第567話 スーパーシスターズ

 ハイ、バリアルの街に到着です。


「門?」


 ハイ、バリアルの街の門です。


「なぜに?」


 いや、飛空船の発着場の場所、行ったことないんで転移できんのですわ。


 どうも遠くから見ただけではできんようで、ダメなときは一番記憶がある場所に転移するようになってるみたいです。


「取り合えず、発着場予定地に行ってみるか」


 距離的に二、三キロなので、着いた頃には夕方になっていた。


「あんま、進んでる感じはしねーな」


 なるべく平地を選んだが、小屋が幾つかかと見張りが数人いるくらいだった。


 まあ、土魔法を使えるヤツはいてもオレのようなデタラメな者はいない。十日くらいで整えろって方がワリーか。


 ちょっくらオレにやらせろや。とか言いたいところだが、明日に備えてやることがある。


 それに整地したり倉庫を建てたりするのもバリアルの経済を廻す一翼になる。下手に手を出すのもワリーだろう。


「よし。覚えた。ジャンプ!」


 人の名前を覚えるのは、ちょっと苦手だが、人の顔や景色を覚えるのは大得意なんです。


 どうも、カイナがくれた転移のバッチは空間を飛ぶものらしく、家の中――オレの部屋でも転移可能のようだ。


「さて。とっととやりますか」


 自分の部屋に転移したものの、必要なものは保存庫なので部屋から出て保存庫へと向かった。


「なにするの?」


 プリッナイトが気に入ったのか、ドレミに跨がるプリッつあんが尋ねてきた。


「貨物用具作りさ」


 当たり前のことだが、オレたちと小人族ではサイズは違う。オレが抱えられる箱でも小人族からしたらコンテナだ。


 そんなものを出し入れすんのも一苦労だし、飛空船の倉庫にも合わねー。そこで小人族用に規格を決め、専用の貨物用具を作るわけさ。


「ふ~ん。でも、今から作るなんて大変なんじゃないの? 明日だよ」


「昔のオレだったら無理だろうが、錬金の指輪を手に入れ、魔力のバッチがあれば超余裕だぜ」


 なんせ材料と魔力があればイメージのままに作れる。それに、箱や袋、台車に棚と単純なものばかり。一晩あれば充分さ。


 保存庫から材料を持ち出し、部屋に戻って錬金フィーバー。夕食前にできてしまった。


 ダークエルフのメイドさんが呼びに来たので、完成品をそのままにして夕食を取ることにした。


 旨い夕食が終わり、軽くマンダ〇タイムして続き……は終わったんだっけ。まあ、片付けて違うのを作りますか。


「なにしてるの?」


「…………」


 作業台を片付けて、材料を乗せたらリアムと……なんだっけ、ドワーフのおっちゃんとこの娘?


「ノノ」


 と、お嬢さまを見てたらリアムが教えてくれた。サンクスです。


「ノノは家に帰らなくてもイイのか?」


 三歳児はもう寝る時間だぞ。まあ、リアムもだけどよ。


「ノノ、預かった。家に誰もいないから」


 まあ、あの一家、もう離散に等しい状況だし……って、おっちゃんはどうした?


「工房にこもってた」


 あーうん。そー言えば、おっちゃんにいろいろ頼みましたね。ハイ、離散に等しい状況を作ったの、オレでした。すんません!


「そっか。まあ、ノノの面倒は頼むよ」


「わたし、姉。ノノ、妹。任せる」


 手を繋ぐ二人の妹の頭をよしよしと撫でてやる。イイ姉妹だ。


「兄、なにしてる?」


「……?」


 なにやら興味津々なようで、二人とも目をキラキラさせていた。


「飛行艇を作ろうかと思ってな」


「ひこうてい?」


「?」


 まあ、見てろとミニチュアの飛行艇を作ってみせた。


 まあ、ぶっちゃけ、タイヤなしの軽トラなんですけどね。


「移動用の乗り物が欲しくてな、まずは試作を作ってみようと思ってよ」


 錬金の指輪の中にも魔道具の知識は入っており、理解すれば風の魔剣でも作れるんだが、それに費やせる時間がねーんで、まずは外観だけでも思ったのよ。


「浮いてる」


「……!」


 一応、結界術を使えばすぐにでも創れるんだが、オレだけしか動かせないものではしょうがねー。誰でも動かせるようにならんと意味はねーんだよ。


「……おもしろいのか?」


 なにやら二人のお目々がスーパー輝いている。


「おもしろい」


「!!!」


 リアムの声は平坦で、無関心なように聞こえるが、目は眩しいくらいに輝き、ノノに至っては超興奮して跳び跳ねている。


 ……もしかして、こいつら、博士ドクターと同類か……?


 自分の中でなにかが沸騰する感じがあったが、無理矢理押さえつけ、土魔法で爪先くらいの浮遊石や板、工作道具などを渡した。


「今日は遅いから明日、これでなんか作って遊んでろ」


 さらに目を輝かせ、浮遊石や工作道具を見詰める二人。寝るなんて無理か? なんて思ったが、興奮過ぎて疲れたのか、ベッドに入れたら直ぐに眠りへとついてしまった。


 カワイイ寝顔を見せる二人を眺めながら、二人のことを考える。


 もし、オレの想像が正しければ、この二人は世界を変えるほどの才能がある。そう思わせるものが二人から感じ取れるのだ。


「……ことと次第によったら、二人に錬金の指輪を与えてもイイかもな……」


 まずは、これでなにを作るかを見てからだ。


 沸騰しそうな感情を押さえつけ、オレも明日に備えて眠りについた。

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