女の買い物に口を出さないのが男のエチケット。軽く流せ、だ。
「そうかい。好きにしな」
ミタさんを来るのを待ち、そして、カイナーズホームへと向かった。
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